「日本に強いシステムLSIメーカーを作るべきだ」 NECエレ・ルネサスが統合へ

» 2009年04月28日 07時00分 公開
[ITmedia]

 「システムLSIは産業のコメであり、日本の産業全体に影響を及ぼす。システムLSIだけは日本に強いメーカーを作るべきだ」──NECエレクトロニクスとルネサステクノロジが来年4月の統合を目指して協議を開始することを発表した記者会見で、NECの矢野薫社長はこう話した。

 新会社はNECエレを存続会社として上場を維持する一方、各親会社の連結対象から外れ、NEC、日立、三菱は新会社を持分法適用関連会社とする方向で検討を進める(NECエレとルネサスが来春めどに統合へ 世界3位の半導体メーカーに)。関連会社になればNECの連結業績にも大きな影響が出るが、矢野社長は「半導体メーカーは厳しい環境に置かれている」と、供給過剰と世界同時不況にあえぐ半導体市場の苦境が大型統合の決断を迫ったと説明した。

photo 統合を発表した5社のトップ

 統合後新会社は、売上高の単純合算で米Intel、韓国Samsung Electronicsに次ぐ世界3位となり、現在3位の東芝を抜いて国内トップの半導体メーカーになる。新会社の合計市場シェアは、マイコンで世界1位(31%)、液晶ドライバで世界2位(17%)、ASICで世界4位(9%)など。システムLSI、マイコン、個別半導体が収益を稼ぎ出す三本柱だ。

 両社が力を入れてきたシステムLSIでは、NECエレがレコーダーなどのデジタル家電向けに強く、ルネサスはNTTドコモや端末メーカーと「SH-Mobile G」シリーズを共同開発するなど、携帯電話や車載向けに実績を持つ。マイコンは世界シェア1位と2位を両社で分け合ってきた得意分野でもあり、個別半導体は今後、マイコンと相乗効果が見込めるアナログディスクリート開発を強化していく。

 ただ、両社はこの三本柱で市場競争を繰り広げてきたライバル同士だ。相互補完などが見えにくく、統合効果を疑問視する指摘もあるが、NECエレクトロニクスの中島俊雄社長は「統合で強い部分をより強くできることもある。一番戦ってきた相手だからこそお互いの価値と実力を評価しあうことができ、スムーズに話が動いた」という。将来の製品統合について、ルネサスの赤尾泰社長は「マイコンは製品寿命が10年を超えるものもあり、慎重な検討が必要だ」と話す。

 ただ、統合は両社の抜本的な構造改革が前提だ。「赤字でスタートする計画はありえない」(中島社長)として、両社合計で08年度実績から2000億円の固定費削減を目指す構造改革を断行。単独でも生き残れるほどの収益性の回復に全力を挙げる。「この1年が正念場だ」(三菱電機の下村節宏社長)

 両社とも、先端プロセス開発では他社と協業しており、NECエレは東芝など、ルネサスはパナソニックと共同開発を進めてきた。ルネサスの赤尾社長は「現在続いているものはそのまま進める。25ナノメートル以降については、統合後、製品や生産をどうしていくか検討した上で考えていく」とした。

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