AMDは、12月22日(現地時間)に同社が“Graphics Core Next”と呼ぶ次世代グラフィックスアーキテクチャを採用したグラフィックスカード「AMD Radeon HD 7970」を発表した。同製品は、開発コード名“Southern Islands”シリーズとして開発を進めてきた「AMD Radeon HD 7000シリーズ」で、シングルGPU構成フラグシップモデルだ。
AMD Radeon HD 7970は、TSMCの28ナノメートルプロセスルールで43億1000万トランジスタを集積し、同社のFusion APUで“Radeon Core”と呼ぶStream Processorを2048基搭載する。さらに、グラフィックスメモリインタフェースを384ビットに拡張し、ピーク演算性能は3.79TFLOPSと、従来の同社シングルGPU最上位モデルとなるRadeon HD 6970に比べて、約1.4倍の性能向上を実現した。
また、AMDは同製品を、グラフィックスカードとしては世界で初めて「第3世代PCI Express」とWindows 8で採用を予定する「DirectX 11.1」のそれぞれに対応することもアピールする。
Radeon HD 7000シリーズで採用する“Graphics Core Next”(GCN)とAMDが呼ぶ新しいグラフィックスアーキテクチャは、同社が推進するCPUとGPUを融合した“Fusion”でも大きな役割を果たす存在だ。
Radeon HDシリーズは、これまで依存関係のない複数の命令を1つの命令としてまとめて実行できる「VLIW」(Very Long Instruction Word)方式を採用してきた。この方式は、グラフィックス用途ではGPUのコアを効率よく利用できるが、汎用コンピューティング用途などでは、実行する複数の命令に依存関係があると、その処理が終わるまでGPUコアの一部を待機させる欠点もあった。また、複数の命令をまとめるためにGPU内部でコンパイルしなおすのに一定の時間を必要とすることも、パフォーマンスに影響を与える結果となった。
そこで、GCNでは(AMDグラフィックス部門の前身である)ATI TechnologiesがRadeon HDシリーズ以前に採用していた、一般的なSIMD方式に立ち返るとともに、複雑な命令処理にも対応できる機能拡張を行なうことで、グラフィックス処理と汎用コンピューティング処理の両方でスループット性能の向上を図った。
GCNでは、16基のベクタ演算ユニット(Stream Processor。SP)をひとまとめにした16wayベクタSIMDユニットの4基(合計で64SP)と、1基のスカラプロセッサ、4基のテクスチャフィルタリングユニット、16Kバイトのリード/ライト対応1次キャッシュメモリを統合した「Compute Unit」(以下、CU)を最小単位とする。Radeon HD 7970では、CUを32基搭載し、2048SPを統合する。
CUは、それぞれ命令発効ユニットやロード/ストアユニットを搭載し、CU 4基で16Kバイトの命令キャッシュと32Kバイトのデータキャッシュ共有することで、個々のCNで独立したカーネル処理ができるようにしている。CUに搭載されたスカラユニットは、フル機能の整数演算機能を備えており、複雑な演算処理の補助に使ったりCU内部の制御に利用する小さなCPUの役割を果たしたりすることで、CUのスカラSIMDユニットを効率よく機能できるようにする。
2次キャッシュメモリは32基のCUで768Kバイトを共有し、CUに内蔵された1次キャッシュと同様にデータ読み込みだけでなく書き込みにも対応する。1次キャッシュメモリと2次キャッシュメモリで書き込みにも対応したのは、汎用コンピューティング処理で各CU間のデータ共有を容易にするためでもあり、CPUとGPUの連係を高める上でも大きな役割を果たす。
GCNでは、ジオメトリ性能も向上している。Radeon HD 7970に統合された32基のCUは16基ごとに分けられ、それぞれにジオメトリエンジンを搭載する。このジオメトリエンジンに統合されたテッセレーションユニットは、AMDとしては第9世代に当たり、頂点データの再利用率を引き上げるなどして、Radeon HD 6900シリーズに比べて最大4倍の性能を実現するとAMDは説明する。
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