ゲームの中で「レイトレーシング」はどう使われる? 実例を見てみよう:レイトレーシングが変えるゲームグラフィックス(第2回)(1/3 ページ)

» 2022年05月23日 12時00分 公開
[西川善司,ITmedia]

 PC向けGPU(グラフィックスカード)はもちろん、家庭用ゲーム機でも一般的になりつつある「リアルタイムレイトレーシング(RT)」。前回は、レイトレーシングという技術のそもそも論と、Microsoftがレイトレーシングパイプラインを統合した「DirectX Raytracing(DXR)」をリリースしたことがゲームグラフィックスに与えうる影響について解説した。

 今回は、RTを使うことによってゲームグラフィックスがどのように変わっていくのかを考察していく。

GeForce RTX 3050 RTに対応するPC用GPUは、エントリークラスにも広がりつつある(写真は「GeForce RTX 3050」を搭載するGIGABYTE製グラフィックスカード「GeForce RTX 3050 EAGLE OC 8G」)

「ハイブリッドレンダリング法」という発想の提唱

 2018年のDXRの発表とほぼ同時に、ゲームエンジン「Unreal Engine」を手がける米Epic Games、米Electronic Arts(EA)の先行技術開発チーム「SEED」、技巧派のゲーム開発スタジオであるフィンランドRemedy Entertainment、そして3Dベンチマークソフト「3DMark」で知られる米UL(※1)が、このDXRのβ版を活用して、当時の最高性能のGPUを搭載したWindows PCで動作するリアルタイムデモを発表している。

 ゲームではなく“リアルタイムに動くデモプログラム”ではあったが、4社共に「レイトレーシングをゲームグラフィックスに利用していくには当面はこうするべき」といった未来予想図を当時のゲーム開発者に示すには十分だった。「こんなことができる(かもしれない)」と夢や希望を与えるものにはなっていたと思う。

(※1)3DMarkを含むベンチマークソフトの開発チームは元々、フィンランドを拠点とするFuturemarkという独立した企業だった。同社はULにより買収されたが、ベンチマークソフトの開発チームは引き続きフィンランドに拠点を構えている

Unreal Engineのデモ Epic GamesがNVIDIAの協力の下に作成した「Reflections Real-Time Ray Tracing Demo」。「影」「鏡像」「環境遮蔽(しゃへい)」「間接光」をレイトレーシング法で実装している。ただし間接光については、パフォーマンスに配慮して公開版では外したという(YouTube動画)
EAのデモ EAのSEEDが作成した「Project PICA PICA - Real-time Raytracing Experiment using DXR」。「影」「鏡像」「環境遮蔽」「間接光」をレイトレーシング法で実装している。この他、透明材質への透過表現(≒屈折表現)もレイトレーシング法で実装しているが、メイン映像には登場しない(YouTube動画)
Remedy Entertainmentのデモ Remedy Entertainmentが作成した「Experiments with DirectX Raytracing in Remedy's Northlight Engine」。「影」「鏡像」「環境遮蔽」をレイトレーシングで実装している。環境遮蔽の実装に際して、事前計算した間接光情報と組み合わせて計算することで、局所的な間接光表現も実現した(YouTube動画)
ULのデモ UL(旧Futuremark)が作成した「DirectX Raytracing tech demo」では「鏡像」のみをレイトレーシング法で実装している。GeForce GTX 1080を搭載するグラフィックスカード1枚だけでリアルタイム動作できていることがアピールされた(YouTube動画)

 4社のデモプログラムには、共通点もあれば異なる点もある。

 共通点は、全ての表現をRTで置き換えるつもりがなく、適材適所でラスタライズ法と組み合わせようという方針(考え方)だ。主立ったレンダリングは従来から親しまれているラスタライズ法で行って、ラスタライズ法では難しいレンダリングをRTで実践する――言い換えれば“いいとこ取り”あるいは“ハイブリッド”な活用法である。

 この「ハイブリッドレンダリング法」は、スケーラブルなゲームグラフィックスを設計する上でもメリットが大きい。そのため、現在では1つのゲームタイトルを複数のゲームプラットフォームに対応させるための方策としても活用されている。例えば、GPUの性能が低いマシン上では従来通りのラスタライズ法だけの描画に留め、GPUが高性能なマシンではレイトレーシング法を積極利用する、といった具合だ。

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