「PowerDVD 10 MarkII」で普通のユーザーに訴求する3D VisionIONはどうなる。Tegraはどうなる(2/3 ページ)

» 2010年07月16日 19時55分 公開
[長浜和也,ITmedia]

実用レベルに到達したPowerDVD 10 MarkIIの立体視変換機能

変換アルゴリズムが改善された「PowerDVD 10 MarkII」で立体視変換画像を検証する

 パトリック氏は、立体視を普及するもう1つの利用シーンとして、従来からある動画コンテンツを立体視表示に変換する機能も重視している。PowerDVD 9 3D Playerにもこの機能として「TrueTheater 3D」が実装されていたが、「この立体視変換アルゴリズムはクオリティがあまり高くなかった」とパトリック氏はいう。しかし、2010年7月から出荷された「PowerDVD 10 MarkII」に導入された「TrueTheater 3D」はアルゴリズムが大幅に改善され、変換された立体視の画質も向上したという。「新しいバージョンに実装された立体視変換アルゴリズムは、私がチェックした限り、予想を上回る画質を実現していた。このレベルなら、多くのコンシューマーユーザーは、自分の持っているDVDコンテンツを立体視変換機能を使って視聴したいと思うようになるだろう」(パトリック氏)

 パトリック氏によると、このアルゴリズムを使って映画「アバター」を2Dから立体視に変換して視聴してもらったところ、10人中9人は、変換をしていない「3D版」のコンテンツだと思ったという。PC USERの編集部でも、何人かのスタッフに、映画「戦場のピアニスト」でPowerDVD 9とPowerDVD 10 MarkIIの立体視変換再生を比べてもらったところ、PowerDVD 10 MarkIIで変換した立体視が明らかに向上して「見やすい」と評価した。

 ただし、ほかの動画コンテンツでは、戦場のピアニストほどの明確な違いを認識できなかった例もあり、PowerDVD 10 MarkIIのアルゴリズムでも「立体視変換に適しているシーン」「立体視変換に向いてないシーン」があるようだ。

PowerDVD 10 MarkIIで表示した立体視変換後のシーン。シーン全体(写真=左)と画面左側(写真=中央)、画面右側(写真=右)それぞれのアップ。立体視変換によって、左目用と右目用の画像がダブっている

こちらは、ほぼ同じシーンをPowerDVD 9 3D Playerで変換した立体視画像。シーン全体(写真=左)と画面左側(写真=中央)、画面右側(写真=右)。左目用と右目用の画像の重なりが、PowerDVD 10 MarkIIの変換後と異なっていることから、変換アルゴリズムが変更されたことが分かる

 ちなみに、PowerDVD 10 MarkIIでは2Dから立体視に変換する処理にCUDAは対応していない。パトリック氏は、CUDA対応の時期は明らかにしなかったが、「立体視変換にCPUパワーを使っているので、DVD収録のSDコンテンツでもクアッドコア、もしくはデュアルコアの場合は高クロックのパワーが必要になるが、CUDAに対応するようになると、CPUパワーに依存することなく、Blu-ray Discに収録されるフルHDのコンテンツでも立体視変換が可能になるだろう」という見方を示した。

 パトリック氏は、「サイバーリンクでは、次に投入するバージョンでWebカメラで撮影した動画をリアルタイムで立体視に変換する機能を導入するといっている」という情報も明らかにした。「この機能があれば、ビデオチャットの相手が通常のWebカメラで画像を送っていても、自分のPCが立体視表示に対応していれば、相手の画像が立体視動画として表示できるようになる」(パトリック氏)

偏光式を採用したPCメーカーは後悔するだろう

ちなみに、日本のPCメーカーが2010年の夏モデルで投入した立体視対応モデルの多くは、偏光式を採用している。多くのメーカーがその理由として、3D Visionを採用したときよりコストを抑えられることを挙げている。しかし、パトリック氏は「コストやタイムマーケットを考えて偏光式を採用していると思うが、彼らはクオリティできっと後悔することになるだろう」と反論する。

 また、AMDが訴求する「GPUやドライバ、立体視メガネの構成を自由に選べるオープンな立体視技術」についても、「NVIDIAは、3D Visionに対応する周辺機器やコンテンツの開発と販売に制限を設けていない。望むベンダーは自由に製品を開発して販売できる。立体視の技術には多くのハードウェアとソフトウェアが関連するため、不具合が発生したときにその原因を追究するのが非常に困難だ。“オープン”にすることは、その原因の解決を人任せにするリスクを抱えることになる。NVIDIAは、立体視技術を3D Visionで普及するときに最も重要だと考えたのが、誰かが検証を責任を持って行い、エンドユーザーが安心して使える環境を整えることだった」と主張した。

 ならば、サードバーティが開発した立体視関連周辺機器に、NVIDIAがロゴを添付してその動作を保障するプロモーションなどは可能だろうか。「できるが、それを実施するかどうかは、まだ考えていない。現段階の3D VisionでNVIDIAが一番保障したいのはクオリティだ。新しい技術を普及させるチャンスは1度しかない。NVIDIA以外のメーカーに3D Visionの普及を任せられるのは、この技術がもっと安定した段階になってからだろう。NVIDIAが3D Visoinの開発をスタートさせてから、すでに長い時間が経っている。現在の3D Visionは4代目の技術だ。ほかのベンダーが、最近の立体視ブームに乗じて開発を始めても、NVIDIAと同じレベルになるには、相当の時間を必要とするだろう」(パトリック氏)

 その一方で、3D Visionの導入において、意外なハードルとなるのが、唯一の対応立体視メガネとなる「GeForce 3D Vision Glasses Kit」の価格だ。安価なモデルを用意する計画はないのだろうか。

 「まだ、アナウンスはしていないが、コストを下げて購入しやすい立体視メガネの開発を、かなり高い優先順位で進めている。コストには出荷する数の問題がある。3D Visoinが普及して多くの立体視メガネが出荷できると価格も下がってくるだろう。ただ、家電製品でBlu-ray 3Dを再生するシステムを構築するよりはるかに少ないコストで、PCで3D Visionを利用できるシステムが購入できることも知ってほしい。また、安いだけなく、3D Visionなら、家電システムで利用できないストリーミングコンテンツでも立体視が楽しめる」(パトリック氏)

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