トレンドマイクロは9月7日、個人向け総合セキュリティソフト「ウイルスバスター クラウド」の最新バージョンを発表した。ダウンロード版は同日17時から、パッケージ版は9月14日から販売する。旧バージョンユーザーについては、契約期間内であればソフトウェアをアップデートすることで新バージョンを利用できる。販売価格は後述する。
昨今、ランサムウェア(「身代金」を要求するマルウェア)による被害が世界規模で増加傾向にある。トレンドマイクロの調査によると、2016年の感染件数は日本国内だけでも4万8800件、世界規模の攻撃件数は約10億件に上ったという。
ランサムウェアの被害が拡大した背景の1つとして、プログラム少しだけ改変した「亜種」の存在がある。2017年5月に感染が拡大した「WannaCry」では、わずか3カ月で約6万種類の亜種の存在が確認できたという。亜種は改変されているため、セキュリティソフトのパターン(定義)を使った脅威検知から漏れてしまう可能性もある。
そこで、Windows版の新バージョンでは、法人向け製品に一部導入されている「XGen(エックスジェン)スキャン」に対応した。
「XGen」は既存のパターンスキャンとAIを使った機械学習型スキャンの「クロスジェネレーション(Xross Generation)」を意味している。パターンスキャンは既知の脅威を短時間で正確に検出できる反面、先述の通りマルウェア亜種の検知が苦手だ。一方、AIスキャンは亜種や未知の脅威の検知が得意なものの、誤検出・過検出率が高めだ。
XGenスキャンではパターンスキャンとAIスキャンを併用し、両者の弱点を補い合うことで利便性を損なわずにマルウェアに対する脅威をより高めることを実現している。なお、AIスキャンはクラウド(トレンドマイクロのサーバ)で、複数のアルゴリズムを利用して判定を行うようになっている。
指定したフォルダへのアクセスを監視してランサムウェアによる暗号化攻撃を防ぐ「フォルダシールド」機能については、新たに複数フォルダの監視、クラウドストレージ(Dropbox、Google Drive、OneDrive)の同期用フォルダの監視、外部ストレージの自動保護(監視)に対応した。
なお、最新版のフォルダシールドはWindows版に加えてMac(macOS)版でも使えるようになった。
最新のWindows版では、ネット詐欺の中でも最近急増している「サポート詐欺」への対策機能が新搭載される。Webサイトの設置期間や画面上に表示される内容をもとに「サポート詐欺サイト」の特徴に当てはまるサイトにアクセスした場合に、警告を表示してサイトに記載されている電話番号あてに電話をしないように促す仕組みだ。
ウイルスバスター クラウドのライセンスで利用できるスマホ用セキュリティアプリ「ウイルスバスター モバイル」についても、新機能が追加される。
Android端末では、ユーザーが許可(パーミッション)を付与すればストア以外からもアプリをインストールすることができる。この仕組みを悪用し、有名アプリを装ったランサムウェアが昨今急増している。トレンドマイクロの調査では、2017年1〜6月の半年間で23万件を超える“新しい”ランサムウェアアプリが登場したという。
そのような現状を踏まえ、Android版の新バージョンには遠隔操作でランサムウェアを強制終了できる「モバイルランサムウェア対策」が追加された。強制終了後は、端末設定をよりセキュアにするための設定変更を促す機能も新たに備えた。
安全でないWebサイトへのアクセス制限機能として、iOS版では専用Webブラウザ「セーフブラウザ」を提供している。これに加えて、新バージョンでは「アクセスブロック」を利用できるようになる。
アクセスブロックは「保護者による使用制限」機能を有効にすると利用できる。対象となるブラウザは、「Safari」とiOSの「アプリ内ブラウザ」となる。アプリ内ブラウザに対するアクセスブロックは「Facebook」「LINE」といった主要なアプリをカバーしているが、一部のアプリでは正常に作動しないことがある。
なお、Android版にはすでにアクセスブロック機能は実装済みだ(対象ブラウザは「Google Chrome」と「標準ブラウザ」)。
ウィルスバスター クラウドには通常版の他、電話・メール・チャットを使ったデジタル機器に関するサポートサービスが付帯する「ウイルスバスター クラウド+デジタルライフサポート プレミアム」も用意される。
いずれも「ダウンロード版」「パッケージ版」が用意されており、ダウンロード版の税込直販価格(ライセンス料金)は以下の通りとなっている。
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