インタビュー
» 2012年09月10日 16時00分 公開

後編 MADE IN JAPANの“360度こだわりUltrabook”を解剖する「FMV LIFEBOOK UH75/H」完全分解&開発者インタビュー(4/5 ページ)

[前橋豪,ITmedia]

基板の生産方法や放熱設計にもこだわり

―― Ultrabookとしては、意外に基板が大きいほうですね。マザーボードにコネクタ類を直付けしつつ、小さなサブボードも含め、全体的にシンプルにまとまった印象です。このマザーボードは何層基板でしょうか?

小中氏 両面実装の10層基板です。確かにこれだけ大きな基板を作ると、コストがかかるのではないか、と思われそうですが、実はそうでもありません。

 今回は1枚の大きなプリント基板からマザーボードとサブボードが2枚ずつ切り出せるように、うまくレイアウトすることができました。もとのプリント基板で捨てる部分が多いと無駄が増えてコストもかさみますが、1度に無駄なく2台ぶんの基板を切り出せる設計の工夫により、効率のよい生産体制を整えています。

マザーボードの表面(写真=左)と裏面(写真=右)。右側面のコネクタやSDメモリーカードスロットがオンボードで実装されている

CPUはTDP 17ワットの超低電圧版で、Core i5-3317U(1.7GHz/最大2.6GHz)を搭載する(写真=左)。直販モデルではCore i7-3667U(2.0GHz/3.2GHz)も選択可能だ。チップセットは1チップ構成のIntel HM76 Expressを採用する(写真=右)

指紋センサーや左側面のコネクタは、マザーボードとフレキシブルケーブルでつながれた2枚のサブボードで提供される

メモリはオンボード実装ではなく、4GバイトのPC3-12800 SO-DIMM(DDR3-1600 SDRAM)を装着している(写真=左)。IEEE802.11b/g/n準拠の無線LANとIEEE802.16e-2005準拠のWiMAX(受信最大20Mbps/送信最大8Mbps)を提供するハーフサイズのPCI Express Miniカード「Centrino Wireless-N+WiMAX 6150」(写真=右)

―― PCの設計にケータイのクリアランスゼロ設計を採り入れたということで、気になるのがボディの発熱です。Ultrabookは消費電力も発熱量もケータイとは比べものになりませんが、放熱設計に問題はないでしょうか?

松下氏 問題ありません。クライアンスゼロ設計とはいいましたが、ボディの中には少しだけ空気が流れるので、エアフローのシミュレーションを行い、どの部分に吸気口を開ければ、効率よく冷やせるかという熱設計上の工夫をしています。

CPUには幅広のヒートパイプが装着され、ファンで空冷される

 底面に吸気口があるので、これで外気を取り込み、CPUクーラーのファンで熱を排出しているほか、ボディが樹脂より熱伝導率が高い金属なので、ボディ全体で放熱をフォローする仕組みです。

 CPUクーラーも幅広で薄型のヒートパイプに、5.5ミリ厚の薄型ファンを組み合わせた専用設計となっていて、これも放熱に大きく貢献しています。CPUクーラーの剛性を考えて板金から専用に起こしました。ファンの周辺から空気が漏れないようにダクト状の壁を設けて、すべての排気がフィンを通って冷まされるように設計しています。

小中氏 このCPUクーラーで特徴的なのは、Ultrabook用に薄く作ってあることに加えて、ヒートパイプが異様なまでに太いことです。構造設計の部長が放熱に並々ならぬこだわりを持っていて、「ヒートパイプをもっと太くして、放熱を強化すべきだ」というので、実際に放熱設計を確認したところ、CPUの熱を効率的に逃がすのに幅広のヒートパイプはやはり有効と分かり、これも開発の最後のほうで改良しました。

 UH75/HはTDP(熱設計電力)が17ワットの低電圧なCPUを採用していますが、TDP 35ワットの通常電圧版CPU用クーラーにほぼ匹敵する放熱機構がこの薄型ボディに入っていると考えてください。冷却の精度にしてもファンの回転数を低速から高速までリニアに制御できる設計にするなど、他機種では使っていない細かな制御方式も採用して、合わせ技で放熱効率を上げています。

