米国の電子書籍周辺事情を整理する(中編):進化するデバイス技術と新しいコンテンツ(1/3 ページ)

» 2010年11月25日 10時30分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 「米国の電子書籍周辺事情を整理する(前編)」では、Kindleを中心にして盛り上がったE Inkディスプレイ搭載の電子ブックリーダーとそのコンテンツ市場の歴史を振り返りつつ、iPad登場以後の電子書籍の最新トレンドについて簡単に紹介した。今回は現状の電子書籍市場の実態に触れつつ、数々の新技術や今後の市場の動きについて考察していこう。

電子書籍市場の実際

iBooks iPad謹製の電子ブックリーダーアプリ「iBooks」

 iPadの登場は電子書籍市場において確かにインパクトある存在として迎えられたが、現状ではまだKindleの牙城を大きく崩す存在にはなり得ていないようだ。例えば投資銀行グループのCowen and Companyが今年10月に発表したデータによれば、電子書籍市場におけるAmazon.comのシェアは76%で、Appleはわずか5%程度にとどまっているという。

 約3年先行するKindleと発売後半年のiPadとを直接比較するのもフェアではないし、それを考えればiPadは比較的健闘しているといえるかもしれない。だが、Amazon.comはiPad登場以後も積極的な値下げ攻勢で過去最高のKindleデバイス販売台数を達成し、2010年夏に登場したKindle 3の販売台数は2009年のクリスマス(ホリデーシーズン)商戦におけるKindleの販売台数をすでに上回っているという。

 Amazon.comは、積極的な値下げ攻勢で電子ブックリーダーの普及台数が伸びたことで、電子書籍の売上も増えるという好循環を実現している。これは、2009年との比較でKindleの販売台数が140%増加だったのに対し、そこで利用できる電子書籍の売り上げはさらに上の195%の伸びだったことからもうかがえる。iPadやその他ライバルの登場がさらなる競争を生み、市場を活性化させたともいえる。なお、上述したCowen and Companyは、2015年には市場シェアがそれぞれ51%(Amazon.com)と16%(Apple)になると予測している。

 Cowen and Companyの調査報告では、もう1つの面白い傾向もみてとれる。Amazon.comの電子書籍ストアであるKindle Storeからの購入者のうち、5人に1人が「Kindleデバイスを所持していない」という事実だ。Amazon.comではKindleデバイス以外に、同電子書籍コンテンツを読むためのアプリをPC、iPhoneやAndroidなどの各種スマートフォン、そしてiPad向けに提供している。つまり、Kindleにおけるユーザーの2割がこうしたアプリ経由でのコンテンツ利用者なのだ。iPadユーザーは通常であれば同デバイス内に用意された「iBooks」アプリを利用して「iBookstore」へとアクセスすると考えられるが、そうではないユーザーもそれなりに存在するということになる。

 同社のアンケートによれば、iPadの電子書籍利用者のうち60%近くがiBooksを利用しており、31%がKindle for iPadアプリのユーザーだという。年間読書数25冊以上のハードコアな読者層ほどKindleに偏る傾向があるようで、例えばこの層でiBooksの利用者が47%なのに対し、Kindle for iPadの利用者は44%とかなり接近している。

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