必要なスペックを選ぶ方法について解説してきたが、次に立ちはだかる壁はどのメーカーのCPUを選択するかとなるだろう。x86/x64アーキテクチャのCPUと言えばRyzenシリーズを展開しているAMDのCPUか、Coreシリーズ展開しているIntelのどちらかを選択することになる。
2017年3月2日にRyzenシリーズが発表されるまでは、AMDのCPUはIntelのCPUと比べると、どうしてもパフォーマンスに差が開きがちで選定の対象に上がってこなかった。
しかし、Ryzenシリーズは非常に高いパフォーマンスを誇っており、今ではメインPC用としてIntelのCoreシリーズと遜色ないCPUとなっている。
シングルコア性能の観点で見ると、Intelの方が比較的に高くなる傾向にある。その反面、マルチコア性能においてはAMDのRyzenシリーズに軍配が上がる。
CPUパフォーマンス以外で見ると、IntelのCPUは第12世代以降から高性能なPコアと、電力効率の良いEコア(第14世代以降はさらにLP Eコア)と複数のコアを搭載する、「ヘテロジニアスマルチコア構成」を採用しており、PコアとEコアに処理を振り分ける機能「Intel Thread Director」を活用することで、高い電力効率を実現できる。
特にWindows 11はWindows 10と比べて、Intel Thread Directorの最適化がさらに強化されているため、Windows 11搭載PCにおいてはさらに高効率な処理が可能となる。電力効率の高さは、ノートPCのバッテリー持ち時間に直結するので、ビジネスPCを選ぶに当たって大きなメリットといえる。
ビジネスPCで利用するアプリケーションの大半はシングルコア性能の高さに依存するものが多いため、パフォーマンスの観点から見るとIntel CPUに軍配が上がる。
しかし、一般的にIntelのCPUは、AMDのCPUと比べると高価になりがちだ。おのずとIntelのCPUを搭載したビジネスPCと、AMDのCPUを搭載したビジネスPCとで価格差が生じてくる。
そのため、パフォーマンスに重きを置く場合はIntelのCPUを搭載したビジネスPCを、コストパフォーマンスに重きを置くのであれば、AMDのCPUを搭載したビジネスPCを選択すると良いだろう。
また、両社からは最新のCore Ultra V200やRyzen AI 300シリーズが登場している。AI機能に関するパフォーマンスを中心に性能がアップしており魅力的だが、製品が出そろうのはもう少し時間がかかりそうだ。無理をして登場を待つ必要はないだろう。
現在は、新たな選択肢としてQualcommの「Snapdragon X」シリーズという選択肢も出てきている。ArmアーキテクチャのSoC(CPU/APU)ということで、x86アーキテクチャを上回るパフォーマンスと高い省電力性が魅力だ。しかし、業務アプリケーションや業務機器との互換性という観点から、本稿では割愛している。
ビジネスPCを選定するにあたって重要な点は、「限られた予算の中で最大限の費用対効果を得る」ことにある。今まで挙げたIntelのCPUとAMDのCPUの違いを把握した上で、自社にとって最大限費用対効果が得られるCPUを選定したい。
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