20メガワットエクサスケールは破壊的イノベーションで実現する:スマートフォンもスパコンになる!(20年前の)(2/3 ページ)

» 2011年11月22日 10時38分 公開
[本間文,ITmedia]

単体で“できない子”でも集団で“できる子”に

 このため、HPC市場では、電力効率を飛躍的に高めたプロセッサが求められ、NVIDIAは、GPUに代表されるシンプルなコアを多数搭載するメニーコアプロセッサの活用を訴えている。しかしながら、メニーコアプロセッサは優れた電力効率を実現し、キャッシュなどを介して多くのコアでデータを共用すれば、データのやりとりにかかる消費電力も低減できる一方で、各コアあたりの演算性能が低いという問題点がある。それでも、HPC市場は20メガワット以下の消費電力に抑えつつ、エクサスケールの演算性能を実現する必要性がある。そのためには、「より積極的にGPUをアクセラレータとして活用していくしか方法はない。これこそが、現在HPC業界が直面している“イノベーションのジレンマ”だ」とファン氏は語る。

 同氏は、「NVIDIAはこれまでもグラフィックス市場に“破壊的イノベーション”をもたらしてきた。その経験は、HPC市場でも生かせるはずだ」と自信をみせる。ファン氏は、「創業当時は、開発費も十分になく、登場したての3Dゲーム用にGPU開発のリソースを集中させた。そのおかげで、(当時の)大手グラフィックスチップベンダにはない製品として認知されただけでなく、200ドル前後の価格が10代の若いPCユーザーたちに受け入れられ、新しい市場を作ることができた」と同社の歩みを振り返る。ファン氏は、HPC市場にも、新しい価値観をもたらそうというわけだ。

HPC市場では、より電力効率に優れたメニーコアプロセッサが必要だ。しかし、GPUに代表されるメニーコアプロセッサのシングルスレッド演算性能は低く、それ単体でHPCを支える存在にはなり得ない(写真=左)。ファン氏は、NVIDIAはグラフィックス市場に“破壊的イノベーション”をもたらし続ける、その経験はHPC市場でも活かせるとアピール(写真=右)

エクサスケールに欠かせないGPUアクセラレーション

 ファン氏は、2019年にHPCがエクサスケールを実現するためには、GPUの活用が鍵を握ると見る。しかし、「現状でGPUのHPC利用には、プログラム環境などの整備が十分ではない」との認識も示す。さらに「GPUをアクセラレータとして活用する現在のアプローチを持ってしても、20メガワットで1エクサFLOPSを実現するのは2022年までかかる。これを3年も前倒しするためには、CPUとGPUの連係を高めていかなければならない」とする。このように、ファン氏が既存の価値観を壊し、「破壊的イノベーション」の必要性を説くのは、HPC業界が掲げるエクサスケールへの道が、いかに厳しいかを理解しているからだ。実際、最新のHPC Top500では、NVIDIAのTeslaをGPUアクセラレータとして搭載したシステムが2010年の10システムから35システムに増えており、現在では大手HPCベンダーのすべてがGPUクラスタの採用を決めているという。

HPCの電力効率改善と大幅な性能向上には、GPUをアクセラレータとして利用する手法が最適だと主張する(写真=左)。GPUアクセラレーションの身近な成功例として、長崎大学の濱田剛准教授(先端計算研究センター超並列部門長)が、2009年に、3800万円で日本最速のスーパーコンピュータを自作し、米国電気電子学会よりゴードン・ベル賞の価格性能部門を受賞したことが紹介された。ファン氏は、「濱田先生にTeslaを採用してくれるよう頼んだが、GeForceで十分と断わられた」とし、コンシューマ市場向け製品でもHPCのGPUアクセラレーションが可能であることも訴えた(写真=中央、右)

HPC業界ではGPUアクセラレーションの普及が進むが、現状ではプログラミング環境が最大の課題になっていることもファン氏は認める(写真=左)。中国科学院過程工学研究所が、GPUベースのスーパーコンピュータ「Mole-8.5」で新型インフルエンザ(H1N1)のウイルスシミュレーションに成功した事例を紹介。これも、GPUが持つ並列処理性能の高さを生かした事例だ(写真=右)

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