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2020年代にMicrosoftとPCの世界はどう変化する?――オフデバイスやノーデバイスの世界Windowsフロントライン(1/3 ページ)

» 2020年01月20日 06時01分 公開

 本連載で「2019年のまとめ」、年が明けて「2020年のMicrosoftとWindows」ときた年末年始シリーズだが、パート3となる今回のテーマは「もう少し先のMicrosoft」。より具体的には「2020年代にMicrosoftとPCに何が起こる?」という話題だ。

 お気付きだと思うが、既に「Windows」というキーワードはない。「Windowsが今後10年でなくなる」ということを意味しているわけではないが、人々のライフスタイルや生産活動におけるPCやデバイスの在り方は変わってくるだろうし、それに対してMicrosoftが提供するソリューションも当然大きく変化していくという考えだ。

 本連載では、比較的現実的な話題を取り上げるよう意図しているが、今回に限り割と飛躍した内容となる。予測ではあるが、近年筆者がメインの活動フィールドとしている決済や流通インフラを長年取材してきた経験も交え、このあたりを検証してみたい。

2000年代はPC、2010年代はスマホ、では2020年代は?

 インターネットへの接続が手軽になり、PCが一般向けのコンピューターとして市民権を得たのは、Windows 95やWindows 98がリリースされた1990年代後半だと考えているが、実際に市場での中心的存在となったのは2000年代だろう。

 その後、“Pager”(いわゆるポケベル的なもの)から進化した「BlackBerry」の基本デザインを踏襲したモデルが2002年から2003年にかけて登場し、ビジネスユーザーを中心に市民権を得ていった。

 初期の2年ほどは「契約ユーザーが100万人を突破した」かどうかが大きな話題になるほどユーザー数の少ない市場だったが、2000年代半ばにはカンファレンス会場や空港でBlackBerryを見かけないことはないというほどにまで普及している。同時期には、NokiaがSymbianを軸にした高性能な端末を次々とリリースし、従来のフィーチャーフォンと呼ばれる携帯端末の市場と合わせて同社を業界トップの地位に至らせる体制を確保している。

 2007年6月には今日の“スマートフォン”の原型となった初代iPhoneが発売され、翌2008年9月にはスマホ利用を世界中に広げるきっかけとなった、最初のAndroid端末「T-Mobile G1」が発表されている。

Microsoft Future 2008年9月に米ニューヨークで開催された初のAndroid端末「T-Mobile G1」発表会の様子
Microsoft Future 発表会場には、急きょ特別ゲストとして米Google創業者のラリー・ペイジ氏(左)とセルゲイ・ブリン氏(右)が駆けつけた

 ある意味で、今日の“パーソナルなコンピューター”の広がりは“ネットワークへの入り口”となる“デバイス”としての歴史にリンクしている。高速化するネットワークの中で、便利で興味深いサービスが次々と登場し、これをいかに快適に利用するかと創意工夫とともに発展する中で、“デバイス”は進化していった。

 本稿の見出しにある「2000年代はPC、2010年代はスマホ」という変革を分かりやすく図示化した記事があるので紹介したい。MarketWatchの「The rise and fall of the PC in one chart」というタイトルの2016年4月の記事だが、同記事のグラフにもあるように、PCの年間出荷台数は2010年をピークに減少傾向にある。

Microsoft Future PCとスマートフォンの出荷台数比較(出典:MarketWatch)

 これについては、本連載の過去の記事でも何度も触れてきた話題だが、代わって同じタイミングで出荷台数を大きく伸ばしてPCのそれを抜いたのはスマートフォンだ。多くの人が知るように、スマートフォンは記事が書かれた2016年以降もその出荷台数を伸ばしており、Gartnerの2019年2月の報告によれば2018年通年での世界の出荷台数は15億5527万台だ。

 ただ、2019年11月にGartnerが出している(本稿執筆時点で最新の)2018年第3四半期のデータでは前年同期比0.4%の減少となっている。ここ1〜2年はスマートフォンにおいても出荷台数の伸びが鈍化し、2019年に入って減少傾向さえ出つつあるのが現状だ。つまり、かつてのPCがそうであったように、スマートフォンもまた2019年を境に普及時期をピークアウトしているというわけだ。

 そこで出てくるのが「2020年代は何の時代になるのか」という話だ。一時期から言われ、今もなお話題に上るものの1つが「IoT(Internet of Things)」だ。前述のようにデバイスの普及はネットワークとの接続が重要であり、PCの時代にはそれがインターネット接続のためのサービスプロバイダ、スマートフォンの時代には携帯キャリアだった。IoTでは少し意味が異なり、「ネットワークに大量のデバイスやセンサーがぶら下がり、ユーザーはそれをサービス側の視点で管理する」という形態になっており、ネットワーク的には“ヘテロジニアス”な構成だろう。

 筆者の意見でいえば、IoTが次の2020年代の主役になるというのはある意味で賛成するが、別の意味では「ちょっと違う」とも考えている。賛成するのは「今後もネットワーク接続されるデバイスの数は爆発的に増える」という部分で、違うというのは「主役はIoTというデバイスではなく、“ユーザーが主体”としてデバイスを制御する」と考えているからだ。

 今日、多くのユーザーはネットワークに接続する際に1つのベンダーが提供するサービスに依存するのではなく、複数のサービスを状況に応じて使い分けている。個人が“パーソナルなデバイス”を持ち歩いて利用するのは、単純に「サービスをどこでも利用したい」という理由だけでなく、「サービスの利用形態が個々人によって違う」というパーソナライズの問題に起因する。

 デバイスが個々人の利用に最適化されているからというわけだ。ならば、このパーソナライズの部分をデバイスから切り離し、個人を証明する属性部分を独立させて扱うことができれば、デバイスそのものはさほど重要ではなくなる。つまり「2020年代は“オフデバイス”(Off-device)あるいは“ノーデバイス”(No-device)の世界になる」というのが筆者の予想であり、より個々人を識別する「ID」の存在が需要になると考える。

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