ここまでの結果で、Radeon RX 7900 GREは1440pゲーミングを楽しむに十分なパフォーマンスを備えており、タイトルによっては4Kゲーミングも楽しめそうなことは分かった。それはより重いゲームタイトルでも同様なのだろうか。
そこで超重量タイトルの代名詞ともいえる「Cyberpunk 2077」のベンチマークモードで、4K描画時における平均フレームレートをチェックしてみよう。画質プリセットは「ウルトラ」、他の設定も「画質優先」とした上で、FSRを無効(ネイティブ解像度描画)/有効(アップスケーリング)の両方における平均レートを計測した。FSR有効時の設定は「パフォーマンス」(フレームレート最優先)としている。
結果は以下の通りだ。
4Kネイティブの描画でも平均で30fpsをマークしているので、プレイできなくはない。しかし、これだとシーンによっては30fpsを割り込みカクついてしまうので、快適かと言われればそうでもない。
それに対し、FSRを有効にしてプレイすると平均で120fpsを余裕で上回る。これなら60Hz超の高リフレッシュレートのゲーミングディスプレイを生かすことができる。FSR対応タイトルで「ちょっと重いかな」と思ったら、FSRを有効にするといいだろう。
最近のGPUに求められるのはゲームの性能だけではない。クリエイター向けのアプリケーションを快適に動作させるのにも、高性能なGPUは求められている。
今回は「Adobe Premier Pro」を使った4K動画の書き出しテストのみを実施する。「GoPro HERO 10」を使って撮影した数本の4K動画を30分ほどにまとめて書き出すのに要した時間を比較した結果は、以下の通りとなった。
Radeon RX 7000シリーズのAV1対応メディアエンコーダーは、そのパフォーマンスの良さに定評がある。7900 GREもご多分に漏れず、上位2モデルとほぼ同じ時間で書き出せている。
このことは、見方を変えると動画のエンコード重視の場合に上位GPUを選ぶ動機に乏しいということでもある。動画エンコードは一定水準の性能を備えることを前提として、後はどのくらいの3Dグラフィックス性能があればいいのか考えるというのが、Radeon RX 7000シリーズの正しい選び方なのかもしれない。
最後に消費電力だが、今回のテスト環境でWindows起動後の落ち着いた時点の「アイドル時」と、Time Spy Extreme実行時における「ピーク時」で比べると以下の通りとなった。
推奨電源容量は、700Wとハイエンドのビデオカードの割には少ない。実測値でも、高負荷時で400Wを下回るため、既存のPCのグラフィックスボードから入れ替えた場合でも、多くの場合において容量不足とならずに動かせる。そうなると「既存のGPUからアップグレードする場合に、このGPUはどうなんだ?」という疑問が湧いてくる。
現行のRadeon RX 7000シリーズとしては上位となる「7900」を冠するモデルにおいて、Radeon RX 7900 GREは“エントリー”という位置付けだ。先行して登場した上位2モデルと比べると、ターゲット解像度は1440pと1段階低い。「本当なら『Radeon RX 7800 XTX』くらいの名前がいいんじゃないか?」と思っていたのだが、実際に試してみると7900を冠する意味が見えてきた。
4K解像度に対応する、ゲーミング向け高リフレッシュレートディスプレイはまだまだ選択肢が少ない上に、価格も非常に高い。一方で、フルHDあるいはWQHD解像度くらいまでなら、手の届く価格の高リフレッシュレートディスプレイが増えてきている。
現在、アップグレード先として選ばれることの多いWQHD(1440p)をターゲットに、余裕のある性能のGPUを投入するということは、「多くの人が最上位相当の性能を享受できる」というメリットがあるのだ。動画エンコードにも強いという点も合わせると、多くは1080pで配信されることの多い「ゲーム配信」にも向いている。
配信用解像度でゲームをプレイして快適で、さらにメディアエンコーダーを生かして軽負荷で配信も行えるとなれば、特に配信者向けの最も“ちょうどいいハイエンドGPU”といえるかもしれない。
AMDは2月26日(米国太平洋時間)、「Radeon RX 7700 XT」の販売価格を値下げした。同GPUを搭載するグラフィックスカードは従来、想定販売価格が449ドル(約6万7600円)からに設定されていたが、改定後は419ドル(約6万3100円)からとなる。
AMDによると、この値下げは日本市場にも適用されるとのことだが、値下げ後の価格については店頭などで確認してみてほしい。
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