これからの人類はAIとどう向き合っていくべきか――「AIの遺電子」山田胡瓜と「イヴの時間」吉浦康裕、水市恵が語る現在と未来アニメ監督×漫画家×小説家(8/10 ページ)

» 2016年04月14日 10時30分 公開
[瓜生聖ITmedia]
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知性のグラデーション

山田 人間って命を差別しますよね。自分に近い命は大切にするけれども、その一方で食肉もあるわけで。結構エグいことなんですけど、当たり前のこととして社会が受け入れているじゃないですか。

吉浦 他人と肉親でも違いますしね。

山田 同じようなことが知性に対しても起こる、ということがイメージとしてあって。一番人間に近いヒューマノイドを大切にしないというのは人間同士の関係性、もともと持っている倫理観の崩壊にもつながるわけです。だから、そういったものを大切にする、というのは想像しやすい。

 じゃあそこからちょっとずつずれていった存在はどうなのか。「わりと人間っぽいけど、でも、人間じゃない」ってことになっているロボットがいると、それは人間ではない道具として扱われますよね。それに対してそんなの奴隷じゃないかと声を上げる人もいるけれど、実は多くの人は道具だと思っていて。でも、その一方でAIBOみたいなのもいる。AIの遺電子では、そうした知性の差から生じるいろいろな反応から、読んでいる人がどうなんだろうと考えてくれたらいいな、というのがあったんですね。

※2016年4月7日発売「週刊少年チャンピオン」2016年19号掲載の第21話「シャロンとブライアン」はこの「知性の差別」が描かれている。

「イヴの時間」では人間に近いアンドロイドでも家電扱い。アンドロイドのサミィが差した傘に入っていたところを嘲笑されたリクオはサミィを雨ざらしにする

吉浦 「AIの遺電子」はヒューマノイドを題材としていながら、合間合間にトイロボットとかをすっと入れてくるじゃないですか。読者は意外とそれを普通に受け入れてるんですよね。

山田 むしろそっちのほうが受けてるくらいで、この回(第3話「ポッポ」)とかすごく人気で。僕も好きな回なんですけど。

吉浦 ああ、分かります。お母さんの「ママもわかんなくなっちゃった」なんていうのがまさにもう、ね。

山田 僕はいろいろグラデーションでごちゃごちゃしているものを描きたかったんですけど、それがよく分からない、分かりづらい、と言われることもあって(笑)

吉浦 設定ありきで考えているのに、そのもともとの設定にツッコミ入れられたり。

山田 ああ、そうそう。なんでだ、と言われてもこれがやりたいからだ、っていう(笑)

吉浦 「サカサマのパテマ」でも「なんでヒロインだけさかさまなんですか」って、それがやりたいからに決まってるだろう! というね(笑)

一同 (笑)

「サカサマのパテマ」製作:サカサマ会(c)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013。2013年に公開された吉浦監督の映画作品。ヒロインはずっとサカサマ

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