本機は、基本的にはかなりプレーンなAndroid端末ですが、CLIP STUDIO PAINTと3つのワコム独自アプリが入っています。「Wacom Canvas」はドローイングアプリ、「Wacom Shelf」は画像一覧アプリ、「Wacom Tips」はビジュアルと文章で容易に使い方を学べるヘルプアプリです。
後でもうちょっと使いますが、それぞれ軽くチェックしていきましょう。
Wacom Canvasは、描きたいときに素早く使えるアプリを目指して作られていて、黒鉛筆/青鉛筆/筆/消しゴムをシンプルに使って描きます。
ブラシの色や太さを選ぶこともできず、レイヤーや編集機能もありません。素早いイメージスケッチや下書きを想定されているようで、「キャンバス」というよりは「コピー紙と鉛筆」の方がイメージが合うと思います。
また、ペンで画面に触るだけでアンロックせずに新規画像で描き始める機能、今描いている画像を素早くWacom CanvasやCLIP STUDIO PAINTで開く機能もあります。
Wacom Shelfはファイル閲覧アプリで、端末内にある画像を一覧でき、Wacom CanvasやCLIP STUDIO PAINTで手軽に開くことができます。
Wacom Tipsは印象が良いです。アニメーション付きで分かりやすく、パラパラめくっているだけで何となくいろいろなことを把握できてくるため、使い始めのユーザーは助かると思います。
本機はあくまで一体型タブレットで、PCに接続しても液タブとしては動作しません。ですが、AndroidタブレットをPCに接続して液タブのように使えるアプリも複数あり、本機での利用も注目されています。
実際に画面が表示されて筆圧付きで描け、タッチ操作もできます。
この分野、iPadなどで発展してきた時期は自分も熱心に探ったもので、実際にずいぶん遅延などが改善して実用的になりました。ですが、結局本物の液タブとは一定の差があるまま縮まらなく感じてしまい、今は以前ほど熱心ではないです。改めていくつか、USB接続を中心に試用しましたが、ありがちなデメリットは以下の通りでした。
気付かないケースもあって、厄介なのが位置検出の精度の問題です。本来のペンタブは1ピクセルより細かい単位で位置を検出することによって、解像度やズーム域に関わらず正確で滑らかな線を描くことができます。しかし「液タブ化」ツールでは、多くの場合この精度が低下する(たぶん画面のピクセル単位になる)ようです。線が微妙にガタついて描きづらく感じたり、作品の品質に影響したりすることもあります。
確かめる方法は小さくズームアウトしたキャンバスに「ドットペン」で小さく何かを描いて、それを元のサイズにズームインすることです。これで、座標取得が荒くなっているのを拡大して観察できます。
なぜこんなことにすぐ気付いて確かめられるかというと、大昔にワコムの液タブで似た問題が出て苦労、もとい学びを得たからです(ありがとうワコムさん、ありがとう!)。
これらのツールはサブディスプレイ的にも使えますし、精度や応答性がほどほどでいい用途では依然として価値が高いです。ただ、液タブの代わりにしたいと考えている人は、描き味を高めようと技術者が作り込んでくれたスペックを、いくつも捨てながら使っているかもしれないことを覚えておいてほしいです。
イラスト用途でのこういった液タブ化ツールの自分のおすすめは、非日常/予備用です。
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