この評価作業で用いるシステム構成は、“Sandy Bridge-E”世代のCore i7-3960X(3.3GHz、Turbo Boost Technology有効時で最大3.9GHz)とIntel X79 Expressチップセット搭載マザーボードの「DX79SI」という組み合わせを用いた。システムメモリは、DDR3-1600動作の4Gバイトモジュールを4枚、データストレージはIntel SSD 510 120GBでSerial ATA 3.0接続になる。比較用のGPUは、「Radeon HD 6970」と「GeForce GTX 580」を用意した。
GPU | Radeon HD 7970 | Radeon HD 6970 | GeForce GTX 580 |
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CPU | Core i7-3960X | ||
CPU動作クロック | 3.3GHz(Turbo Boost Technology有効時で最大3.9GHz) | ||
マザーボード | インテル DX79SI | ||
チップセット | Intel X79 Express | ||
システムメモリ | G.Skill F3-14900CL9Q-16GBXL(DDR3-1600動作 4Gバイト×4枚) | ||
HDD/SSD | Intel SSD 510 120GB | ||
OS | 64ビット版 Windows 7 Ultimate Service Pack 1 | ||
Futuremarkのベンチマークテストは、「3DMark 06」、「3DMark Vantage」、「3DMark 11」を測定した。ただし、3DMark 06は、8xアンチエイリアス(AA)、8x異方性フィルタリング(AN)を適用した条件のスコアだけを検討する。それ以下の条件では負荷が軽すぎるという判断だ。ゲームタイトルによるベンチマークテストは、DirectX 11対応のみとし、「Crysis 2」、「F1 2011」、「BATMAN ARKHAM CITY」を測定した。F1 2011とBATMAN ARKHAM CITYは、AAを含め最高画質で計測している(ただしRadeonとGeForce共通となる設定範囲において)。
3DMark 06の3DMarksは、解像度条件で1280×1024ドットから2560×1440ドットまでRadeon HD 7970がトップだ。SM2.0 Scoreにおいては、GeForce GTX 580と同等だが、HDR/SM3.0 Scoreではより高いスコアを出している。また、HDR/SM3.0 Scoreを見るかぎり、高解像度での落ち込みがGeForce GTX 580と比べて少ない。
3DMark Vantageでも、Radeon HD 7970はRadeon HD 6970とGeForce GTX 580を大きく上回る。特に3DMark Vantageでは、GeForce GTX 580がPhisXに対応する点で有利だが、それを除外したGraphics Scoreを確認すると、Radeon HD 7970がGeForce GTX 580に対して高いスコアを出している。
3DMark 11のトップもRadeon HD 7970だ。Graphics関連テストはもちろん、Combinedテストでもトップのスコアを出している。Physicsテストだけは、GeForce GTX 580におよばなかったが、その差は100ポイント程度で大きな違いとはならない。
Crysis 2におけるGeForce GTX 580とのスコア差は、最大でも4fps程度で、ほぼGeForce GTX 580と変わらないと評価していい。F1 2011では、低解像度条件でGeForce GTX 580に負けているものの、高解像度条件で逆転するという傾向がみられた。ほかのベンチマークテストでも低解像度条件から高解像度条件における落ち込みが少ない傾向があるように、フルHD級の高解像度でゲームを動かしたい需要において、Radeon HD 7970は実力を発揮しそうだ。
BATMAN ARKHAM CITYでも、Radeon HD 7970が常に頭ひとつ抜けたスコアを出している。評価では平均フレームレートで性能を比較しているが、最小フレームレートの結果も重要だ。Radeon HD 6970でも平均フレームレートはほかのGPUと比べてそれほど低くないが、最小フレームレートでは10fps前後まで落ち込み、体感としては“ガクガクの描画”になるシーンがある。一方で、GeForce GTX 580は最小フレームレートでもRadeon HD 6970より高く、Radeon HD 7970では、最も落ち込んでも40fps程度をキープしている。
消費電力の比較では、高負荷条件で、Radeon HD 7970はRadeon HD 6970より約20ワット多い。計測値で300ワットを超えたが、それでも、GeForce GTX 580より低い。一方で、アイドル時の消費電力は、Radeon HD 6970より低い。ディスプレイが消灯したときのアイドル時消費電力はさらに下がり、システム全体で54.9ワットと、ディスプレイ点灯時と消灯時で約15ワットほどの差が確認できた。
ベンチマークテストでは、Radeon HD 7970はその多くでトップをマークするなど、良好な結果を得た。消費電力でも、アイドル時で従来から大幅に下がっている。Radeon HD 6970では、高負荷時に爆音を発した、リファレンスデザインのクーラーユニットでも、動作音が改善して、同じ状況でも比較的静かだ。性能と消費電力のバランスがよく、不満を感じさせない。
この“バランスのよさ”が、新しくなったアーキテクチャによるものなのか28ナノメートルプロセスルールによるものなのかは定かでないが、どちらにしても、この優位がNVIDIAの“28ナノメートルプロセスルール”世代のGPUが登場しても維持できるかが興味深い。NVIDIAも2012年の早い段階で投入する予定の開発コード名「Kepler」でだ28ナノメートルプロセスルールを導入する。
AMDでは、発表しても製品がないことが常態化しているが、Radeon HD 7970にいたっては発表されたものの、日本における発売時期や価格に関して情報が明らかにされていない。28ナノメートルプロセスルールの歩留まりが分からないため、需要が満たされるだけ出荷できるのか不安視する関係者も多い。今回の評価で確認できたパフォーマンスで、発表当時のRadeon HD 6970搭載グラフィックスカードの価格帯であるなら、多くのユーザーが支持する製品になるだろう。ただし、出荷微量で入手困難となれば、その高い支持が、そのまま裏返ってAMDは多くのユーザーから非難されることになるはずだ。
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