インテルは6月14日、報道関係者を対象とする「インテル・プレスセミナー Q2’23」を開催した。本セミナーではインテルの鈴木国正社長と大野誠執行役員(経営戦略室長)が登壇し、米Intel(インテルの親会社)のグローバルビジネスの概況と、日本法人としてのインテルの取り組みを解説した。
この記事では、本セミナーの内容から「デジタル人材の育成」に関する内容について詳説する。
インテルのプレスセミナーは1年に1〜2回のペースで開催されている。2018年に鈴木社長が就任して以来、ほぼ毎回「デジタル人材(教育)」に関する話が盛り込まれている。企業としてのインテルはもちろん、鈴木社長個人としてもICT教育の普及やデジタル人材の確保について重点的に取り組むべき課題として捉えていることの証左だ。
インテルは2022年4月から、パートナー企業や自治体/教育機関と連携して「STEAM Lab(スティームラボ)」の実証研究を進めている。その名の通り、学校におけるSTEAM(科学/技術/工学/リベラルアーツ/数学)教育を推進すべく、最先端のICT教育環境を整え、将来の「デジタル人材」の育成につなげようというプロジェクトである。
この研究には国公私立の計18校が参加しており、2023年度も新要素を取り入れつつ継続しているという。
この取り組みを進めている背景として、鈴木社長は「私を含めて(インテルには)日本のデジタル教育自体の遅れに強い危機感を持っている人が多い」ことを挙げる。実証研究を通して、まず「(デジタル人材育成における)いい“例”を作ること」に注力している状況のようだ。
ただ、鈴木社長の言葉を借りると、現在のSTEAM LabはICT教育やデジタル人材育成における「点」を作る取り組みであり、それを「線」や「面」として広く展開することに課題がある。
インテルとしても政府や国会議員、地方自治体などに働きかけているとのことだが、「(インフルエンサーとしての)メディアの役割も重要だ」と筆者を含む報道関係者に語りかけていた。
「点」を「線」や「面」にするためには、小中学校での取り組みも重要だが、高校生、大学生や社会人に対するICT教育も重要である。
さまざまなステージでデジタル人材を育成すべく、そこでインテルは「インテル デジタルラボ」という取り組みを進めている。STEAM Laboは、その学校向けプログラムという位置付けだ。
日本政府も「デジタル田園都市国家構想」においてデジタル人材の育成と確保を重点課題の1つに挙げている。その動きとも連動する形で、自社の持つ資産やパートナー企業との強固なパートナーシップを背景に、ICT教育とデジタル人材の育成への取り組みをさらに強化していくという。
デジタルラボの1つである「AI Lab」では、その名の通りAI(人工知能)に関する教育を行う取り組みだ。小中学生から社会人まで、比較的幅広い年齢/利用者層をカバーしている。
プログラムは「ゼロからAIを作る」という技術的なアプローチではなく、AIを利活用する方法や、AIを使うに当たって気を付けるべきポイントというように、AIの“使いこなし”を重視した編成となっている。
そして社会人向けには、企業や自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるための「DX/DcX Lab」という取り組みを進めている。
これはLab(ラボ)と付いているが、簡単にいうと企業や自治体のDX研修をインテルが受託するというものである。先述の研修にはAI Labsのプログラム(「AI for Citizens」など)も一部内包されており、デジタル技術を使いこなせる社会人の育成を目指している。
インテルでは今後、企業や自治体のニーズに合うICT教育プログラムの“マッチング”できるプラットフォームの構築を目指している。このプラットフォームを通して、今は「点」となっているデジタル人材の育成を「面」で展開できるように取り組んでいくという。
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