日本エイサーは8月2日、2in1タブレットPC「Switch Alpha 12」とWindows 10 Mobileスマートフォン「Liquid Jade Primo」を同時に発表した。Switch Alpha 12は8月5日から、Liquid Jade Primoは8月25日から、ダイワボウ情報システム(DIS)を通して主に法人向けに販売する。
出荷台数の減少による「冷え込み」が指摘されているPC業界。日本エイサーは「冷え」に対してどのような対策を打とうとしているのか。
複数の調査会社のリポートによると、2015年のPC出荷台数は世界的に大幅に減少している(参考記事)。この減少は、日本市場も例外ではない。
日本エイサーのボブ・セン社長は、現在のPC市場の状況を「夏の気温に反して冷え込んでいる」と表現する。その要因としては、「スマホの普及」や「PCのコモディティ(日用品)化」が良く上がるが、セン社長は「ユーザーがPCに求めていること」と「開発・製造側(メーカ)が作っているPC」が乖離(かいり)していることが、冷え込みの真の原因であると見ている。
「冷え」対策として、セン社長はコンシューマー向けには「より利便性の高い製品」を継続して提供しつつ、法人向けには「より生産性の高い、成熟した仕事道具としてのデバイス」を開発するとした。
Switch Alpha 12とJade Primoは、この方針にもとづいて開発された法人向け製品だ。Windowsユーザーの比率が圧倒的に高い日本市場の特性を踏まえつつ、法人向けにさまざまな形状(フォームファクタ)のWindows 10デバイスを用意し、生産性を高めるための選択肢を増やすことで市場を「温める」。
Switch Alpha 12は、法人向けPC市場で高まる2in1 PCへの需要に応えるために投入される。カバーキーボードと筆圧検知対応のスタイラスペン「Acer Active Pen」を同梱することで、ラップトップPCの代替としてもタブレットPCとしてもすぐに使い始められるようになっている。Windows 10の「Anniversary Update」を適用することで、同アップデートにおける新機能「Windows Ink」を快適に使えることも売りの1つだ。
他社を含めた2in1タブレットPCでは、一般に「性能」と「静音性」がトレードオフの関係にある。例えば、性能重視でCore iファミリーのプロセッサを搭載すると、排熱処理をするためにファンを内蔵しなければならず、騒音をゼロにはできない。逆に、静音性重視でファンレス設計にするためにCore Mファミリーのプロセッサを搭載すると、処理性能がある程度犠牲になる。
この「二律背反」を解消してファンレスと高性能プロセッサを両立するために、Acerでは「Acer LiquidLoop」と呼ばれる新しい排熱機構を開発した。この機構では、銅製の受熱部とヒートパイプの中に冷却液を密封し、液自身の気化・液化の特性で液の循環をすることで、ファンレスながら高い排熱性能を確保している。
タブレットPCとしての使い勝手の改善、そしてラップトップPCの代替としての利便性維持にも余念はない。
自立用のキックスタンドは165度まで無段階に角度調整が可能で、机の上でも膝の上でも使いやすくなるように配慮している。先述のカバーキーボードも高さを2段階に調節できる。
インタフェースはフルサイズのUSB 3.0端子が1つ、USB Type-C端子が1つ(USB 3.1 Gen 1準拠、DisplayPort出力を兼用)とACアダプター端子、microSDメモリーカードスロットを備えている。USB Type-Cポートは、拡張性の確保を重視して「USB Power Delivery(USB PD)」にはあえて対応しなかったという。
Liquid Jade Primoは、AcerのWindows 10 Mobileスマホのフラッグシップモデルだ。Windows 10 Mobileのオプション機能である「Continuum for Phone」(以下「Continuum」)を無線(Miracast)と有線(USB Type-C端子を使ったDisplayPort出力)の両方で使うことができる。有線接続でのContinuumは、Jade Primoのプロセッサ性能と3GBのメインメモリも相まってかなり快適に使える。
その利点を強く訴求するためか、既報の通り日本では「デスクトップキット」(専用ドッキングステーション、ワイヤレスキーボード、ワイヤレスマウス)をセットにして販売する。セン社長の言葉を借りると「ポケットPC」としての側面を強調して販売することになる。
Jade Primoは、Windows 10 Mobileが備える管理機能や、デスクトップ版(PC版)と同一アプリが稼働する「Universal Windows Platform(UWP)」に対応していることも強みだが、有機ELディスプレイ(AMOLED)の鮮やかな画面表示や2100万画素のソニー製センサーを採用したアウトカメラも訴求している。特に、アウトカメラについては、仕事の記録用に持ち歩くデジタルカメラを代替できるレベルにあるとしている。
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