CEATEC JAPAN 2012の東京大学 篠田研究室ブースでは、ワイヤレス充電機能を備えるテーブルの試作品が展示されている。「10ワット未満の電力ならば無線で伝送できる」(説明員)としており、ブースではスマートフォンの“置くだけ充電”や、無線給電でテーブルに置いた卓上扇風機を動かすというデモが行われていた。タブレット端末の充電も可能だという。
無線での電力伝送は、テーブルの中に電磁波を閉じ込める薄いシートを埋め込み、シート内に電磁波を流すという仕組みを採用した。シート内の電磁波で電磁場を生成する装置(カプラ)をテーブル上に乗せることで、カプラに接続したスマートフォンやタブレットなどの電子機器に電力を供給できる。ただし、テーブルから離れると電磁波が減衰するため、基本的には機器が(というよりもカプラが)テーブルに接していないと給電できない。
給電とともに無線通信も行える。ブースでは無線LANルータとタブレット端末を机の上に設置し、テーブル内部にあるシートを通じて通信を行うというデモを行っていた。「例えば、CEATEC JAPANのような大規模な展示会では、さまざまな場所で無線の電波が飛んでおり、無線の電波が届かないといったことが多い。この場合、テーブルの中に電波を飛ばすため、ほかの電波に干渉されず、安定した通信速度が確保できる」(説明員)という。
このテーブルは、NICT(情報通信研究機構)から依頼を受けた東京大学 篠田研究室が、NEC、セルクロス、帝人などの企業と共同で行っている研究の成果だ(リリースも出している)。電力伝送の効率や、人体への影響(机に触れている人が過度の電磁波を浴びないようにする)といった課題をクリアしたことで、製品を展示できるようになった。
ちなみに、ノートPCの充電は難しいようだ。「ある程度までは出力を上げても、人体への悪影響はないが、テーブルの周辺にあるほかの機器へ影響が出てしまう可能性があり、法律に引っかかってしまう。今は無線機器が多いので電磁波の規制が厳しい。このテーブルも電磁波が外に漏れないようにするのが大変だった」(説明員)という。
実用化の目処について聞いたところ、「(共同研究先の企業は)2014年から2015年あたりを目指しているようだ。カプラを端末に埋め込むことができれば、より簡単にワイヤレス充電が行えるようになる」(説明員)とのこと。充電ケーブルが不要になる未来もそう遠くないかもしれない。
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