山田 人間って命を差別しますよね。自分に近い命は大切にするけれども、その一方で食肉もあるわけで。結構エグいことなんですけど、当たり前のこととして社会が受け入れているじゃないですか。
吉浦 他人と肉親でも違いますしね。
山田 同じようなことが知性に対しても起こる、ということがイメージとしてあって。一番人間に近いヒューマノイドを大切にしないというのは人間同士の関係性、もともと持っている倫理観の崩壊にもつながるわけです。だから、そういったものを大切にする、というのは想像しやすい。
じゃあそこからちょっとずつずれていった存在はどうなのか。「わりと人間っぽいけど、でも、人間じゃない」ってことになっているロボットがいると、それは人間ではない道具として扱われますよね。それに対してそんなの奴隷じゃないかと声を上げる人もいるけれど、実は多くの人は道具だと思っていて。でも、その一方でAIBOみたいなのもいる。AIの遺電子では、そうした知性の差から生じるいろいろな反応から、読んでいる人がどうなんだろうと考えてくれたらいいな、というのがあったんですね。
吉浦 「AIの遺電子」はヒューマノイドを題材としていながら、合間合間にトイロボットとかをすっと入れてくるじゃないですか。読者は意外とそれを普通に受け入れてるんですよね。
山田 むしろそっちのほうが受けてるくらいで、この回(第3話「ポッポ」)とかすごく人気で。僕も好きな回なんですけど。
吉浦 ああ、分かります。お母さんの「ママもわかんなくなっちゃった」なんていうのがまさにもう、ね。
山田 僕はいろいろグラデーションでごちゃごちゃしているものを描きたかったんですけど、それがよく分からない、分かりづらい、と言われることもあって(笑)
吉浦 設定ありきで考えているのに、そのもともとの設定にツッコミ入れられたり。
山田 ああ、そうそう。なんでだ、と言われてもこれがやりたいからだ、っていう(笑)
吉浦 「サカサマのパテマ」でも「なんでヒロインだけさかさまなんですか」って、それがやりたいからに決まってるだろう! というね(笑)
一同 (笑)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.