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» 2013年10月17日 16時45分 UPDATE

著名作家の小説を「ブックパス」で独占配信 KDDIと幻冬舎にその狙いを聞く

オリジナル小説の独占配信など、電子書籍ストア「ブックパス」の新しい取り組みを発表したKDDIと幻冬舎。その企画背景や狙いを担当者に聞いた。

[佐野正弘,ITmedia]

 KDDIと幻冬舎は10月16日、auの電子書籍ストア「ブックパス」にオリジナル小説を独占配信すると発表した。第1弾となる三崎亜記氏の最新小説を皮切りに、有名作家を起用した作品を「読み放題プラン」で提供するなど、ブックパスの利用拡大に向けた新たな取り組みを公表している。

三崎亜記氏の連載作品などを独占公開

 KDDIの「ブックパス」はauのスマートフォンやタブレットなどに向けた電子書籍ストアサービスであり、通常の電子書籍ストア同様1冊毎に購入する「アラカルト購入」に加え、月額590円で小説やコミック、雑誌など7000冊ものタイトルが読み放題になる「読み放題プラン」を用意しているのが大きな特徴だ。現在のブックパス利用者は、男女比がほぼ半々であり、世代別では主に30〜40代が利用の中心となっているという。

photophoto ブックパスの利用者属性。男女比はほぼ半々で、30〜40代が利用の中心になる(写真=左)。ブックパスが幻冬舎と展開する企画の第1段。三崎亜記氏の最新小説「イマジナリー・ライフレポート」を、読み放題プラン限定で公開(写真=右)

 そのブックパスが、多くの人気小説を輩出する幻冬舎と手を組んで、新しい取り組みを実施していこうというのが、今回の取り組み。その第1弾として展開されるのが、「となり町戦争」「鼓笛隊の襲来」などの著書を持つ、三崎亜記氏の最新小説「イマジナリー・ライフレポート」を、読み放題プランで公開するというものだ。

 この作品は現在、幻冬舎の雑誌「パピルス」に連載されているが、全6話のうち、第3話以降がブックパスの読み放題プラン向けに配信される。10月16日より作品の配信を開始し、毎月上旬に続編を追加。作品は12月で完結するが、完結後しばらくした後には単行本化もなされるそうだ。

photophoto 今回の企画に合わせて、三崎氏の作品「玉磨き」も同時に公開

 さらに今回の取り組みに合わせて、三崎氏の作品をより楽んでもらうよう、従来アラカルト購入でしか読むことのできなかった作品「玉磨き」の中から、表題作「玉磨き」をauスマートパス会員向けに無料で公開することも、同時に発表された。

「auスマートパス」の活用で電子書籍の利用を広める

 KDDIの事業統括本部 新規ビジネス推進本部 auスマートパス推進部長の繁田光平氏は、企画の背景について、「より多くの人に電子書籍に接してもらうことで、ビジネスを大きくしていきたい。紙の書籍ではなかなかアプローチできなかった人達に対して、電子書籍で向かい合ってもらえるよう、幻冬舎とタッグを組んで企画を実施することになった」と話している。

 ちなみにKDDIと幻冬舎Iは2009年から2010年にかけて、TOKYO FMとのコラボレーションで10代限定の文学新人賞「第二回 蒼き賞」を実施しており、その縁が今回の協力に結び付いたという。

photophoto KDDIの繁田光平氏(写真=左)と幻冬舎の永島賞二氏(写真=右)

 幻冬舎の常務執行役員 編集・出版本部 副本部長 文庫編集長である永島賞二氏も、「書店に行って本を買う、目的意識が高い人はもちろん重要。だがより多くの人に本に親しみ、その楽しみを知ってもらうためには、エンターテインメントの1つとして小説があることに気づいて欲しい」と話す。出版社として、小説作品の読者層を広げたいという狙いが今回の取り組みへと結び付いているといえよう。

 そこで重要な存在となるのが、auスマートパスだ。同サービスはすでに800万会員を集めていることから、auスマートパスのタイムラインに、三崎氏の小説をはじめとした今回の取り組みが流れてくれば、閲覧者に対するアピール効果は非常に大きなものとなる。

 事実、繁田氏は「スマートフォンは顧客の衝動を受け止めるだけでなく、衝動を起こすデバイス。タイムラインで気づきを出し、小説作品を体験してもらうきっかけを作りたい。一度体験してもらえれば、見方が大きく変わるはず」と話しており、小説の読者、ひいてはブックパスのユーザー増加に結び付ける上でも、auスマートパスが大きな役割を果たすと捉えているようだ。

photo 企画の第1弾として作品を提供する、作家の三崎亜記氏

 一方、作品を提供する三崎氏は、今回の取り組みをどのように捉えているのだろうか。三崎氏は電子書籍について、「今後どうなるかはっきりとは言えないが、今はスマートフォンでニュースを見るのが普通のことになっている。小説は紙の本と電子書籍との違いについて議論がなされることが多いが、(ニュースのように)スマートフォンで本を読むことが普通になっていけばと思うし、その一助になればと考えている」と述べ、スマートフォンに向けた電子書籍への取り組みについては、前向きな姿勢を見せた。

 一方で、三崎氏は「電子書籍はデータで読むから、データで作るのかというとそうではない。今の消費者は感度が高いので、“こういうのが受けるでしょ?”と提示されるものは逆に敬遠される。このメディアだからこういう作り方をする、ということはない」と、電子書籍だからといって作品の執筆スタイルを大きく変えることはないとも話している。三崎氏ならではのスタイルを保った形で、ブックパスに向けた新しい作品作りに取り組む考えのようだ。

photo 今回の企画に協力する3氏。今後は他の作家も参加した、さまざまな企画が実施される計画のようだ

 なおこの企画は、すでに第2弾も進められている。こちらはユーザーの投票によって意見を募る「auスマパス総会」で決められたテーマをもとに、有名作家8人(作家名は現時点では未公表)が恋愛アンソロジー作品を執筆。それを読み放題プランで配信する取り組みになるとのこと。テーマを決めるauスマパス総会での議決は10月16日から11月6日まで実施され、作品の配信は2014年1月から8月の間が予定されている。

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