最後に取り上げるのは、その製品にまつわる法律が変更になることで、製品に影響が及ぶケースだ。最近でいうと、モバイルバッテリーに「PSEマーク」が必須となったことで、PSEなしの製品が販売できなくなったケースがこれに当たる。
もっともこうしたケースでは、切り替えにあたって一定の猶予期間が設けられるため、製品の改廃は比較的スムーズに行われる。PSEマークなしのモバイルバッテリーについても、新制度の施行後に国内メーカーがルールを破って販売している話は聞かない。そうしたルール違反が耳に入ってくるのは、もっぱら海外の業者ばかりだ。
一方、法律が変更になったわけではないものの、実質的にこれに似た影響が発生するケースがある。例えば先日話題になった、「ワンセグにNHK受信料が適用される」という最高裁判決が出たケースだ。
この判決は、既に自宅にテレビを設置してNHK受信料を払っている契約者に追加負担が発生するわけではないものの、今後はワンセグという規格そのものをネガティブに捉え、敬遠するユーザーおよび販売店が出てくることは想像に難くない。特に機種変更のタイミングでは「iPhoneならばワンセグを搭載していないので安心」というジョークを真に受ける人も、恐らく出てくることだろう。
そうなると、ユーザーや販売店のそうした反応を見越して、ワンセグ機器そのものや、それに関連したアクセサリーを縮小しようという動きは、メーカーの側にも少なからず出てくる可能性がある。周辺機器としてのワンセグチューナーや外付けアンテナは、今回の判決以前に実質終息しているが、その他のアクセサリー類も、今回を機に終息させるメーカーは出てくるはずだ。
結果的にそれが、ワンセグ機器の売り場全体としてボリュームの縮小を招き、終息を早めることになりかねない。ワンセグを推進する側としては笑い事ではないだろうが、今回の判決がワンセグという規格、およびそれらの市場に存続にどのような影響を与えるかは、外野からは興味深いケースとなることだろう。
- 「この製品がダメだから、このメーカーはダメだ」という考えが危ない理由
PCやスマホの周辺製品に不具合が発覚した場合、ユーザーからは「あのメーカーは信頼できる」「信頼できない」などと、製品の評価をメーカーそのものの評価へと繰り上げる傾向がよく見られる。しかし周辺機器の場合、こうした考え方はやや短絡的で、逆に選択肢の幅を狭めてしまう危険がある。
- 新デバイスが「売れている」「売れていない」の情報は何を信じればいい?
全く同じ製品でありながら、ある方面からは「売れている」という情報が、また別の方面からは「売れていない」という情報が出てくることはよくある。今回はそうした情報の出どころをチェックすることで、それらの真贋を見抜くコツについてみていこう。
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メーカーが用意する製品ラインアップの末席には、ニュースリリースなどで見出しとなるためだけに追加された、実用性無視・価格重視のローエンドモデルが存在することがある。こうした「見せ球」を見抜けずに買ってしまう人は、実は少なくない。どのようにすればこれらを見抜き、回避できるのだろうか。
- メーカーが正式発表前の新製品を「チラ見せ」する裏事情
新製品の正式発表前に行われる断片的な予告は、見てワクワクすることもしばしばだが、あまり早くに新製品の手の内を競合他社に明かすのも考えもの。ではそれらは何のために行われるのだろうか。新製品予告の背後にあるさまざまな理由、そして思惑について見ていこう。
- 「トータルソリューション」を名乗る“寄せ集め”にご用心
PC周辺機器メーカーやアクセサリーメーカーが大量の製品をシリーズで投入してくる際に使われることがある「トータルソリューション」なるワード。実はこの言葉、ユーザーにとっては疑って掛かった方がいい。
- 受注しなければよかった? 大口案件で消えていくPCアクセサリー
季節ごとの売上数の変動があまりないPCアクセサリー業界にとって、法人などの大口案件は魅力的だが、それらはときとして製品の終息を早めることにもつながる。一体どのような事情によるものだろうか。
- 国内クラウドファンディングで広がる海外ガジェット販売 そのリスクを考える
国内のクラウドファンディングサイトで行われているガジェット類の出資募集は、海外クラウドファンディングのそれと異なり、既に海外で販売中のガジェットを国内で売るための、実質的な「予約販売プラットフォーム」となりつつある。こうした奇妙なビジネスモデルが広まりつつある理由は何だろうか。
- 「白い製品」に「白いケーブル」を添付できないメーカーの裏事情
機器本体と、ケーブルやACアダプターの色が一致していないことはよくある話。ユーザーから見ると「なぜそんな簡単なことができないのか」と不思議に思ったりもするが、企画担当や開発担当などからすると、そう簡単な話ではない。
- PC周辺機器・アクセサリー選びで迷ったらバリエーションの多さに注目すべき理由
他社との差異化を図るためにカラーバリエーションが後から投入されるということは、オリジナルの製品が「当たり」であり、メーカーが寿命を延ばしたがっていると考えられる。つまりバリエーションが多い製品は、ユーザーにとってハズレを引かないための安全牌でもあるのだ(例外もあるが……)。
- せっかく著名デザイナーを起用したのに長続きしない製品の裏事情
社内にデザイナーがいるにもかかわらず、わざわざ社外のデザイナーを起用した製品が企画されることがある。もちろん著名なデザイナーであれば起用自体が話題になり、他社と差異化できるなどの利点はあるが、にもかかわらずこうした製品が長続きせずにフェードアウトしていくことが多いのはなぜか。そして一般に明かされることはない、社内のデザイナーに依頼しない理由とは?
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