取り外したヒートパイプとCPUファン。この組み合わせにより、TDP 35ワットの通常電圧版CPU用クーラーにほぼ匹敵する放熱性能を持つという

狭額縁の液晶ディスプレイはパネルベンダーと共同開発

狭額縁の液晶ディスプレイは、本体の小型化だけでなく、デザインを洗練させて見せることにも一役買っている

―― PC本体側の作り込みだけでなく、狭額縁で薄くフラットな液晶ディスプレイ部も相当力が入っていますね。

小中氏 狭額縁の液晶ディスプレイモジュールは厚さが3.6ミリのもので、これを厚さ4.7ミリの液晶ディスプレイ部に内蔵しています。この薄さと狭額縁によるスリムなイメージを崩さずに、HD Webカメラ(有効画素数約100万画素)や無線LANのアンテナまで収納するため、今までとは違う製造方法に踏み切りました。

 通常は液晶ディスプレイモジュールの周辺にスペースを設けて、Webカメラやアンテナを配置するのですが、今回は液晶ディスプレイ表面のガラスの裏側にカメラとアンテナを直接取り付けることで、薄型化と小型化を実現しています。

 ノートPCの液晶ディスプレイは、液晶パネルベンダーの既製品を買ってきてはめ込むだけのものが大半です。それでも普通は問題ないのですが、UH75/Hに必要な薄型ボディと狭額縁を達成するには不十分だったため、液晶ディスプレイ部のデザインを初めて液晶パネルベンダーと共同開発しました。

 ここでも3D CADのデータを液晶パネルベンダーと完全に共有し、液晶パネル自体の構造から天面やフレーム部を含む液晶ディスプレイ部全体のデザインまでお互いに情報を出し切って、UH75/H向けに極限まで最適化した設計としています。液晶パネルベンダーも最初は難色を示していましたが、実際に海外まで行って説明して、2日間缶詰で検討しあったことで、お互い納得できるものができたと思います。

液晶ディスプレイ部は厚さ4.7ミリと薄くできている

 お互いの中で1つの目標にしたのは、ガラスを削らずに使うということでした。液晶ディスプレイモジュールを薄くするには、ガラスをスリミング(化学研磨)するという手法があるのですが、今回はガラスを削らず、強度を保ったままで薄型化を目指しました。ガラスを削らずに、ガラスを削ったほかのFMVのノートPCより液晶ディスプレイ部を薄くできたのは、細かくて誰も気にしないかもしれませんが、個人的には誇れる部分です。

―― HD Webカメラがこの狭いスペースによく入りましたね。

 このHD Webカメラについても、特殊な設計となっています。液晶ディスプレイモジュールを薄型化したのはいいのですが、カメラも薄型化しないと入らないような状況でした。しかも、カメラのレンズだけを薄くしても基板部分が入りそうにありません。

 カメラのほかにアンテナのスペースも必要ですし、海外向けには「世界初のLTE搭載Ultrabook」として販売していて、大きなLTEのアンテナも入れる必要があります。すると、液晶パネルの上に残されたのは小さな四角いスペースだけで、薄いカメラのレンズ部分しか入りません。

 そこで、カメラの実装にもケータイの設計を応用しました。ケータイ用に薄く作られたHD Webカメラのレンズとセンサー部分だけを液晶パネルの上に配置し、そこから細いフレキシブルケーブルを液晶ディスプレイモジュールの下まではわせてカメラの制御基板につなぎ、信号をUSBに変換したうえでPCに接続するという、ややこしい実装をしています。ケータイ用のカメラをこんなに長くケーブルで引っ張った人はいないのではないでしょうか(笑)。

―― 最近は液晶ディスプレイの高解像度化、高画素密度化がトレンドになっていますが、UH75/Hは標準的な1366×768ドット表示です。今後、高解像度のオプションを用意する予定はありますか?

小中氏 現状ではこの狭額縁で14型ワイドの高解像度パネルは存在しませんが、高解像度のニーズがあることは認識していて、マーケティング担当に相談しながら検討しているところです。もちろん不可能な仕様ではないので、まずはUH75/Hの反応を見てから、年内くらいに判断して決めていこうと思います。

取り外した液晶ディスプレイモジュールの表面(写真=左)と裏面(写真=右)。裏面の上部にはHD Webカメラとアンテナを装着するスペースがある。HD Webカメラのレンズ+センサー部から下の基板部までフレキシブルケーブルをはわせて接続している。実はHD Webカメラの隣に、LTEのアンテナのほかにも、次世代ワイヤレス通信機能のためのスペースが設けられている

【468*60】LIFEBOOK UH

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