従来はWindowsのファンレスタブレットというと、「もっさり」とした動作の予感しかありませんでしたが、今回は違いそうです。本機は9Wをベース電力とするCPUが搭載されています。
以前はTDP 5〜7WぐらいがタブレットのCPUだったと記憶していますが、ヒートパイプ、ベイパーパーチャンバー、グラファイトシート、アルミボディーと、放熱機構の総動員で9Wの熱を散らしきる作りになっています。
実際にWebブラウザや一般的なアプリを使用してみると、ファンレスとは思えないサクサク感で、自分が持っている第10世代Core i7の薄型ノートPC(もちろん冷却ファン付き)よりも少し使用感が良いぐらいでした。
一方で、気になったのは表面温度です。CPU負荷の高い操作を続けていたり、バックグラウンドでアップデートなどが走っていたりすると、かなり本体が熱くなってきます。ファンレスでよく熱を逃がすには本体表面が熱いのが一番効率的なので、「そりゃそうだ」ですね。とはいえ、キーボードまで熱は伝わらず、ファンの音もしないので、本体をあまり触らない一般用途では普通のノートPCよりも快適でした。
次はディスプレイを見て行きましょう。本機はフルHD表示の有機ELディスプレイを搭載しています。黒がよく締まっていて色鮮やかで、美しい画面です。手元で計測したところ、Adobe RGBに対してカバー率96%、面積比は109%ぐらいでした。
ただし、ディスプレイのカラープロファイルは登録されておらず、sRGBをエミュレートするようなモードも見つけられませんでした。他の人の作品を正確な色で閲覧したり、自分の作品が他の環境で意図しない色になってしまわないようにしたりするには、カラーキャリブレーションの費用と手間が必要になります。
Windowsの製品には、このような無頓着さはよくあるので目立ちはしませんが、ディスプレイプロファイルを付けてくれているメーカーもあります。クリエイティブ用途に訴求するなら、「派手なパネルをつけて満足」からは一歩進んでほしいです。
また、黒と白の境界には普通の液晶ディスプレイよりもやや強い偽色が見られます。シャープなブラシでペン入れをしたり、白黒の境界がはっきりしたりした制作をする人は、気にならないかどうかを実機で確認すると良いでしょう。
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