先述の通り、初代のGIGAスクール構想向けの学習用端末では、Chromebookのシェアがトップに立っている。そのこともあってか昨今、PCメーカーは学習用端末としてChromebookに傾注する傾向が見られる。
EDIX東京 2024のブース出展においてGoogleとのコラボレーションが多かったことや、今までChromebookを手掛けてこなかった(あるいは直接発売していなかった)メーカーが参入してきたことは、ある意味でその証左といえる。
同じく日本HPブース。こちらもGoogleとのコラボレーションを実施しており、教室を模したセッションコーナーはChromebookだらけだった(展示コーナーにはWindowsベースの学習用端末も多く展示されていた)
一方、DynabookブースはWindows PCをメインに据えた展示だったものの、2024年12月に発売予定の「Dynabook Chromebook C70」のイメージモックアップを参考展示していた。先代の「Dynabook Chromebook C1」とは異なり、自社単独開発となる飛ぶ鳥を落とす勢いともいえるChromebookだが、そんなChromebookにも“ちょっとした”変化が見受けられる。
従来、学習用ChromebookはIntel(またはAMD)のCPUを搭載するモデルが主流だったのだが、Qualcommの「Snapdragon 7c」やMediaTekの「Kompanio 520」といったArmベースのSoCを搭載するモデルが増えている。Chromebookの場合、あらゆる操作をWebブラウザ(Google Chrome)の上で行う前提なので、Windows PCとは異なりCPU(アーキテクチャ)への依存をあまり考慮しなくてもよい。
円安などに起因する昨今のPC価格の高騰を踏まえて、少しでも手頃に端末を導入するための方策として、ArmベースのChromebookを導入する自治体も増えるのだろうか。OSシェアの争いと並ぶ注目ポイントだ。
Chromebook向けにSoCを供給するMediaTekは、今回EDIXに初出展した。「手頃でサクサク動くChromebookなら(MediaTekの)Kompanioという選択肢もありますよ」とアピールするためだという。ちなみに、先に紹介したDynabook Chromebook C70はKompanio 520を搭載している学習用端末にまつわる取材をしていると、全体的にはChromebookの勢いが一層増しているように感じる。日本専用の管理用ライセンスを導入したり、ChromeOS FlexによるWindows PC/MacのChromebook化を提案したりと、Googleの活動は思っている以上にアグレッシブだ。
一方、日本マイクロソフトは「Microsoft 365」や「Copilot」を軸にWindows環境であることに優位性を訴えている。学習用端末で「できること」を突き詰めると、ChromebookよりもWindows PCの方が良いとも考えられるので、そこに不満を覚えているChromebook(またはiPad)を使っている自治体をどれだけ引っ張り込めるかが焦点となるだろう。
そしてAppleは独自の戦いを繰り広げているようにも見える。iPadは、日本でシェアの高いiPhone(iOS)と似た操作感を備えているので、iPhoneに慣れた子どもは操作しやすく、やはりiPhoneに慣れ親しんだ教職員や保護者も操作を手伝いやすいというメリットがある。ただし、拡張性の面では他OS(特にWindows)にはかなわない上、汎用(はんよう)クラウドツールはGoogleか日本マイクロソフトに頼らざるを得ないという弱点もある。
学習用端末を導入するに当たって、何を優先するのか――都道府県(と市町村/特別区)の判断に注目が集まる。現状のシェアはどう変わっていくのか、楽しみである。
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