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“Oryon”(オライオン)はWindows PCの世界にインパクトを与えられるかQualcomm Snapdragon Summit 2023(2/3 ページ)

» 2023年10月26日 12時30分 公開

もう1つのターゲットはApple

 そして、QualcommがSnapdragon X Eliteでもう1つターゲットとしているのが、Appleが“Apple Silicon”のブランドで展開しているM1M2プロセッサ搭載のMac製品群だ。

 前述のウィリアムズ氏はArm出身であると同時に、Nuvia創業前はAppleに在籍し、他ならぬ“M1”プロセッサの開発を指揮していた。つまり、同氏が(過去に関わったものも含め)開発した製品同士が競合することになる。

 実際、M1/M2を採用したMacの評判は上々で、「PCはやっぱりx86ベースの製品でなければ……」という評価を大きく覆すことに繋がった。実際、筆者もこの原稿はM1搭載MacBook Proで執筆しており、バッテリー駆動時間などで非常に満足している。この領域をSnapdragon+Windowsで攻略していくのがSnapdragon X Eliteの役割となる。

Snapdragon X Elite Oryon Qualcomm SoC Summit 2023 低消費電力性とシングルスレッド時のパフォーマンスで、AppleのM2 Maxを上回るとアピール

 AppleがQualcommの新型SoCを非常に警戒していることは前回のレポートでも触れたが、今回のSnapdragon Summit開催の翌週にあたる10月30日(米国時間)には、Apple自身が新型Mac製品を発表することを予告している。

 おそらく、現行のM2プロセッサの派生品、あるいは後継製品が併せて発表されると思われ、毎年Macの新製品が発表されるシーズンとはいえ、ある程度Qualcomm対抗を意識したイベントになることは間違いないだろう。

 加えて、Appleの新型プロセッサを搭載したMac製品(MacBookと思われる)は発表から1〜2週間以内に市場投入されると予想されることから、Snapdragon X Elite搭載製品が実際に市場投入されるとみられる2024年より早いタイミングでユーザーは実際に体験することが可能だ。

 Qualcomm側でもApple側の出方に非常に神経質になっており、おそらくベンチマーク情報など出せる限りの情報を早いタイミングで前倒ししてくることが考えられる。競合そのものは非常にいいことで、コロナ禍が落ち着き始めた2022年以降のPC市場の停滞と縮小を考えれば、意欲ある2社によるカンフル剤として機能することになるだろう。

 ただ、Snapdragon X EliteがそのままM2の最上位と直接競合するかは現時点で判明しておらず、これに関してはQualcomm側の追加情報待ちだ。1つには、次のスライドにあるようにマルチスレッド動作でのCPUパフォーマンスでM2に優位としているものの、比較対象が“M2 Max”ではなく“M2”であり、改めて確認が必要になる。

 またApple SiliconではGPUコアの動作にトランジスタを多く割り当て、GPU性能の底上げで全体のパフォーマンスのバランスを取っているが、Snapdragon X EliteではOryonとAdrenoの2つのコアの間でどの程度全体のパフォーマンスを向上させるのか、このあたりの数字も追加情報待ちとなる。ポテンシャルはあるものの、総合的な評価は実際のベンチマーク等の結果待ちといえる。

Snapdragon X Elite Oryon Qualcomm SoC Summit 2023 マルチスレッド比較でも、CPUパフォーマンスで優位にあるという

オンデバイスAIに傾注するSoC

 OryonとSnapdragon X Eliteの話が先行したが、Qualcommがもともと得意としているスマートフォン向けSoCもアップデートが行われた。名称はSnapdragon 8 Gen 3で、前モデルのGen 2からの順当なアップグレードとなる。

 実は今回、Qualcommのイベントらしくなく「携帯電話ネットワークに関する話が講演でほぼなかった」のだが、パフォーマンス面での話題もほぼOryonとSnapdragon X Eliteに集中しており、Snapdragon 8 Gen 3ならではのアピールできるポイントがほとんどなかった。

 とはいえ、Qualcommの半導体メーカーとしての方針が色濃く反映される形でスマートフォン向けSoCも紹介方法に変化が表れており、その最たるものが「オンデバイスAI」の話題となる。

Snapdragon X Elite Oryon Qualcomm SoC Summit 2023 Snapdragon 8 Gen 3を発表する米Qualcomm Technologiesジェネラルマネージャ兼SVPのアレックス・カトージアン氏

 いわゆる生成AI(Generative AI)の世界において、ChatGPTやMicrosoftのCopilotサービスが近年注目を浴びたことで、それまでStable Diffusionなどのようにある程度ローカルデバイスでの動作を想定していた仕組みが、「クラウド上で大規模言語モデル(LLM)を各種データと結びつけてレスポンスを返す」という“クラウド型”のスタイルが広く認知されるようになってきた。

 一方で、スマートフォンのようなデバイスでは通信状況やレスポンスの問題から、学習済みの推論エンジンをデバイス上で動作させ、例えば音声の文字変換や写真のリアルタイム加工など、サーバに依存しないモデルを推進し、Qualcomm自身もSnapdragonのライブラリとして“AI”アプリを積極的に取り込んできた経緯がある。このスタンスは今回さらに強くなった印象だ。

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