新ドライバでもっと遊べる!──「Big Bung-Fuzion」の“柔軟なパワー”を楽しむイマドキのイタモノ

» 2010年06月23日 17時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]
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トリッキーだけに気難しい……、それも昔のこと

 MSIの「Big Bang-Fusion」は、Lucidの「Hydra」チップを実装して、異種混合マルチGPU環境を“いち早く”実現したマザーボードだ。登場した当初は、そのトリッキーな組み合わせが可能になるという自作PCユーザーの「技術的好奇心」を強烈に刺激する機能が注目を集めた。出荷直後の価格が4万円をわずかに切る「高額マザーボード」にもかかわらず、“人柱志願兵”が購入していったという。

 しかし、あまりにもトリッキーな仕掛けを導入したためか、NVIDIAのGeForceシリーズとAMD(ATI)のRadeon HDシリーズを混載した環境(これをX-modeと呼んでいた)でなかなか動作が安定せず、また、マルチGPU環境における性能向上が、シングルGPUと比べて1.5倍程度にとどまるなど、“人柱”たちの期待にやや応えきれない(いや、ある意味では十分期待に応えていたりするのだが)状況にあった。人柱志願兵たちの悪戦苦闘ぶりは彼らのブログやMSIが設けたWebページ「Big Bang-Fuzion 研究所」などで報告されている。

“異種混合”マルチGPU環境が構築できる(いまのところ)世界唯一のマザーボード(のはずな)MSIの「Big Bang-Fuzion」

 しかし、この状況をMSIが看過するはずがない。X-modeにおける不安定動作とマルチGPU環境における性能向上不足はMSIの技術部門も早期に把握しており、ドライバやBIOSをはじめとする改善作業とユーザーに対する情報公開を行ってきた。この状況は、DDR3対応メモリスロット4基、DDR2対応メモリスロット4基を搭載した「P45-8D Memory Lover」を思い出す。DDR3、DDR2それぞれのメモリスロットをフルで利用した場合、初期バージョンのBIOSでは、やや動作が安定しなかったものの、MSIがBIOSのチューニングを進め、BIOS 3.0では問題を克服して、オーバークロック機能も拡張するなど、粘り強くサポートしてきた実績がある(このあたりの詳細は新しいBIOSで生まれ変わった「P45-8D Memory Lover」にメモリを差しまくるMSI の「P45-8D Memory Lover」でメモリを差しまくるを参照のこと)。

 Big Bang-Fuzionも、BIOSとドライバの改良を粛々と進めており、2010年の4月に公開されたHydraドライバのVer 1.5.106で安定動作とマルチGPUのパフォーマンス問題はある程度解決できたとMSIでも考えているようだ。

 実際、動作の安定性は、その前のHydraドライバ Ver.1.4からかなりの改善をみせており、CeBIT 2010のMSIブースでBig Bang-FuzionにRadeon HD 5870を搭載した「R5870 Lightning」とGeForce GTX 275を搭載した「N275GTX Lightning」で構成したX-modeで開催期間中を通して安定して動作することをアピールしていた(CeBIT 2010におけるMSIブースの詳細についてはMSIの「効能首選 影音極致」な次世代モデルが“ずらり”と並ぶを参照のこと)。

異種混合の実力をチェックする

 そうなると、Big Bang-Fuzionで残る課題は「マルチGPUにおける性能向上」となる。そこで、2010年春におけるHydraドライバの最新版「1.5.106」で行った検証結果を以下に挙げていこう。システム構成は、CPUがCore i7-860(2.8GHz、Turbo Boost Technology有効時で最高3.46GHz)、システムメモリがDDR3-1333を2Gバイト×2、Big Bang-FuzionのBIOSはVer. 1.1β4を適用している(なお、6月17日時点で、最新のHydraドライバはVer. 1.5.109、Big Bang-FuzionのBIOS Ver. 1.2が最新。“人柱向け”のβ版としてVer. 1.21βも配布されている)。また、グラフィックスドライバは、GeForceシリーズ向けにGeForce Driver 196.21、Radeon HDシリーズ向けにCatalyst 10.2をそれぞれ適用した。

 グラフィックスカードには、「R5870-PM2D1G」「R5850-PM2D1G」「R5770 HAWK」「R5750 PM2D1G」「N285GTX-T2D1G-OC」「N275GTX TWIN FROZR」「N260GTX-T2D896J2-OC」を用意し、3DMark Vantage(Extreme Mode)をそれぞれを単体で測定したのち、「R5870-PM2D1G」「R5850-PM2D1G」「R5770 HAWK」「R5750 PM2D1G」のそれぞれと「N285GTX-T2D1G-OC」「N275GTX TWIN FROZR」「N260GTX-T2D896J2-OC」を1枚ずつ組み合わせたX-modeで3DMark VantageをExtreme Modeで測定した。

