パワーのあるGPUには、ゲームだけでなくクリエイター向けのアプリケーションの動作を快適にする効果もある。
簡単ではあるが、クリエイター向けアプリケーションでのパフォーマンスのチェック幾つか行ってみよう。ここからは、過去のテストとの比較も再開する。
まず、2D/3Dアニメーション製作ツール「Blender」をベースとしたベンチマークテストアプリ「Blender Benchmark」のWindows版を用いて、パフォーマンスの比較をしてみよう。今回は「Monster」「Junkshop」「Classroom」の3つのシナリオにおいて、1分間当たりの生成サンプル(オブジェクト)数を計測している。結果は以下の通りだ。
テスト結果としては順当ではある。テスト内容にもよるが、GeForce RTX 4070が比較対象と比べて大きく見劣りするわけでもない。
特にMonster、Classroomの2種類のテストでは、先代の最上位モデルであるGeForce RTX 3090Tiに肉薄するスコアを出している。Junkshopでやや差を大きく付けられているのは、恐らくグラフィックスメモリの容量の差によるものと思われる。
続けて「Adobe Premierer Pro」を使って、4K動画のエンコードに要する時間を比較してみよう。今回は「GoPro HERO 10」で撮影した数本の4K動画を30分ほどにまとめて書き出すのに要した時間をまとめた。結果は以下の通りである。
内蔵エンコーダー(第8世代NVENC)のスペックが同じこともあってか、GeForce RTX 4070 Tiとほぼ同じ、高速な書き出しを実現できた。旧世代のGeForce RTX 3090 Tiよりも圧倒的に高速である。
過去のテストでは「GeForce RTX 4070 TiとGeForce RTX 4080の書き出し速度の差があまりない」とも紹介しているが、動画のエンコードを最重要視するならGeForce RTX 4070は最もコスパに優れた移行先といえるかもしれない。
「そろそろ新しいグラフィックスカード」を買おうと考えたとき、従来のGeForce RTX 40シリーズは最も安くても10万円を優に超える価格設定だったため、気軽に手を出せるものではなかった。
一方で、前世代のグラフィックスカードの価格はかなり下がってきたが,選択肢も次第に減ってきている。「10万円を切る価格で、そこそこ良さげなグラフィックスカード」について、市場的には“穴”ができている状態だった。
そこに現れたのが、このGeForce RTX 4070だ。冒頭で書いた通り、最安値のカードは10万円をギリギリ切る価格設定で、空いている“穴”をうまく埋めるような感じの仕上がりである。先述のテストにおける消費電力は、アイドル時が81W、ピーク時でも317W(3DMark「Time Spy Extreme」実行時)と、今までのGeForce RTX 40シリーズよりも少ない。電源容量が少ない構成でも安心して導入できる、バランスの良いグラフィックスカードといえるだろう。
自作PCやBTO(カスタマイズPC)では、どのパーツにどれだけの予算、スペックを割り振るかは悩ましい。GeForce RTX 4070が得意とする「WQHDまでのハイパフォーマンス」を生かすことを考えると、ミドルレンジのパーツ構成でも十分な性能を得られるだろう。そういう意味では“福音”であることは間違いない。
ただ、米国価格を円換算した場合、日本の価格はどうしてもやや割高に映る。流通やサポートにかかるコストを勘案すると致し方ない面もあるし、いっときよりも価格は下がっているものの、まだ若干「高い買い物」感は残ってしまっている。もう少し値段を抑えられるとうれしい所だが……。
現在のラインアップ、市場に並ぶビデオカードの面々を考えると、GeForce RTX 4070が“大本命”だと考えている人も多いだろう。その期待に応えられるだけのパフォーマンスを持ったGPUなのは間違いない。
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