―― 薄型化や軽量化へのシビアな要求がある中、グリッドを入れるような設計は逆転の発想といいますか、モバイルノートPCでは珍しいですね。
小中氏 確かにノートPCでは堅牢性を高めるため、内部にあえて空間を作って衝撃を逃がす作り方もあります。FMVのノートPCでも、通常は基板やパーツの高さに合わせて衝撃を吸収できるだけの厚さの余裕を持たせています。
しかし、Ultrabookのように薄型のボディでは、このように内部スペースを確保する設計は困難です。なので、今回はケータイと同じ発想で堅牢性を考えました。ケータイの場合は、PCより小型軽量なので、内部にすき間がないクリアランスゼロ設計になっています。これは、内部でブルブルと部品が振動して故障することも防げる構造です。私自身がWindowsケータイ(F-07C)の開発で経験できたことを、PCにうまくフィードバックできた部分だと思います。
松下氏 ボディ内部にクリアランスができてしまうと、そこの強度が弱くなってしまいます。今まではクリアランスゼロ設計という思想がなかったのですが、ここまでの薄型ボディで剛性を持たせるためには、クリアランスゼロ設計が必要です。とはいえ前例がなく、内部で部品をガチガチに固めて余計なスペースを埋めるにはどうすべきか考えた末、このグリッドにたどり着きました。
グリッドを部分的に入れても全体が強くならないので、キーボードの下には均一にグリッドを入れています。グリッドのシート自体も衝撃に耐える構造をいろいろと検討した結果、この形状になりました。
ちなみにグリッドを避けるようにして配置してある7ミリ厚のHDDもキーボードの真下に配置してあり、HDDで一部のキーを支える構造になっています。HDDの平らな裏面がキーボード側に向くように搭載しているのがポイントです。もちろん、HDDへの耐衝撃性にも配慮した作りになっています。
―― 結果として、ボディの剛性はこれまでのFMVのモバイルノートPCと比較した場合、どれくらいのレベルに達したのでしょうか?
小中氏 持ち運び時の耐衝撃性の考え方としては、全面に加重が広くかかるパターン(全面加圧)と、カバンの中に小さな突起物があり、それで装置の限られた部分に加重がかかるパターン(1点加圧)を考えています。
カタログに公開している数値は前者で、天面への全面加圧試験で約200kgfを達成しています。これは13.3型モバイルノートPCの「FMV LIFEBOOK SH」シリーズと同じ値です。もちろん、1点加圧も重視していて、SHシリーズと同じ約35kgfはクリアしています。そのほかの耐久性能もSHシリーズと同等の試験基準を満たしています。
松下氏 薄型軽量と剛性の両立については、内部のグリッドとともに、天面と底面にマグネシウム合金を使っていることもあります。底面のボトムカバーの端と、アルミのプレスで作ったキーボード面カバーの端を箱のように立ち上げて作り、それをかみ合わせることで剛性を出しました。薄型化や小型化を考えると、片方の面の立ち上がりをなくして、1枚の板を載せるような構造にしてしまうのが楽ですが、剛性を考えてこのような手間をかけています。
また、2つのカバーをかみ合わせる際、単に継ぎ目を真ん中にすると見栄えが悪くなるので、先に話に出た2ミリ幅のサイドビューを維持しつつ、弁当箱のように片方のカバーをかぶせるように設計し、デザインの強さに見合った剛性を持つ構造にしています。
―― 超圧縮デュアルグリッド構造のおかげか、実際に使ってみてキーボードはストロークが浅い割に、打った感触がなかなかいいですね。たわみがないですし、キーの反発が適度に保たれていると思います。
小中氏 キーボードのキーストロークが1ミリと聞くと、世の中のノートPCの常識で考えると、あまりいいものだとは思ってもらえないでしょう。
今回はその不安を解消するため、内部にグリッドを入れたわけですが、ほかにもキーキャップのラバーを専用に作り直して、これまでのストローク1ミリのキーボードでは出せなかったクリック感を実現しました。また、前に話に出たサイドカラードキーや、キートップを0.15ミリだけ緩やかにくぼませることで、指がキーにフィットしやすくする「球面シリンドリカルキートップ」も使いやすさに貢献しています。
さらに、キーボードユニットをパームレストと一体化したキーボードベゼルのカバーに熱で溶着させることで、キータッチをより安定したものにしています。薄いからといって、キーボードの使い勝手は犠牲になっていないと思います。
―― 今回は搭載していませんが、キーボードバックライトや防滴仕様については検討したのでしょうか?
小中氏 どちらもモバイルノートPCのユーザーから一定のニーズがあることは分かっています。特にキーボードバックライトは検討していて、現状のサイドカラードキーと同時に搭載できるのか、技術面での確認も進めています。
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