スムーズな動作と開発期間の短さが特長の「Windows Phone 7 series」MIX10(1/2 ページ)

» 2010年03月17日 09時30分 公開
[鈴木淳也,ITmedia]
Photo Windows Phoneチームを率いる米Microsoftのコーポレートバイスプレジデント ジョー・ベルフィオレ(Joe Belfiore)氏は、ZuneやWindows Media Center、WindowsなどのUI開発を担当してきた人物。その最新作がWindows Phone 7の「Metro」といえるだろう

 スペインのバルセロナで2月に開催された「Mobile World Congress 2010(以下MWC)」で、Microsoftは最新スマートフォンプラットフォーム「Windows Phone 7 series」をお披露目した。だが、当初紹介されたのは同社製のポータブルメディアプレーヤー「Zune HD」を模した新しいユーザーインタフェース(UI)「Metro」を搭載した新OSのデモ映像が中心だった。Windows Phone 7の技術的な詳細は、その場ではほとんど明らかにされず、このプラットフォーム上でサードパーティの開発者がアプリを構築するためのツールや各種要件、そしてアプリの配布方法については後日公開とされていた。

 そして3月15日(米国時間)、米国のラスベガスで開催されたMicrosoftのインターネット技術カンファレンス「MIX10」で、これまで秘密のベールに包まれていた開発ツールやSilverlightとの連携、Xbox 360との共通の開発環境など、次々と新情報が公開された。ここではMIX10の初日のキーノートで公開されたサードパーティ製アプリやSilverlight 4.0 for Mobileのデモの紹介などを交え、これまで不明だったWindows Phone 7にまつわる疑問の数々を追いかけていこう。

「Metro」に標準対応したWindows Phone 7アプリの数々

 MIX10では、初めてサードパーティ製のWindows Phone 7対応アプリが紹介された。これが意味するのは、Windows Phone 7向けの開発環境が整いつつあり、それを配布するための「Windows Phone Marketplace」が準備段階に入っているということだ。ここはまず、初公開のWindows Phone 7向けサードパーティアプリの数々を見ていこう。

PhotoPhotoPhoto 「Hush Hush」と呼ばれる日記帳アプリ。リアルなページめくりアニメーションとともに写真や文章を追加し、後でアルバムとして見ることができる。加速度センサーによる画面の回転も可能
PhotoPhotoPhoto 左はAP通信のモバイルニュースアプリ。MetroのUIを採用しており、ニュースの階層が深くなるごとに右側にスクロールしていく。中央と右は「Harvest」と呼ばれるアクションゲームアプリ。フィールド上を敵を倒しつつ進んでいく
PhotoPhoto オンラインビデオレンタル「Netflix」の映画視聴アプリ。最新映画をレンタルしてスマートフォン上で楽しめる
PhotoPhoto コミックリーダーのGraphic.lyでは指定したコンテンツを1画面に表示するだけでなく、拡大表示やコマ合わせ、全ページ一覧など、スムーズに表示モードを切り替えることができる
PhotoPhotoPhoto Twitterなどとの組み合わせで楽しめる位置情報ゲーム「Foursquare」も、Windows Phone 7のアプリから利用できる。“チェックイン”の際の地図表示はBing Mapsになっている。「Shazam」は端末のマイクに音楽を聴かせると、それを自動的にサーバに送信して分析、端末上に曲名を表示する、スマートフォンではおなじみのアプリ。気に入った曲はそのまま購入も可能だ。「MLS(Major League Soccer)」のアプリでは、対戦スケジュールの確認や試合の実況、ゴールしたときの通知、そしてシュートシーンのリプレイやストリーミングなど、ゲームを楽しむための仕掛けがいろいろ詰まっている

 写真を見ると分かるように、さまざまな種類のアプリが用意され、そのどれもがビジュアル的に洗練され、スムーズな動作を見せている。例えば典型的なものはAP通信のニュースアプリで、これ自体はただ最新ニュースが読めるアプリなのだが、メニュー構造がWindows Phone 7が標準で備えている「Metro」(開発コード名)と同じものとなっている。階層が深くなるほど右側にスクロールしていき、直感で動作が分かる。こうした「ハブ」と呼ばれるサブメニューを掘り下げていく構造がWindows Phone 7の基本であり、今後登場するアプリの多くはこのメニューを採用するものと思われる。

 このほかの特徴としては、スムーズなアニメーションを実現していること、DRM付き動画の再生も容易なこと、画像の拡大縮小処理、そしてBing MapsなどのWebアプリケーションの機能が随所に盛り込まれており、UIの統一性もさることながら、非常に凝った作りとなっていることなども挙げられる。だがMicrosoftによれば、これらアプリの大部分は2〜3週間程度で開発されたものだというから驚きだ。最も凝ったゲームデモのHarvestでさえ、開発期間は3週間だったという。その秘密はWindows Phone 7用の開発ツールにある。

デモ用アプリがわずか2〜3週間程度で開発できた理由

Photo Microsoft .NET開発プラットフォーム事業担当コーポレートバイスプレジデントのスコット・ガスリー(Scott Guthrie)氏。MIXイベントのメインプレゼンターでもある

 実は上記のデモで登場したアプリの多くはSilverlightで作られている。SilverlightはWebブラウザで動画再生を行うために広く利用されているプラグインだ。現在、その最新版としてSilverlight 4 RCがリリースされており、間もなく正式版へと移行する。

 Silverlightといえば動画再生を思い浮かべる人が多いかもしれないが、もともとMicrosoftではSilverlightを「RIA(Rich Internet Application)」開発用のプラットフォームとしてリリースしており、動画再生機能は本来であれば付随的なものとなっている。デモの数々が軽快に動作していたのはWindows Phone 7が搭載された端末のスペックの高さもさることながら、ハードウェアアクセラレーションなどの機能を搭載し、Silverlight自体の動作が軽いことに起因する。

 RIAということで、本来Silverlightは単に文字やグラフィックの表示だけでなく、さまざまなアニメーションやユーザーの動作に対しての各種反応など、よりリッチなアプリケーションを作成できる機能を備える。最新のSilverlight 4では、こうしたRIAを実現するための単純なプラグインという位置付けにとどまらず、ドラッグ&ドロップを通じてのデストップ画面との通信、ローカルファイルアクセス、マイク/Webカメラ等のハードウェアの利用、印刷、右クリックメニューの表示など、デスクトップアプリケーションと比べても遜色のないレベルまで機能強化が行われている。

PhotoPhotoPhoto Silverlightというキーワードを聞いて、まず動画再生が頭に浮かぶユーザーは多いだろう。今冬のバンクーバーオリンピックでも映像中継で活躍していた。最新のSilverlight 4で搭載された機能が中央と右の写真。コンシューマー向け機能としてはWebカメラやマイクのサポート、オフラインDRMへの対応が大きい

 このいい例がeBayのSilverlightアプリだ。オークションへの登録や参加を簡略化するアプリだが、Webカメラでバーコードを読んで商品の詳細情報を自動登録できたり、写真をデスクトップから直接ドラッグ&ドロップして説明ページに貼り付けるなど、従来のWebアプリケーションにはなかった特徴を備える。

 こうした多数の凝った機能を持ったアプリケーションだが、完成までの期間はわずか8週間程度だったという。そこで利用されたのは「Microsoft Visual Studio 2010 Express for Windows Phone」と「Microsoft Expression Blend 4」で、特に後者のExpression Blendではデザイナーがラフスケッチで設計したアプリケーションのデザインを基にプログラマーが動作コードの記述を行えるようになっており、要件定義をスムーズに伝えられるのが特長だ。

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