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» 2009年10月30日 15時23分 公開

神尾寿のMobile+Views:“安かろう”では済まない――Google本格参入でカーナビ市場はどうなる? (2/2)

[神尾寿,ITmedia]
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無料のGoogleナビが、スマートフォン・ナビを牽引

 ネットにつながらない単体型カーナビから、モバイル通信とクラウドを用いたサーバ連携型カーナビへ――。そうした流れは、Google Maps Navitgation登場以前から、ゆっくりと、だが確実に起きていた。

 その顕著な例が、「NAVITIME ドライブサポーター」(ナビタイムジャパン)など携帯電話向けカーナビゲーションサービスの着実な成長だろう。これらの携帯ナビサービスでは、単体型カーナビにないサーバー連携の強みを生かし、地図・道路料金の変化への迅速な対応や、渋滞情報をはじめとするリアルタイム性の高いドライバー支援コンテンツで、着実に勢力を伸ばしている。とりわけ今年はETC特別割引対応の特需もあり、ユーザーが急増しているという。

Photo 第1回 国際自動車通信技術展のナビタイムブースに参考出展された「NAVITIME ドライブサポーター」。ウィルコムのWILLCOM D4上でUIを披露した

 さらにスマートフォンでも、カーナビサービスの存在感は強くなっている。例えば、iPhone向けカーナビアプリで見ると、「全力案内!ナビ」(ユビークリンク)、「いつもNAVI」(ゼンリンデータコム)など国産アプリのほか、PNDメーカー最大手であるオランダのTomTomも「TomTomアプリ」を発売。iPhoneやAndroidなどスマートフォンにおいて、カーナビはキラーコンテンツの1つになっているのだ。

 Google Maps Navitgationの登場と今後の広がりは、こうした「スマートフォンのカーナビ利用」を一気に推進することになるだろう。なにしろ、この“Googleナビ”はほかのGoogleサービス同様に無料なのだ。この価格破壊のインパクトは大きい。ネットに繋がらず、独自のリアルタイムコンテンツやサービスを持たない安価なカーナビやPNDは、Googleナビをはじめとする安価なスマートフォン向けナビゲーションサービスに駆逐されてしまうことすら考えられる。

据え付け型カーナビも「通信対応」がトレンドに

 Googleナビの登場により、今後、携帯カーナビやスマートフォンカーナビの利用が拡大することは間違いない。そして、この影響は、PNDのみにとどまらず、自動車メーカー純正や市販の据え付け型カーナビにも広がるだろう。

 据え付け型カーナビの世界では、トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車など大手自動車メーカーは、純正カーナビの“通信・テレマティクス対応”を積極的に推し進めていた。特にホンダとトヨタはこの分野の世界的な牽引役であり、サーバー連携型カーナビを2000年代前半には実用化し、先進的なサービスを次々と投入してきたという点で、Googleナビよりも先を行っている。現時点のサービス水準で見ても、ホンダとトヨタのサーバ連携カーナビは、Googleナビよりも先進的といっていいだろう。

 しかし、その一方で、トヨタ・ホンダ・日産以外の自動車メーカーやカーナビメーカーは長らく「通信対応」に消極的だった。唯一、市販カーナビメーカー最大手のパイオニアが、2000年代前半から通信対応と自社テレマティクスサービスの開発に取り組んでいたくらいである。

 だが、携帯カーナビやスマートフォンカーナビの勢力が拡大していけば、据え付け型カーナビにとっても「通信対応」と「サーバ連携」は必須の対応項目になるだろう。今後、Googleナビなどでコンテンツやサービスが進化し普及するスピードに、通信非対応のカーナビでは対応できないからだ。このままでは「カーナビの基本機能」部分で、高価な据え付け型カーナビが、安価もしくは無料のカーナビサービスに完敗することすら考えられる。

 しかし幸いなことに、据え付け型カーナビを「通信対応・サーバー連携」させる環境は整ってきている。

 カーナビの通信対応では“ユーザーの通信料金負担”が利用促進のハードルになるが、ウィルコムやソフトバンクモバイルが中心となり、カーナビ向け低料金プランが続々と登場。今年10月にはソフトバンクモバイルが、ユーザーが利用中のパケット定額サービスにプラス200円を支払えばカーナビ利用通信分も定額適用となる「カーナビプラン」を発表。また、Yahoo!Japanなど大手ポータルサイトもクルマ向けのサービス・コンテンツ展開に積極的になってきている。このような環境変化により、出荷台数の多い大手自動車メーカーの純正カーナビでなくても、通信対応・サービー連携型カーナビは作りやすくなってきているのだ。

 今後10年の視野に立つと、「カーナビ」は特定のハードウェアに依存する製品ではなく、サーバ連携・提供型の「ナビゲーションサービス」としてビジネスが進化・拡大していくことになる。クルマに取り付けられるのは、ナビゲーションサービスを利用する端末、ということになるだろう。そこで使われるのがスマートフォンなのか、それともPNDや据え付け型の専用機なのかは、ユーザーが好む利用スタイルとUIの問題になっていく。

 こうした潮流は、ホンダのインターナビなど大手自動車メーカーのテレマティクス戦略や、ナビタイムジャパンの台頭などで顕在化していたが、今回のGoogleのカーナビ市場本格参入でそのスピードが加速するのは確実だ。そして、このナビゲーションサービス時代の到来は、通信キャリアだけでなく、コンテンツプロバイダやメーカーにとって新たなビジネスチャンスになるだろう。

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