3Dグラフィックスの描画パフォーマンスを計測する「3DMark」では、DirectX 12ベースの「Time Spy」と、DirectX 11ベースの「Fire Strike」を実行した。いずれも描画解像度はフルHD(1920×1080ピクセル)となる。
描画性能がものをいうテストということもあり、Ryzen 7 5700GとRyzen 7 PRO 4750Gのスコアには有意な差は見られない。しかし、Ryzen 5 5600Gは2つの上位APUにやや差を付けられている。
外部GPUをつながずに軽いPCゲームをプレイする場合、Ryzen 5000GシリーズとRyzen 4000GシリーズのGPU部分にはそれほど大きな差はない。内蔵GPUのパフォーマンスアップを期待して買い換えると“肩透かし”になることは否めないだろう。
もう1つ、先日公開されたばかりの「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」の結果も見てみよう。解像度はフルHDで、フルスクリーン設定でベンチマークスコアを計測した。
スコアの序列は3DMarkと変わらない。ただしスコア差は縮まっており、最下位のRyzen 5 5600Gと上位APUとの差は5〜7%前後にとどまる。
FF14のような比較的負荷の軽いゲームをできるだけ滑らかな描画でプレイしたいのであれば、Ryzen 7 5700GやRyzen PRO 7 4750Gを購入する価値はあるとは思う。ただ、画質にこだわりがなければRyzen 5 5600Gでも“十分”事足りるだろう。
Ryzen 7 5700GとRyzen 5 5600Gの想定販売価格の差は1万5000円。どちらを購入すべきかは、悩み所になりそうだ。
最後に、システム全体の消費電力をチェックしてみよう。起動後10分間何もせずに安定させた場合の値を「アイドル時」、CINEBENCH R23を動作させた際の最高値を「高負荷時」としてワットチェッカーで計測した。
アイドル時の消費電力はいずれも20W台で、高負荷時はRyzen 7 5700GとRyzen 7 PRO 4750Gが120W近くまで増えた。とはいえ、先述の通り、テストのスコアはRyzen 7 5700Gの方が10%ほど高いため、消費電力当たりのパフォーマンスは有利であることは明らかである。アーキテクチャ刷新による改善ぶりを実感できるところだ。
ちなみに、Ryzen 5 5600Gの消費電力は高負荷時でも100Wを超えなかった。
Ryzen 7 5700GとRyzen 5 5600Gは、CPUアーキテクチャの刷新によるパフォーマンスの向上が大きな魅力であり、内蔵GPUを備える利便性を生かすのであれば非常に有用な選択肢といえる。
ASRockの「DeskMiniシリーズ」のような小型のベアボーンキットに組み込んでローコストPCを組むのもいい。画質調整は必要だが、ちょっとしたPCゲームならプレイできる。在宅ワークには特に適性が高く、手軽かつコストパフォーマンスも良好なPCを組めるだろう。
ただし、GPU性能が強く求められる場面では、バルク販売されていたRyzen PRO 4000Gシリーズとの性能差がそれほど大きくない。そのことは頭に入れておきたい。
Zen 3アーキテクチャによるCPUパフォーマンスの向上に期待して、旧世代からの買い換えを検討するのは十分に“アリ”だろう。
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