移民を規制するトランプ大統領令と移民が支える米IT企業ITはみ出しコラム

» 2017年02月05日 06時00分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 ドナルド・トランプ米大統領が1月27日に署名した移民と難民の規制に関する大統領令をめぐって、大きな波紋が広がっています。この大統領令は、テロの懸念のある7カ国(イラク、シリア、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、イエメン)からの一般人の入国90日停止、難民の受け入れ120日停止、入国審査やビザ発給システムの厳格化などを含むものです。

 「一般人」を入国させるかどうかの判断は当局に任されており、既に米国の永住権(グリーンカード)を持っていてたまたま海外に出ていた人まで空港で足止めされるケースもあります。

 そうした中、2月3日に米ワシントン州の連邦地裁は、この大統領令執行の一時的な差し止めを命令しました。この命令は全米で即日効力を発揮し、有効なビザがあれば上記7カ国の人々は入国が許可されることになります。しかし、ホワイトハウスは直ちにこの命令の執行停止を求める方針で、現場の混乱は続きそうです。

 さて今回の大統領令を受けて、それまであまりはっきりとトランプ大統領に反対してこなかったIT企業が次々と「懸念を表明」しました。こうした動きは人道的な配慮はもちろん、IT企業にとって死活問題だからです。競争が激しいIT業界では、“best and brightest”な人材を世界中から集めることが勝ち続けるために必須です。優秀な人材であれば、移民であろうと難民であろうと関係ありません。

 米国のいろんなIT企業の公式ブログを見ると、署名にはムハマドさん(イスラム系)とかチェタンさん(インド系)とか、エキゾチックな名前がたくさんあります。恐らくそうした中には移民あるいは難民の方もおられるでしょう。

 実際、自社の従業員76人がこの大統領令の影響で入国できないでいたMicrosoftは2月2日の段階で、入国審査で混乱をきたしていた当局に、(Microsoftの従業員のように)身元が保証されているビザ保有者は入国させてほしい、と例外措置を要請していました。

 Microsoftのサティア・ナデラCEOもインドで生まれ育ち、米国の大学に入るために渡米してきた移民です(その後、米国籍を取得したそうです)。

サティア・ナデラ氏 サティア・ナデラ氏

 米新興企業のCEOにもWASP(White Anglo-Saxon Protestant)ではないような名字が目立ちます。例えば、UberのカラニックCEO(チェコ)や、PeriscopeのベイクパーCEO(イラン)。二人とも生まれは米国ですが、両親は移民です。

 米国はそもそも移民の国なので、多くの人は数代さかのぼると移民にルーツがあります。自分自身が祖国から米国に夢を抱いてやってきて、チャンスをつかんだ人々は特に、移民を受け入れる米国に誇りを持っているようです。

 生まれが米国以外の著名なIT企業のCEOはまだまだ多くいます。

 Googleのスンダー・ピチャイCEOはインドで生まれ育ち、スタンフォード大学に入学するために渡米しました。

 Googleの共同創業者であるサーゲイ・ブリン氏は、ソ連時代のロシアから両親とともに亡命してきた難民でした。ブリン氏はサンフランシスコ国際空港での大統領令反対デモに参加しています。

 WhatsAppのジャン・コウムCEOはウクライナ生まれです。16歳のときに母親と祖母と一緒にマウンテンビューに移りました。

 NVIDIAのジェンスン・ファンCEOは台湾生まれ。先に米国で暮らしていたおじさん夫婦を頼って子どものころに渡米し、苦学の末スタンフォード大学を卒業しました。

ジェンスン・ファン氏 ジェンスン・ファン氏

 TeslaとSpaceXの創業者、イーロン・マスクCEOは南アフリカ生まれ。17歳のときにカナダに渡り(母親がカナダ人)、米国の大学に入って24歳でカリフォルニアに移りました。

イーロン・マスク氏 イーロン・マスク氏

 IT業界ではほぼただ一人、大統領選中からトランプさん支持を表明していたPayPalの共同増業者で投資家のピーター・ティール氏はドイツ生まれ。でも米国に入ったのは幼いころだったので、本人には米国での記憶しかなさそうです。

 ちなみに、トランプ大統領自身も移民と無関係ではありません。本人は米国生まれですが、母親はスコットランドからの移民です(米CNNより)。父方は祖父のフレッド・トランプ氏が1885年にドイツから米国に渡ってきました(英DailyMailより)。祖父の本当の名前は「フリードリッヒ・ドランプ」でしたが、米国風に変えたそうです。

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