NASを導入すると、大容量と共有のしやすさから当初の想定を上回るペースで利用量が増えていくことがままある。NASの拡張性は事前に確認しておくべきだろう。ASシリーズにはいくつかの拡張方法が用意されている。
(1)ディスクの換装
より容量の大きなディスクに換装して利用容量を増やすことは2つの意味でメリットがある。
1つはシンプルなソリューションであり、利用者・管理者ともにシームレスな移行が可能であること。初期構築時にRAID 1/5/6/10といった冗長構成をとっておくことで、サービスを停止することも、データを失うこともなく容量を増やすことができる。
もう1つはディスクの寿命が来る前に交換することで、より安定した運用が期待できるということ。物理的な駆動部分があるHDDはどうしても故障の危険性が高くなる。とはいうものの、予防措置として故障していないディスクを交換することはコストの面で抵抗があるだろう。大容量ディスクへの換装は、容量を増やすと同時に耐用年数も延ばせる施策となる。
(2)上位モデル等への交換
よりパフォーマンスの高い上位モデルやベイ数の多いモデルへの交換は簡単だ。単純に交換元のASからディスクを取り出し、新しいモデルに装着すればよい。ベイ数が増えた場合には利用可能なRAID構成も増えるため、ディスクを追加した上でRAIDレベルを変更し、データを保持したまま利用容量を増やすことができる。
例えば、2ベイモデルで1TバイトのHDD2本でRAID 1構成(利用可能容量1Tバイト)をとっていたとする。ここからディスク取り出し、4ベイモデルに装着する。1台ディスクを追加すればRAID 5構成、2台追加すればRAID 6もしくはRAID 10(すべて利用可能容量2Tバイト)に移行できる。なお、冗長化していない構成の場合はシングルのみRAID移行が可能だ。
重要なデータを守るにはセキュリティ対策が重要だ。ASシリーズには次のセキュリティ対策が講じられている。
(1)管理画面へのアクセスの保護
管理画面にアクセスする際にHTTPを使用すると、通信が平文で行われるために盗聴されたり、セッションハイジャックなどのようななりすましのリスクがある。ASシリーズではHTTPS接続のみを有効にすることでこれらに対応することが可能だ。
(2)ADMディフェンダー
ASシリーズへの攻撃対策としてADMディフェンダーが用意されている。ADMディフェンダーは接続元のIPアドレスファイアウォール機能とネットワークディフェンダーからなる。ネットワークディフェンダーは指定時間内に指定回数のログイン失敗で接続元からのアクセスを遮断する。
(3)暗号化フォルダ
共有フォルダ単位で暗号化することができる。暗号化されたフォルダはNASの起動時に管理画面からパスワードを入力しなければ有効化されない。NASあるいはディスクを紛失しても情報の流出を防ぐことができる。
(4)ウイルススキャン
ASシリーズではApp Centralからアプリのインストールを行うことができる。その中の「Avast! Anti-Virus」をインストールすればストレージ上のファイルにウイルススキャンをかけることができる。社内のセキュリティポリシーとして、ストレージを持つすべての機器にウイルス対策を行う、という規定があった場合にも対応可能だ。
ビジネス用途でNASを導入する場合、目的としては情報の集約・共有によるメリットを最大限に生かす、ということが挙げられる。そのためには「いつでもそこにある」ということを考えておきたい。故障したときのこと、容量が足りなくなったときのこと、利用者数が増えて処理能力が足りなくなったときのこと――将来を見越した製品選択が重要だ。
次回はWindowsサーバからの乗り換えの際に気をつけるポイントを紹介する。
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