R5870-PM2D1G+GeForce GTXシリーズ

 ハイエンドのN285GTX-T2D1G-OC、その下位クラスになるN275GTX TWIN FROZRを組み合わせたX-modeにおいて、R5870-PM2D1Gで測定した結果の相対値は単体構成時の120%台、ミドルレンジのN260GTX-896J2-OCとの組み合わせでは107%台にとどまるが、一方で、GeForceシリーズでは、単体構成時の結果から、N285GTX-T2D1G-OC、N275GTX TWIN FROZR、N260GTX-T2D896J2-OCのいずれも177〜178%と大幅な向上を示している。GeForceシリーズのシステムに、Radeon HD 5870クラスのGPUを搭載したグラフィックスカードを追加してX-modeを構成した場合、その導入効果は絶大ということになる。


R5850-PM2D1G+GeForce GTXシリーズ

 N285GTX-T2D1G-OC、N275GTX TWIN FROZRを組み合わせたX-modeにおけるR5850-PM2D1G-OCの性能向上は単体構成の150%台まで性能が上がり、N260GTX-T2D896J2-OCでも130%台まで向上した。また、GeForce GTX各シリーズの単体性能との比較では、いずれも170%台後半の性能向上が確認された。GeForce GTXユーザーにはRadeon HD 5850クラスを搭載したグラフィックスカードでもX-modeの恩恵が十分あるといえるだろう。


R5770 HAWK+GeForce GTXシリーズ

 ミドルレンジのRadeon HD 5770を搭載した人気のモデルだが、GeForce GTXといったハイエンドグラフィックスカードと組み合わせてX-modeを構成した場合、追加したGeForce GTXシリーズの性能向上はN285GTX-T2D1G-OCで138%、N275GTX TWIN FROZRで145%、N260GTX-T2D896J2-OCでは161%とやや低くなるが、R5770 HAWKの性能向上は180%台とその効果は著しい。


R5750 PM2D1G+GeForce GTXシリーズ

 Radeon HD 5750を搭載したグラフィックスカードとGeForce GTXといったハイエンドGPUをX-modeで組み合わせた場合、Radeon HD 5750搭載グラフィックスカードの性能向上はいずれの組み合わせでも180%台前半と著しい。しかし、GeForce GTX側の性能向上はN285GTX-T2D1G-OCで109%、N275GTX TWIN FROZRで115%、N260GTX-T2D896J2-OCでようやく129%と、ハイエンドモデルほどその効果は少ない。Radeon HD 5750側の性能向上が組み合わせに限らず、ほぼ同じなので、コストパフォーマンスを考えるとミドルレンジGPUと組み合わせるのはGeForce GTX 260クラスで十分ということになる(それ以上のクラスを導入するなら、グラフィックスカードの置き換えでも同じだ)。



 Big Bang-Fusionには、「すでに所有している“旧世代”のグラフィックスカードに最新のグラフィックスカードを追加してもシステムの構築が可能になる」という“実用的な”コンセプトがあった。世代交代が激しいGPUの世界では、購入して半年経たぬうちに次世代GPUが登場することもまれでない。次世代のGPUでは性能の向上は当然として、対応するDirectXの世代が更新されたり、内蔵するビデオプロセッサの性能が向上したりとベンチマークテストの測定値に固執しないユーザーにとっても影響が大きかったりする。

 さらに、Radeon HD 5000シリーズや、GeForce GTX400シリーズ、6画面同時出力ができるATI Eyefinity Technology、そして、注目が高まりつつあるNVIDIA 3D Visionなどなど、いま、GeForce、もしくは、Radeon HDシリーズのどちらを使っていても、別のベンダーから気になるGPUが登場するという状況にあって、旧世代のGPUに組み合わせる新世代GPUが異なるベンダーの製品であることも十分考えられる。

 そういう意味で、GPUを混載できるBig Bang-Fuzionはイマドキの自作PCユーザーに、柔軟なシステム構成を可能にしてくれるマザーボードとして評価できるだろう。もちろん、安定動作を保証する高品質部材の採用(Hi-c CAP、SFC)や「OCダッシュボード」、「Easy Button」といったオーバークロッカーが重視する機能など、マザーボードとしても充実した機能を用意している。実売価格も2万7000円台まで下がって購入しやすくなったBig Bang-Fuzionは、最新のPCパーツを積極的に試したい自作PCユーザーにとって、実は使い勝手が高いモデルといえる。

電源回路周辺にビッチリ実装された“Hi-C Cap”(写真=左)に極太ヒートパイプ“SuperPipe”を組み込んだクーラーユニット(写真=右)など、安定動作のための仕掛けは抜かりない

さらに、外付けユニット「OC DASHBOARD」(写真=左)に「V-CHECK」(写真=右)などなど、オーバークロッカーのチューニング作業を支援する機能も充実している

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