20メガワットエクサスケールは破壊的イノベーションで実現するスマートフォンもスパコンになる!(20年前の)(3/3 ページ)

» 2011年11月22日 10時38分 公開
[本間文,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

GPUコンピューティング開発を促進する「OpenACC」

 そこで、NVIDIAはCrayやCAPS Eneterprise、Portland Group(PGI)などとともに、CPUとGPUを連携する新しいプログラミング規格となる「OpenACC」を立ち上げた。このAPI規格は、既存の並列演算プログラムなどにディレクティブ(プログラムに埋め込むコンパイラへの命令)を加えることで、GPUによって高速化が可能なプログラム領域を特定し、同プログラムを再コンパイルし直すことで、大幅なパフォーマンス向上を図れるようにするものだ。これまでのGPUコンピューティング環境は、プログラミングの難解さが最大のネックとされてきたが、OpenACCが用意するAPIにより既存のプログラムでGPUアクセラレーションを適用できるようにできるため、短期間で並列演算プログラムを構築できるようになるわけだ。

 これを受けて、Crayは、同社が開発を進めているスーパーコンピュータ「Titan」でNVIDIA製GPUをアクセラレータとして搭載することを表明したほか、PGIはFortranやC/C++言語向け高性能並列コンパイラで同規格に対応したことをアナウンスし、NVIDIAのWebページ「2x in 4 weeks」で1カ月間の無償トライアル版の配布も開始している。

NVIDIAは、CrayやPGIなどとともに、既存のプログラムをGPUアクセラレーションに対応できるようにするオープンソースのプログラミングAPI規格「OpenACC」を立ち上げ、GPUアクセラレーションの普及を目指す(写真=左)。GPUを活用することで、4週間で既存のHPC向けプログラムを2倍以上の性能を発揮できるようになるとアピール。OpenACCに対応したPGIのコンパイラの1カ月間無償トライアルも実施している(写真=右)

現在のGPUアクセラレーション技術を活用することで、2022年には20メガワットで1エクサFLOPS実現できる見通しがたった(写真=左)。CPUとGPUの連係をさらに高めていけば、2019年にも目標を実現することは不可能ではないというのがファン氏の主張だ(写真=右)

 GPUを並列演算処理のアクセラレータとして活用するメリットは、HPCに限ったことではないとファン氏はアピールする。基調講演の中で、ファン氏は、ワークステーションPCに演算処理用のTeslaとグラフィックス処理用のQuadroを搭載したNVIDIAのGPUアクセラレーションソリューション「Maximus」のデモを披露しているが、Maximusでは、演算負荷が大きなときはQuadroにも負荷を振り分けることで、これまで大規模サーバなどに演算を任せなければならなかった流体シミュレーションやCGフィルムメーキングも、リアルタイムで処理できるようになるとして、並列演算処理におけるGPUアクセラレーションを、より多くのデバイスで活用できるようにする考えを示した。

 その上で、ファン氏は、より多くのプログラムでGPUをグラフィックス処理だけでなく、演算処理にも活用できるようになれば、携帯デバイスやゲームコンソールの性能も飛躍的に向上できると述べている。2019年に20メガワットで1エクサFLOPSを実現できれば、携帯デバイスは5ワットで数テラFLOPS、ゲームコンソールは100ワットで数十テラFLOPS、そして、ワークステーションや高性能デスクトップPCは1000ワットで数百テラFLOPSの演算性能を手に入れられるようになると予測する。

 ファン氏は、この技術を応用すれば、スタートレックに登場する士官向けのモバイルデバイス「Starfleet Tricorder」のような多目的高機能デバイスも生み出せるかもしれないと、HPC市場のみならず、ほかのITデバイスの発展にも役立つという考えを示した。

GPUを演算に活かせるデバイスは、なにもHPCではない、携帯デバイスからワークステーションまで10億以上のデバイスの処理能力も向上できる(写真=左)。2019年には、携帯電話の処理能力は5Wで数テラFLOPSに達すると考えられており、その性能は1997年に世界最速を誇ったスーパーコンピュータ「ASCI Red」と同等のものだ(写真=中央)。2019年のゲームコンソールは、100Wで数十テラFLOPSの演算性能を持つ。その性能は2004年最速のスーパーコンピュータ「Red Storm」と同等だ(写真=右)

消費電力1000ワットクラスのワークステーションPCで、2019年には2006年で最速のスーパーコンピュータ「Blue Gene」と同等の数百テラFLOPSの演算性能を持つようになると予測する(写真=左)。ワークステーションPCに演算処理用のTeslaとグラフィックス処理用のQuadroを搭載した同社のGPUアクセラレーションソリューション「Maximus」では、演算負荷が大きなときはQuadroにもワークロードを振り分けることで、これまで大規模サーバでなければ演算できなかった流体シミュレーションやCGフィルムメーキングも、リアルタイムで処理できるようになる(写真=右)

ファン氏はGPUを演算処理に利用すれば、スター・トレックに登場する士官向け携帯デバイス「Starfleet Tricorder」のような多目的高機能デバイスも生み出せるかもしれないと、その可能性の高さをアピールし、基調講演を締めくくった

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年06月11日 更新
  1. 初のカラー対応「Kindle Scribe Colorsoft」の実力は? 通常モデルとの価格差1万7000円の価値を検証 (2026年06月10日)
  2. 「Geminiの技術は使うが、Geminiではない」 WWDC26で見えたApple流AIとプライバシー戦略の核心 (2026年06月10日)
  3. 「macOS 27 Golden Gate」が2026年秋に登場 初のApple Silicon専用バージョンに (2026年06月09日)
  4. ミニPCに強みの「MINISFORUM」 ミニワークステーションの新モデルから「謎の拡張カード」まで多彩な製品を披露 (2026年06月10日)
  5. 「次世代Apple Intelligence」をフル活用するにはどのような条件がある? 「Siri AI」は日本で使える? 知っておくべき対応モデルのハードル (2026年06月09日)
  6. 実売1万円切りでパススルー給電にも対応! KTCの15.6型モバイルディスプレイ「H15F9」は“買い”か (2026年06月09日)
  7. コンパクトボディーにスパコン並みのAI性能! 「NVIDIA RTX Spark」搭載ミニデスクトップPCを見てきた (2026年06月04日)
  8. LGが4K有機EL TVの2026年モデルを発表 映像プロセッサを刷新し120Hz以上の高速表示にも対応 (2026年06月09日)
  9. カプセルトイ「手のひらネットワーク機器」第5弾のラインアップを決める“ユーザー選挙”投票受付を開始 (2026年06月10日)
  10. サンワ、ノートPCやタブレット背面を冷やせるペルチェ冷却クーラー (2026年06月09日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー