このオートフォーカスアイウェアを通して見た世界は、経験してみないと分からない不思議な感覚だ。遠くだろうが近くだろうが、自分でピントを合わせる必要がない。
逆に、もう少しはっきり見ようと思って対象物に近づいても精度は上がらない。あえて説明しようとすれば、ビデオカメラを通して録画されたTVの画面を眺めているようなものだろうか。遠景でも接写でも、視聴者自身はTV画面にピントを合わせている。
同じように、ViXion01を通して見るものは裸眼の瞳に入った時点で既にピントが合っており、遠くを見るために目を細めたり、手元の対象物を遠ざけたりする必要もない。
同社Webサイトに「スムーズなピント調節体験」の再現動画があるが、実際のオートフォーカス速度はこれよりもはるかに高速に感じる。
ただし、視野はかなり狭い。通常の眼鏡であれば視界の端にフレームが見えるかどうか、くらいの視野だと思うが、ViXion01は視界の中に黒いリングがぼんやりと見え、その中だけがクリアになる。左右それぞれにリングがあるため、調整状態によってはリングが完全に重ならず、若干左右にブレて見えてしまうかもしれない。
ViXion01の視界周辺にはメッシュパターンが入っているが、これには周辺部分の視認性をあえて下げてレンズを通したエリアに意識を向ける効果もあるようだ。
読書をしたり、スマートフォンなどをずっと使い続ける場合はむしろ、単焦点の老眼鏡などを使った方が視界も広く使いやすい。ViXion01が真価を発揮するのは近距離、中〜遠距離を交互に見るような作業になるだろう。
手元の資料を見ながらPCに入力するような作業や、電子工作、プラモデル製作などはその一例だ。実際に試してみると、手元を見るときは意識して顔を下に向けないと距離が正しく計測されず、ピントが合わなかった。一般的な遠近両用眼鏡は下部分が遠視用、上部分が近視用になっていて、視線を向ける高さで使い分けるが、それとは逆に視線は常に真ん中に合わせるように使用する必要がある。
このあたりは慣れだとは思うが、手元すぎて真下を向かなければならないような体勢での作業には向いていないようだ。
また、ViXion01使用後はいつも裸眼でも視界がクリアになっていることに気づいた。ViXion01を使うことでピント合わせを行う負担が減り、目の疲労が軽減されるという効果もあるようだ。
ViXion01には、専用のスマートフォンアプリ(iOS 12/iPadOS 12以降、Android 5.0以降)がリリースされている。このアプリを使えばBluetoothでViXino01と接続して、スライダー操作によって左右同時/個別に度数の調整が行える。
ViXion01自身には1つのキャリブレーション値しか保持できないが、専用アプリに保存したキャリブレーション値を読み込むことで、最大3つのセッティングを使い分けられる。
ただし、前述のようにViXion01のセッテイングで最も重要な点は、瞳孔間距離(IPD)や目の高さを個人に合わせてピッタリと合わせることだ。レンズのキャリブレーションをアプリで管理しても、複数人で使い回すことは難しいかもしれない。
アプリではキャリブレーションの他、現在の温度/照度/電池残量などがリアルタイムに表示される。オートフォーカス技術については非公開ということで詳細は不明だが、そのアルゴリズムには温度や照度も関係しているのかもしれない。
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