日本電業工作は、8月18日に「長距離無線LANシステムFalconWAVE4.9G-WiFiプラス」(以下、FalconWAVE4.9G-WiFi)による海上20キロの無線LAN伝搬試験を実施し、最大13Mbpsの安定したデータ転送に成功したと発表した。同社では、島しょ部や海上に設置した灯浮標などの施設などでの高速データ通信が可能になると説明している。
日本電業工作の説明によると、海上での無線伝搬は海面反射によるフェージング現象などにより、長距離伝搬が困難であったが、FalconWAVE4.9G-WiFiでは、MIMO伝送機能と高利得でアダプティブ・ビームフォーミング(ビームフォーム16本で水平120度、垂直46度をカバー)による広指向性アンテナを導入することで、海上での長距離無線通信を可能にしたという。
今回成功した試験では、親機設定のFalconWAVE4.9G-WiFiを神奈川県三浦市諸磯に、子機設定のFalconWAVE4.9G-WiFiを藤沢市江の島にそれぞれ設置してライブ映像の転送を行ってその転送速度を測定した。海面反射によるフェージング現象では、潮汐によって海面の高さが変化すると転送速度に大きな影響を与えるが、今回の実験では影響を受けつつも実用的な伝送速度を確保できたと報告している。
ただし、送受信ともに固定した指向性のある条件でのデータ通信で、船舶などの海上を移動する相手に対しては無指向性アンテナを使ってデータ通信は可能であるものの、伝搬距離は3〜5キロと短くなるという。
FalconWAVE4.9G-WiFiは、長距離無線通信に適した4.9GHz帯を利用するFalconWAVE4.9G-MPに2.4GHz帯無線LANアクセスポイント機能を組み込んだデバイスで、親機1台に子機4台までのデータ通信に対応できる。設定で親機と子機の切り替えが可能だ。消費電力は約30ワット。供給電力はバッテリーのほかに太陽電池にも対応する。ただし、価格が1台100万円と個人での購入は想定していない。
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