ではより実際のゲームシーンでの性能はどうだろうか。こちらも定番のテストとなるが、重量級のゲームタイトルとして名高い「Cyberpunk 2077」「Microsoft Flight Simulator」の2つのタイトルでの描画パフォーマンスをチェックした。
両タイトル共に、NVIDIAの超解像技術「DLSS(Deep Learning Super Sampling)」に対応している。最新のDLSS 3にも対応しているため、GeForce RTX 40シリーズ以降では「フレーム補間」も適用できる。フレームレートを重視するユーザーは、その効果も気になるところだろう。
そこで、今後のゲーミングPCにおけるアップグレードとして考えられることの多いWQHD/4Kの2つ解像度で、DLSSのオン/オフ時の平均フレームレートを確認してみよう。Cyberpunk 2077については、画質プリセット「ウルトラ」におけるDLSS無効時(4Kネイティブ)とDLSS有効時(Performance Mode/ウルトラライティング)の双方で平均フレームレートを計測している。一方、Microsoft Flight Simulatorでは、ディスカバリーフライトの「モナコ」をAI操縦とした上で、「CapFrameX」で2分間の平均フレームレートを計測した。
結果は以下の通りだ。
やはり、DLSSの効果は絶大だ。画質よりもフレームレートを優先する設定であることに注意は必要だが、WQHD解像度はもちろん、4K解像度でも高リフレッシュレートのディスプレイ性能を存分に発揮することができる。もちろん、ここから画質優先の設定に少しずつ調整を行っていっても、必要十分な画質とフレームレートを両立できるだけのパフォーマンスを備えている。
DLSSを利用すれば、GeForce RTX 4070 Ti SUPERのターゲット解像度であるWQHD解像度はまず余裕で、重量級タイトルでも設定次第では4K解像度でも快適に遊べそうだ。
遊びたいゲームタイトル次第にはなるが、PCのアップグレードの際に思い切って4Kの高リフレッシュレートのディスプレイと一緒に導入するのも“アリ”かもしれない。
最近のGPUに求められるのはゲームの性能だけではない。クリエイター向けのアプリケーションを快適に動作させるのにも、高性能なGPUは求められている。
簡単ではあるが、クリエイター向けアプリケーションでのパフォーマンスのチェック幾つか行ってみよう。
まず、2D/3Dアニメーション製作ツール「Blender」をベースとしたベンチマークテストアプリ「Blender Benchmark」のWindows版を用いて、パフォーマンスの比較を行った。今回は「Monster」「Junkshop」「Classroom」の3つのシナリオにおいて、1分間当たりの生成サンプル(オブジェクト)数を計測した。結果は以下の通りだ。
結果を見ると、GeForce RTX 4070 Ti SUPERとGeForce RTX 4070 Tiのスコアはほぼ同じだ。処理の内容的にはグラフィックスメモリの増量や速度向上の効果があまりなかったのかもしれない。ただし、実際の作業ではもう少し快適に感じられる場面が増えてくるのではないかと予想している。これから選ぶべきは、性能に余裕のあるGeForce RTX 4070 Ti SUPERだろう。
続けて「Adobe Premierer Pro」を使って、4K動画のエンコードに要する時間を比較してみよう。今回は「GoPro HERO 10」で撮影した数本の4K動画を30分ほどにまとめて書き出すのに要した時間を計測した。結果は以下の通りである。
Blender Benchmarkとは打って変わって、こちらは、グラフィックスメモリの増量と帯域幅の拡大の効果がしっかりと現れている。いずれもエンコーダー自体は同一スペックなのだが、連続して重たいデータをGPUに渡す部分の速度が改善したことで、エンコード速度の高速化につながったのだろう。
10秒以上の短縮ともなると、より上位のGPUの書き出し速度にも並ぶ。日頃から動画編集の機会の多いユーザーは、GeForce RTX 4070 Ti SUPERへのアップグレードは検討すべきだろう。
GeForce RTX 4070 Ti SUPERは、GeForce RTX 4070 Tiからのマイナーチェンジというよりも、完全に別物ともいえるだけのアップグレードが行われている。
ベンチマークテストの結果の通り、CPUがボトルネックになったとしても、多くのテストでより高いパフォーマンスを発揮することが確認することができた。DLSSを有効にすればターゲット解像度のWQHDだけでなく、4Kでも重量級のゲームタイトルを快適に遊べる。
その上で、悩ましいのはこのGPUは“どこから”のアップグレードにピッタリかという点だ。このGPUは、現在デスクトップ向けに販売されているCPUの中でも上位のものと組み合わせなければ“宝の持ち腐れ”になってしまう可能性が高い。DLSSを生かすとなると、ディスプレイも4K解像度かつ高リフレッシュレートのものが欲しくなってくる。
すべてを“アップグレード”となると、それだけで20〜30万円の投資が必要になるため、GeForce RTX 4070 Ti SUPERを選ぶなら、それなりに懐の余裕が求められる。
なおテスト環境において、消費電力はアイドル時で85W、ピーク時(3DMarkの「Time Spy Extreme実行中)でも395Wと、こちらも仕様通り性能の割にかなり省エネだ。グラフィックスカードのサイズ次第だが、消費電力が低いことで発熱の心配も少ないため、搭載にあたって熱やエアフローで必要以上に頭を悩ますこともないだろう。
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