NECとヤマハのキーマンが語る「AudioEngine、なにやってるの?」:提供するのは機能ではなく音(1/2 ページ)

» 2014年06月12日 21時08分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 既存モデルの基本性能強化モデルが多かったNECの2014年夏モデルだが、その中で新機軸として訴求していたのが、ヤマハと共同で開発した「AudioEngine」の導入だ。液晶一体型PCのVALUESTAR NとVALUSTAR S、そして、大画面ノートPCのLaVie Lで導入したこの技術は、ヤマハのハードウェアDSPをソフトウェア化したうえで実装している。その設定画面は、サウンドソースごとにプリセットした設定を選ぶほかに、「Spacious sound 3D」「Clear Voice」「Adaptive Volume」の項目を3段階で切り替えるだけだ。

 なぜ、わざわざDSPソフトウェアにしたのか? なぜもっと高度で複雑な設定ができないのか? その疑問を開発を担当したヤマハ 半導体事業部事業企画部技術開発グループ技師の石田厚司氏とNECパーソナルコンピュータ 商品企画部プラットフォームグループ主任の石井宏幸氏に聞いてみた。

ユーザーが望む高音質のためにヤマハと協業を

──NECとヤマハとの協業はいつから?

ヤマハの監修でスピーカーシステムを搭載した「VALUESTAR W」(VW970/VG)

石井氏 今から5年前の2009年にVALUESTAR Wに搭載するウーファーと2.1チャネルスピーカーシステムをヤマハと共同で開発して、このときにSOUND BY YAMAHAのロゴをとるようになってから協業関係を続けている。

 当時、デスクトップPCの企画において「高音質」に対するユーザーの要求が高くなってきたときだった。ヤマハがその領域で高い技術を持っていたので、協業してPCの開発を行うことになったのがスタートだ。

 ヤマハは、いろいろな場所にスピーカーを持ち込んで高い音質で鳴らすことができる技術を持っている。音響技術としては高いレベルを持っているが、それを、もっと小型化してPCに内蔵できるサンプルを作ってもらい、それをみてNECも製品化が実現できると判断してVALUESTAR Wで採用した。

 1年後にはVALUESTAR N向けに最適化した専用のスピーカーシステムをヤマハに開発をお願いして採用、その後、LaVie Lシリーズなど、搭載するモデルを増やしていっている。

──NECがVALUESTARやLaVieで音響を重視する理由は?

石井氏 ユーザーの高音質に対するニーズの高まりがあることから、VALUESTAR Wなどでサウンド環境に注力するようになった。これがユーザーの支持を得て、競合他社も同じような取り組みをするようになっている。そうなると、より高い音質を提供することで違いを出さなければならない。結果としてさらなる高音質に注力するようになる。

PCの作法が求めたソフトウェアDSP

──もともとハードウェアとしてあったDSPをヤマハがソフトウェアにして導入したのはなぜ?

石田氏 2014年夏モデルでAudioEngineを導入したが、この取り組みは2年前から行っていて、ようやくこのタイミングで実現できた。最初、ハードウェアのDSPをPCに導入しようとしたが、PCのOSやX86系CPUを基幹とするプラットフォームから制御しようとすると、「OSから見えないところで制御してはならない」などの“作法の違い”がハードルとなって実装が非常に困難だった。

 そこで、ハードウェアDSPのIP部分を抽出してソフトウェア化した上でPCで制御することにした。DSPをソフトウェアにすることで、OSからハードウェアを制御するときの“作法の違い”がだいぶ解消できるため、技術的に導入が可能という見通しが立った。

 ただ、ヤマハではパテント保護の観点からソフトウェア化には抵抗があった。しかし、NECとの協議のうえで、DSPのソフトウェア化に取り組むことになった。

──AudioEngineをNEC2014年夏モデルで導入するにあたって、どのような最適化を?

AudioEngineと導入した2014年夏モデルの「VALUESTAR N 970/SS」と「LaVie L」シリーズ

石田氏 2014年夏モデルで、ヤマハのAudio Engineを採用した。ヤマハが持っているDSPの技術をソフトウェアとして導入したものだ。ミュージック、テレビ、シネマ、ライブ、スポーツなど、サウンドソースごとに最適な音質を設定してユーザーに楽しんでもらえるようにした。

 AudioEngineは、ヤマハが持っているDSPの技術をNECのVALUESTAR NやVALUESTAR S、そして、LaVie Lに最適化して導入している。PCに限らず、民生機器にDSPを導入するには、ボディが音響に与える影響を考えないといけない。PCのボディに取り付けるスピーカーは必ずしも理想的な位置や状態となっていない。これを補正して音響を向上する技術として「Acoustic total-linear EQ」(以下、AEQ)を導入している。

 また、取り付けるスピーカーのサイズに制限があるため、出力する帯域にも制約がかかり、特定の周波数は十分聞こえるが、低音域は弱くなる傾向がある。その音域のバランスを補正するため、「Harmonics enhancer Extended」(以下、HXT)も導入して、低音域を補強している。

 ほかには、音場を拡大して臨場感を向上する「Spacious sound 3D」(以下、S3D)に、声の聞き取りやすいコンテンツで有効な音声強調処理の「Clear Voice」(以下、CLV)、そして、さまざまなコンテンツを再生するPCで問題になる、コンテンツごとに違う音量を自動で調整する「Adaptive Volume」(ADV)を用意している。

 ADVは、今回NECの夏モデルで導入するために追加した。また、AEQとHXTについては、VALUESTAR N、VALUETAR S、そして、LaVie Lに導入するために、それぞれチューニングを行っている。

 CLVも従来から変更を加えている。S3Dをかけると音場が拡大する代わりに音像がぼやけてくる。そうすると、スポーツコンテンツでアナウンサーの声が聞こえにくくなるため、CLVを調整して、背景音は拡大し、アナウンサーの声は抽出してクリアにするチューニングを行っている。

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