もちろんキーボードの良し悪しは、スイッチの感触だけではない。キーボード下の構造やキートップの形状・素材、キーピッチ/ストローク、配列など、さまざまな要素がある。それらをすべて総合しても、ThinkPad X1 Carbonのキーボードは現時点、ベストに近い感覚と評価している。
具体的にどこがどうよいのか。
である。
(1)と(2)については前述した。(3)についてはあえて掘り下げて述べる必要もないかもしれない。個人的な基準では仕事用に運用できるのは横縦とも17.5ミリくらいまでだと感じている。最近は業界全体の傾向として横ピッチはそこそこながら、縦ピッチが狭い──というものが増えつつあるのは意外と盲点である。
(4)のキーボード下の構造、ここも重要だ。どれほどキーボードユニット(部品)単体がよくできていても、キーボード下がスカスカで剛性が足りていない設計であれば、打鍵感は悪くなる。過去のThinkPadにも──比較的低価格なモデルではキーボード下の剛性が足りず、フカフカな打鍵感のものが存在したが、一方で過去の名機と呼ばれるシリーズはいずれもこの部分がカッチリ素晴らしかった。
ThinkPad X1 Carbonもこの部分はとてもしっかりと剛性が確保されている。最近のThinkPadシリーズはThinkPad X1 Carbonに限らず、この部分をきちんと配慮した設計になっていると聞く。先日、新モデルのThinkPad T440sとThinkPad X240sに少し触れたが、確かにどちらもキーボード下の剛性はしっかりと確保されていた。これは安心した。
(5)についてはどうか。ThinkPadシリーズのキーボードは、スロープ形状と呼ばれるくぼみがキートップに付けられており、指を置きやすい。実際に長文を入力すると分かるが、スロープ形状とそうでないものとでは疲れ方が意外なほど違う。他社PCのキーボードにもこのような工夫はよくあるものだが、ThinkPadシリーズほどしっかりした凹みをのあるノートPC搭載キーボードのキートップはあまり存在しない。
その一方で、X1 CarbonではカーソルキーとPageUp/PageDnキーのキートップはフラットに、さらにスペースキー、変換/無変換キーなどは少し盛り上げた、「違う形状」となっているのもポイントだ。例えば筆者は「ひらがな/カタカナ」キーにIMEのオン/オフを割り当てて運用しているが、ThinkPadシリーズのキーボードであれば、この形状違いによって指の感触だけでどのキーかを判別できわけだ。
このキーごとに異なる形状とする工夫、薄型化を推進するモデルでは軽視されがちかもしれず、さらに「あまり関係ない。そこにコストをかけるより本体価格を安く」と思う人はいるかもしれない。ただキーボードの使い勝手を重視するならば極めて重要なこと──と、X1 Carbonのキーボードを打っていると改めて理解できるのである。
(続く)
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