性能と価格を両立したエンタープライズモデル「TS-1279U-RP」企業向けサーバは高すぎる? それならQNAPを使えばいいじゃない(2/2 ページ)

» 2011年11月30日 16時30分 公開
[瓜生聖,ITmedia]
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期待の「ファームウェア3.5」で何が変わったのか

 前述した通り、QNAP TurboNASは、共通プラットフォームでの開発が行われており、多くのモデルに対して一斉にファームウェアの新バージョンが提供される。TS-x79シリーズに搭載される「ファームウェア3.5」も、すでに既存モデル用が公開されている。

 ファームウェア3.5は以前から期待の高かったメジャーバージョンアップだ。その新機能を紹介していこう。

  • ウイルススキャン機能

 ファームウェア3.5の大きな追加機能の1つがウイルススキャン機能だ。GPLのオープンソースソフトウェア「ClamAV 0.96.4」を検出エンジンとしており、執筆時点で100万を超えるシグネチャが登録されている。

 ClamAVは、主にパターンチェックによるファイルスキャンを行うもので、ファイルサーバなどに適したアンチウイルスソフトだ。このご時世ではPCにアンチウイルスソフトを導入していないところはほとんどないと思われるが、ファイルサーバに導入していないところはまだまだあるだろう。マルウェアの感染拡大を阻止するためには、ファイルサーバ自身のウイルススキャンも必要だ。

 これは「Windows Serverから安価なNASキットに移行したいが、アンチウイルスソフトがインストールできないために社内のセキュリティポリシーを満たせず、導入をあきらめていた」という人にもうれしい機能だろう。もっとも、ClamAVはその性質上ヒューリスティックスキャンなど「ふるまい」から未知のマルウェアを検出することはできないので、クライアント側での個別の対応は必要になる。

アンチウイルス設定画面。パターンファイルは「http://www.clamav.net」からダウンロードされる(画面=左)。ウイルスが発見された場合の処理には隔離、削除が選択可能(画面=中央)。ウイルスが発見された場合はシステムエラー同様、メールやメッセンジャーで通知される(画面=右)

  • Mac OS X Lion互換

 Mac OS X Lionがリリースされたとき問題になったのが「Time MachineでNASを使うとバックアップができない」という障害だ。TurboNASも含め、Linuxベースのファイルサーバはオープンソースで構成されており、Windows用にSamba、Mac用にNetatalkを利用している。しかし、Netatalkの開発コミュニティはほぼNetAFPのみとなっており、NetAFPは2011年7月2日に「ビジネス上の理由によって彼らの顧客に対してのみNetatalk 2.2.0をリリースする」と発表した。そして、以前のNetatalkでは利用できないMac OS X Lionが発売されたのはその約2週間後のことになる。そこでQNAPは早々に支援を表明し、ファームウェア3.5でMac OS X LionのTime Machineバックアップをサポートした。

Netatalk 2.2.0を顧客以外に公開しないことを宣言したNetAFPのオープンレター(画面=左)。NetAFPは(今後の互換性問題を回避するため)NetAFPの支援企業、顧客のNAS製品を選択するよう勧めている(画面=中央)。ファームウェア3.5が提供されない販売終了製品でもMac OS X LionのTime Machine互換機能が提供されているものがある。画面はTS-409のファームウェア3.3.1(画面=右)

  • LDAP対応

 ユーザーやコンピュータの管理に使われるディレクトリ・サービスは、WindowsであればActive Directory、LinuxであればOpenLDAPが主流だ。TurboNASでは以前からActive Directoryをサポートしていたが、ファームウェア3.5ではLDAP認証にも対応した。QPKGでOpenLDAPも提供されているため、TurboNAS自身にLDAPサーバの機能を持たせることもできる。そのほか、RADIUSサーバ機能も追加された。

「ドメインのセキュリティ」からユーザ管理システムを選択できる。Active Directory認証やLDAP認証を選択することでドメイン内での一元管理が可能だ(画面=左)。OpenLDAPはTurboNASのパッケージ、QPKGで提供されている。インストールが失敗する場合はコマンドラインから「touch /etc/openldap/slapd.conf」を実行してから再試行してみる(画面=右)

  • iSCSI LUNスナップショット/バックアップ
iSCSI LUNバックアップはバックアップ先をローカルホスト、Linux共有(NFS)、Windows共有(CIFS/SMB)から選択できる

 ファイバーチャネルに変わる接続方法として、仮想サーバとともに普及が進んでいるのがiSCSIだ。TurboNASではiSCSIをサポートしているが、システムから見るとiSCSIのLUN(論理ユニット)は単なるファイルにしか見えず、例えその一部だけが書き換えられただけだとしてもTurboNASのバックアップ機能を使う限りはフルバックアップ同然となる(当然バックアップにかかる時間は長くなる)

 ファームウェア3.5では、iSCSI LUNスナップショット/バックアップがサポートされ、短時間でのバックアップや、バックアップ中のiSCSI LUN利用による不整合を回避することができるようになった。さらにリストア時には上書きや新規LUNを作成して復元したり、スナップショットをiSCSIターゲットにマウントしてユーザーがデータにアクセスできるようにするなど、iSCSI利用環境の充実が図られている。

  • Windows Liveメッセンジャー通知

 TurboNASのシステムメッセージは、今までのメールのほか、Windows Liveメッセンジャーを使った通知も可能になった。また、Windows Liveメッセンジャーからメッセージを送ることで、TurboNAS側の状況を確認することもできる。手軽さはもちろん、メッセンジャーを用いるため、ファイアウォールに外部アクセス用の穴を開ける必要がなく、安全性を確保しやすいというメリットもある。

コスト削減が叫ばれる今だからこそ、QNAPという選択

 QNAP TurboNASの強みは、スペックにかかわらず一貫した共通プラットフォームを採用し、新モデルであっても潜在的に高い信頼性が保たれている点だ。これまでは「ハイエンド機はすべてにおいて最高級を求めるため、信頼性/性能の代わりに高価であるのが当然だ」という意識が根強かったが、昨今はそのような意識を許さない企業においても、大容量/高速オンラインストレージの利用ニーズが高まっている。さらに、コスト意識が強くなったことで、無条件に付加価値の高い保守を付けることは厳しくなってきた。

 それらのニーズにマッチしたQNAPのエンタープライズ向けシリーズは、「ハイエンドなのにニッチ」という、新しい利用者層を開拓した製品である。利用ニーズに対する最適化を追求していけば、性能、信頼性、コストを高度にバランスさせたTS-1279U-RPのような「ハイエンド・ユーザマネージド」な製品が、“最終的な答え”として浮かび上がってくる企業は多いはずだ。

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