2022年も、PC USERで多くのPCをレビューする機会を得た。1年のPC動向をからめて振り返ってみたい。
1年を通じて、2022年は第12世代Coreプロセッサ(開発コード名:Alder Lake)の年だったなという印象だ。前半はデスクトップPC、中盤からはノートPCで大きな存在感を見せつけた。特に、ノートPCのマルチスレッド性能を大きく底上げしたことは、個人的に大きなインパクトがあった。
この世代では性能優先のPコアと、電力効率優先のEコアのハイブリッド構造を採用し、最適に使い分けることで、電力効率を維持したまま性能を大幅に引き上げている(Core i3など低グレード品はEコアがないモデルもある)。
実際に製品が登場する前は、「14コア20スレッドといっても、Pコアが6基なら実質6コア12スレッド+αくらいでは?」というような感覚でいたが、それは全く間違った認識であり、実際のパフォーマンスは想像を大きく超えていた。
Eコア自体が戦力として侮れないのはもちろん、EコアがOSのバックグラウンドタスクなどを担当することでPコアが高負荷処理に専念できるようになり、処理の切り替え(コンテキストスイッチ)のロスが発生しないことも大きいのだろう。
とにかく、第12世代Coreプロセッサは速い。特にボディーサイズの制限があるノートPCでは進化が目に見えて分かる。例えば、10月にレビューした「ASUS ZenBook 16X OLED UX7602」(Core i7-12700H搭載)は、2月にレビューしたデスクトップPCの「DAIV Z7」とCINEBENCH R23のCPUスコアがほぼ同じだ。Ryzen 5 5600Xを備えた「mouse DT6-G」や、Core i5-12400Fを搭載した「DeskMeet B660」(ベアボーンPC)に対しては楽々と上回っている。
また、10月にレビューしたパナソニック コネクトの「Let's note SR」は、約859gと1kg未満のボディーながら、2年前の大型ノートPCと互角以上のCPUパワーを示した。ノートPCの限界が突破されてきているのを実感した1年だった。
デスクトップPC向けでは、既に第13世代Coreプロセッサ(開発コード名:Raptor Lake-S)が登場している。ゲームの高フレームレート維持に効果的とされるキャッシュの増量と、動作周波数向上がポイントだ。11月にレビューした「G-Tune PPZ」では、ゲーミング性能で良い結果を出していたのはもちろんだが、Lightroom Classicの現像出力も非常に高速だった。元々メモリ性能が反映されやすかった内容だけに、キャッシュ増量が効果的に作用したのだろう。
例年の流れでいくと、ノートPC向けの第13世代Coreプロセッサも近いうちに発表されるはずだ。デスクトップPC向けCPUを見る限り、第13世代Coreプロセッサは熱設計のハードルがかなり上がっている。そのため、ノートPCでは第12世代Coreプロセッサほどのインパクトはないかもしれないが、キャッシュ増量の効果は期待できるので、より洗練されたパフォーマンスのPCが登場しそうだ。
第12世代Coreプロセッサに関連して、Intel Evoプラットフォーム(第3版)の認定を受けたPCの質の高さも実感するところだ。Intelのマーケティング施策ではあるが、「単なる一企業の販促キャンペーン」と切って捨ててよい要素では決してない。
Intel Evoプラットフォームの認定を受けるには、広く公表されている要件以外にもさまざま基準があり、見えない部分でもあからさまなコストダウンは難しい。その結果、キビキビとした操作感、スリープからの高速復帰、運用レベルで実用的な長時間のバッテリー駆動はもちろん、画面の視認性やサウンドの音質なども優れており、とにかく使っていてストレスがない。「買った後でがっかりしない」仕上がりになっている。
オプション要件として規定されている高解像度カメラや、センサーを使ったインテリジェントなロック/解除などの先進要素を搭載したPCを見ると、使う人にとってより便利に、よりよいものに進化させていこうという明確なビジョンの元に、リアルタイムで進行しているイノベーションを感じることができる。
もちろん、Intel Evoプラットフォーム認定PCも万能ではなく、クリエイティブ用途やゲームに本格的に取り組むには力不足だし、先進性など不要という人がいるのは承知だ。それでもやはり、良いものは良い。特にハイブリッドワークを実践しているアクティブなビジネスパーソンならば、高価であっても購入を検討するに値するだろう。
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