ひとまず、ここまでの工程で我々が普段目にする形になったCPUだが、“見た目”がしっかりしているだけでは、完成とはいえない。実際に正しく動作するのかテストする必要がある。
第2工程においてダイは検査されているものの、大まかな分別をするための超基本的なテストにとどまっている。そこで、ほぼ完成した所で実際の使用環境に近づけて検査を行うことになる。
まず行われるのは、「Burn-In Test」である。「焼き入れテスト」という直訳からも分かる通り、高温状態、あるいは定格よりも高い電圧といったCPUにストレスを掛けた状態で基本動作試験を行う。
「Core i3」「Core i5」「Core i7」「Core i9」といったCPUのグレードは、このテストで最終確定される。意外なことに、ほぼ完成した状態でグレードが決まるのだ。
次に行われるのは「Test」である。シンプルな呼び方からも分かるかもしれないが、ここではCPUに備わる基本機能が全て正常に動作するのかをチェックする。
CPUは突き詰めると「動かしたプログラムが出力する結果を電気信号で返す装置」なので、電気特性の正常性も合わせてチェックされる。
テストの最終工程は「Platform Performance Validation(PPV)」だ。
ここでは「プラットフォームとしてのパフォーマンス検証」、つまりCPUが実際のPCに収まった状態に極めて近い環境で動作試験が行われる。具体的には、外付けGPU、SSDなどのストレージデバイス、USB機器といった各種周辺機器を実際につないだテストハードウェア上で、Windowsを始めとする実在するOSを動作させて、CPUが問題なく動くのかを確かめる。
このことだけ聞くと、とても大変な工程のように思える。しかし、このテストでは人間がCPUをマザーボード上のソケットに挿したり外したりを繰り返しているわけではない。
実際には、PPV装置内にテストパターン分の周辺機器が搭載された複数のマザーボードが組み込まれており、ラインを流れてきたCPUをロボットアームが自動でつかみ、テスト専用のCPUソケットにはめてテストを行う流れとなっている。
上の写真には写っていないが、CPUをつかんだロボットアーム自体が、CPUクーラーを兼ねている感じで、CPUをはめ込むソケットとテスト用マザーボードは、それなりの距離が離れているのが興味深かった。
つまり、テスト対象のCPUは毎回、クーラー付きのロボットアームでPPV装置内にある固定位置のテスト用ソケットに移動されるだけという立て付けだ。
PPV用マザーボードは、市販製品のATX形状などとは全く異なり、巨大なお化け拡張カードのような外観を備える。PPV装置が、テスト用ソケットにセットされたCPUと、複数のテスト環境用マザーボードとの接続を切り替えるような感じでテストが行われる。
「高クロックで駆動されるCPUと、それを駆動させるマザーボードの物理距離がこんなに離れていて大丈夫なのか?」と心配になるところだが、そこはそれ。量産品ではなく専用のテスト機材なので、電気信号の損失制御はうまく担保/維持されているのだろう。
PPVまで完了したCPUは、モデルごとに分類されて出荷されていく。ここでいう「出荷先」は、PCメーカーとなる場合もあれば、市販(ボックス)製品として一般消費者に向けた梱包(こんぽう)を担当する工程である場合もある。
なお、先に掲載した動画の4分48秒あたりからはその出荷工程の部分が映っているので、興味がある人はチェックしてみよう。
今回は紹介していないが、完全クリーンルーム環境のウエハーの製造工場とは異なり、CPUの組み立て製造工場はロボットと人間が共存するような形で働いているところが興味深かった。
緻密で正確性が求められたり、反復的だったりする作業はロボットが担当しているセクションが多い一方で、人間の高度な判断力が求められるセクションでは訓練された能力の高いプロ工員が担当している。まさに“適材適所”を突き詰めた感じである。ダイの選別などに、AI技術取り入れているあたりも、Intelらしさを感じる。
次回は、Intelの最先端技術開発施設と先端製造工場用のテスト機材について紹介したい。
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