ナナオ、IPS最速の23型フルHD液晶「FORIS FS2333」――視覚特性に基づき暗部視認性を向上“Smart monitor”の正体はコレ(1/2 ページ)

» 2012年06月14日 15時00分 公開
[前橋豪,ITmedia]

ゲームやネット動画、写真の暗部を見やすくする「Smart Insight」

ナナオの23型フルHD液晶ディスプレイ「FORIS FS2333」。画面表示している画像は「コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア 3」

 ナナオは6月14日、23型フルHD液晶ディスプレイ「FORIS FS2333」を発表した。2012年7月13日に発売する。価格はオープン、EIZOダイレクトでの直販価格は3万9800円だ。同社のエンターテインメントブランド「FORIS」(フォリス)の新モデルで、2011年7月に発売された「FORIS FS2332」の後継機となる。

 FORIS FS2333は、5月17日に同社が“Smart monitor”として予告していた製品。最大の特徴は、世界初という人間の視覚特性に基づいた暗部視認性向上技術「Smart Insight」(スマート・インサイト)を搭載したことだ(2012年6月時点のコンピュータ用カラー液晶ディスプレイにおいて世界初。同社調べ)。

 Smart Insightでは入力映像を毎フレーム解析。画像で隣接するドットを分析して暗く見づらいエリアを自動判別し、ドットごとに個別の明暗調整を行うことで、暗部を明るく見やすく表示する。この際、人間の視覚特性(Retinex理論)に基づいて、1枚の画像から照明光成分と反射率成分を抽出、照明光成分の暗部を明るく動的に補正(人の目の順応に相当)することで、視認性に大きな影響を与える反射率成分を見やすくし、実物を目視した場合の見え方に近づける。この手法による暗部の視認性向上技術が世界初という。

 一般的な液晶ディスプレイにも、ガンマやヒストグラムの自動調整によって暗部を明るく表示する製品は存在するが、画面全体に一括して処理を行うため、輪郭がぼやけたり、白っぽくなってコントラスト感や明部の色味が損なわれる弊害もあった。Smart Insightでは人間の目の見え方を想定し、シーンに応じた自動処理やドットごとに異なる明暗調整を行うことで、暗部は明るく見やすく表示しつつ、明部の色味やコントラスト感は自然に再現することを狙っている。また、局所コントラスト機能と異なり、かなり大胆に暗部階調を持ち上げ、デジタルカメラのハイダイナミックレンジ(HDR)合成画像に近い見え方になる。

既存の液晶ディスプレイによる暗部の視認性向上技術と、Smart Insightの違い。Smart Insightではドットごとに異なる補正をかけることで、ディテールを見やすく、輪郭もくっきり再現する

 Smart Insightは、映像が暗いゲームやネット動画、暗いシーンが続く映画やドラマ、逆光や露出がアンダー寄りの写真などを明るく見やすくすることを目的に開発されたものだ。ただし、元画像の階調はリニアに再現されないため、フォトレタッチ用途や映像コンテンツ本来の色を正確に表示したい場合は、オフにして使う必要がある(sRGBモード、Paperモード、オプションのカラーマッチングツール「EIZO EasyPIX」利用時は自動的にオフになる)。

 Smart Insightの強度は5段階(オフも含めて6段階)に調整可能。強度を上げるごとに暗部が明るく補正される。また、カラーモードの「Game」選択時には、RTS(リアルタイムストラテジー)とFPS(ファーストパーソンシューティング)向けに最適化されたSmart Insightの設定が利用でき、強度をオフ、RTS(Low)、RTS(Medium)、RTS(High)/FPS(Low)、FPS(Medium)、FPS(High)から選べる(RTSモードよりFPSモードのほうが明るい)。

 このゲーム用設定は海外のプロe-Sportsチーム「Fnatic」に開発協力を依頼して実現したもので、競技性の高いRTSやFPSを明るい画面でプレイできるように、中間のRTS(High)/FPS(Low)設定が、ほかのカラーモードでの最大強度(5)に近い設定になっている。同社によれば、海外のe-Sports市場を意識してRTSやFPSという設定名にしたが、強度を調整することにより、さまざまなゲームジャンルに対応できるとしている。

Smart Insightを最大強度で適用した場合の見え方の違い。左がゲーム映像(コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア 3)、右が写真の表示。各写真において、左が前モデルのFORIS FS2332、右が新モデルのFORIS FS2333での表示だが、暗部が明るく見やすい表示に自動調整されつつ、明部も破たんせず、見やすい表示になっているのが分かる

オフの状態から、RTS(Low)、RTS(Medium)、RTS(High)/FPS(Low)、FPS(Medium)、FPS(High)と強度を段階的に上げ、最後にオフに戻している。暗部がかなり持ち上がって視認性が向上するのが分かる。撮影したカメラのダイナミックレンジが追いついていないが、実物は暗部がもっと明るく見えつつ、明部も白飛びしていない
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 Smart Insightは、前モデルのFORIS FS2332から搭載している同社独自の超解像技術「Smart Resolution」(スマート・レゾリューション)と、動画領域のみを自動判別して超解像処理する「Smart Detection(FORIS FS2332での名称は「動画領域補正」)」と組み合わせて利用することが可能だ。

 Smart Resolutionには従来同様、肌エリアを検出して適用範囲から除外し、髪や服に対してのみ超解像処理を施す「肌補正」、テキストコンテンツを自動判別して不要な超解像処理はしない「文字補正」の設定も用意されている。

 この3つのSmart機能(Insight/Resolution/Detection)を同時利用しても映像信号の処理による表示遅延は発生しない(0.05フレーム未満)ため、入力タイミングがシビアなゲームも含め、さまざまなシーンでの視認性向上、閲覧に最適な表示が行えるという。

 付属のリモコンには、これらSmart機能の設定メニューに直接アクセスできる「Smart」キーが設けられている。リモコンは、FORIS FS2332に付属していた小型のカード型から、細長くボタンが押しやすいデザインのものに変更された。

画作りが完成された商業コンテンツだけではなく、画作りを意図していないアマチュアの動画や写真も見やすく表示したい、というのがSmart Insightの企画背景(写真=左)。左がFORIS FS2332、右がFORIS FS2333のリモコン(写真=右)

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