月額2700円の完全通話定額は高いのか安いのか━━一気にプライスリーダーに躍り出たドコモの本気石川温のスマホ業界新聞(1/2 ページ)

» 2014年04月18日 12時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 4月10日、NTTドコモが料金改定に踏み切った。この料金を見たとき、はっきり言ってドコモを見直した。ここ最近の業界を振り返ると、MNP開始時にソフトバンクの孫社長が料金戦争を仕掛けて、980円というプランが定着。ソフトバンクが自網内定額などのデファクトスタンダードを作ってきた感がある。業界のプライスリーダーは間違いなく孫社長だった。

 そこに続いたのがKDDI・田中社長。自社にしかできない「固定と携帯電話のセット販売」で、家族をまるごとKDDIにしてしまう戦略が当たった。

 ソフトバンク、KDDIが料金で攻めてくる中、NTTドコモは防戦一方であったのだ。

 そこに来て、今回の完全通話定額と家族データシェアプランの投入だ。「基本料金が高く、電話をしないユーザーからすれば値上げだ」という指摘はあるが、1回10分という制限のない「完全通話定額」の導入は、我々がこれまで付き合ってきた「音声通話」の使い方を根本から変えてしまう可能性があるし、業界の勢力も一変させる破壊力を持っている。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2014年4月12日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。


 当然のことながら、割安な音声通話を訴求していたサービスは、内容の見直しを迫られるだろう。「楽天でんわ」はもちろんのこと、「LINE電話」もすっかり影を潜めることになる。「楽天でんわ」の記者会見時、フュージョン・コミュニケーションズ幹部が「(音声定額導入が予想される)VoLTE開始時までが顧客獲得の勝負だ」と語っていたのだが、VoLTEを開始する前にあっさりと優位性が失われてしまった。LINE電話においても、電話番号偽装の問題を解決する前に、サービス内容の変更を検討しなくてはいけないかも知れない。

 また、さらにインパクトが大きいのがウィルコムだろう。これまで「だれとでも定額」で、音声通話需要を取り込んできたが、ドコモの「カケホーダイ」導入で、存在意義が薄れてしまった。PHSの070番号が必要という弱点もあるし、10月からケータイとのMNPが始まり、090/080番号でもウィルコムというかワイモバイルが使えるようになるが、わざわざワイモバイルにMNPしなくても、ドコモを使い続ければ充分だ。PHSは音質が良い点も魅力だが、夏からはVoLTEが始まり、ドコモでも音質が向上する。

 通話用にウィルコムを2台目として持っていたユーザーが一気にウィルコムを解約するという流れがでてもおかしくない。

 今回のドコモ新料金では家族をまるごとドコモに契約させようという狙いが明確だ。スマホ時代となり、家族のなかで、子どもがKDDIやソフトバンクに移行しても、さほど損はせず、違いがなくなっていた。そこにKDDIが「スマートバリュー」を投入して、「家族丸ごとKDDI」戦略が当たったのだが、ドコモは「家族丸ごとでパケット料金をシェアしてお得」という対抗策を打ってきた。「NTT法のからみもあり、固定と連携できないなら、家族データシェアで勝負」というわけだ。

 もともと、NTTドコモは「お父さん」ユーザーに長期利用者が多く、その流れもあって、家族丸ごとドコモという世帯が多かった。その「ドコモユーザーのお父さん」を軸に料金が安くなるプランというのは、ドコモの強みがわかった上での理にかなった戦略と言える。

 昨年、iPhoneを獲得したことで、他社に流出してしまったユーザーもドコモ家族の輪に引き戻せるかも知れない。

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