null2の内部もまた、鏡張りの空間となっている。正確には天井と床が巨大ディスプレイで、四方がハーフミラーに覆われた正方形の空間「ヌルの森」となっており、天井と床に映し出された映像が無限反射して映像がどこまでも続いているように見える。
部屋のほぼ中央にはモノリスと呼ばれる回転する縦長のディスプレイがあり、その上には「御神体」と呼ばれる巨大なロボットアームがあり、まるで神社で神主がおはらいの道具を振り回すように、立方体の鏡「ミラーキューブを」を振り回す(ちなみに、落合さんは神職として、「計算機自然(デジタルネイチャー)神社」を創建している)。
重さ1トンを超えるロボットアームが天井から吊るされているという光景は、美術館などではまず見ないはずだ。これができるのはnull2が、建築の鉄骨にダイレクトにロボットアームを取り付けているからこそ――つまり、最初からこのような展示にすることありきで建築設計をしているからこそであり、これまた万博でもないとこのような展示を見ることは難しいゆえんとなっている。
来場者はこの空間に入る前に、事前の“儀式”としてパビリオンの外にある装置を使って自分の身体を3Dスキャンし(自分のスマホと「Scaniverse」というアプリを使用)、その後に「MirroredBody」を使って自分の声や特徴などを登録する必要がある。
これらの準備を経てパビリオン内部に入ると、体験途中で運が良ければモノリスに自分の姿が投影され、その人の声で勝手に来場者と対話(ダイアローグ)を始める。
筆者も運よく自分の映像が映し出された1人だが、姿も声も自分なのに、なぜか大阪弁で話す姿を来場者の1人として眺めるというのは、何とも不思議な体験だった。
ショーが始まると、その回の参加者からランダムで選ばれた3Dスキャンの分身と、リアルタイムに生成された音声が会場に流れる。なお、この「デジタルヒューマン」との対話体験は抽選となっていて、誰が選ばれたかは体験した人でないと分からない生成された分身のMirroredBodyは毎回、最後に「何か質問して」と言う。そこで係の人が来場者の1人にマイクを渡し、質問を促す。
すると、MirroredBodyが即座にその質問に返答し、関連した映像を投影する。例えば筆者が訪れた回では、質問者が「万博会場の上空を飛んだブルーインパルスについてどう思うか?」と質問をしたのに応えて、ごう音と共にブルーインパルスの映像が現れnull2内を飛んだ。
中での体験についてはネタバレにならないように詳細を書くことは避けるが、AIがさまざまな分野で人間の能力を追い抜き始めるこれからの時代、人間がこれからどうあるべきかを考えさせる内容となっている。
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