LINEならではの“つながり”が強み 「LINE MALL」はどうやってEC市場を勝ち抜くのか「フリマアプリ」ではありません

» 2014年08月27日 20時55分 公開
[村上万純,ITmedia]
photo LINE上級執行役員島村武志氏

 LINEが3月よりプレオープン版アプリを展開しているスマートフォン向けECサービス「LINE MALL」。同社が「フリマアプリではない」(LINE上級執行役員島村武志氏)と位置付けるLINE MALLは、ほかの類似サービスとどのような違いがあるのだろうか。

 LINE上級執行役員舛田淳氏は、「楽天やアマゾンなどが提供する大手ECサービスと異なる唯一にして最大の点は、LINEというプラットフォームを利用しているか否かに尽きる」と話す。「スマートフォン最大のリアルグラフ」(舛田氏)を持つLINEがECサービスで提供する価値とは、ユーザー同士による“つながりの消費”だ。

 8月27日に開催された「LINE Showcase 2014 Aug.」で、LINE MALLのこれまでの取り組みや、今後の展開が語られた。

LINEの“つながり”を最大限生かしたECサービス

 島村氏は、「2012年の段階で、日本のBtoC EC市場におけるECの浸透率は3.11%で大いに改善の余地がある。今後この市場を伸ばすにあたり、LINEで何ができるのかを徹底的に考えた」と話す。これまでのECサービスでは、ユーザーは目当ての商品を能動的に検索して購入の比較検討を行う「Pull Commerce」が主流だったが、LINEは検索以前にユーザーの「注意・関心」を引く「Push Commerce」というスタイルを提唱する。

photophoto これまでのECサービスは検索型の「Pull Commerce」が主流だった

 コンセプトは「誰もが簡単・安心に出品・購入でき、新たな商品と出会う機会を提供する」こと。従来の「検索型ショッピング」と異なり、明確な購入目的のない人でもさまざまな商品に出会い、そのまま購入できるような体験を提供するという。

 LINE MALLでは、これまで送料込みのシンプルな価格設定や、LINE MALLが商品と代金の受け渡しを仲介するエスクローサービス、出品者向けの定額配送サービス「LINE配送」、プッシュ通知で毎日セール情報を通知する「LINE セール」など、さまざまな取り組みを行うことで200万ダウンロードを突破するなど、一定の成果を挙げてきた。

photophoto LINEは検索以前にユーザーの「注意・関心」を引く「Push Commerce」というスタイルを提唱する

 同日の発表会で島村氏は、「今後のLINE MALLは、商品との出会いを最大化=つながりによる消費」を重視すると明言。「何か商品を買うときは、家族や友人などの口コミがきっかけで、自分発ではないことが多いのではないか。多くの友だちとつながるLINEを最大限に生かしたショッピング体験を提案したい」(島村氏)と説明する。

photo LINE MALLは、商品との出会いの最大化を図るという

割引可能なグループ購入や産地直送など、5つの新サービスが登場

 今回新たに発表されたサービスは「LINE グループ購入」「LINE ギフト」「LINE マルシェ」「LINE セレクト」「LINE クリエイターズモール」の5つ。

 LINE グループ購入は、LINEでつながっている複数の友だち同士で商品をお得にまとめ買いできる機能だ。対象商品はドリンク類やパスタ、缶詰など食品や日用品類を予定しており、まとめ買いすることで最大50%オフで商品を購入できる。グループでの注文書共有やLINEのメッセージを利用し、決済や配送は個別で行える。提供は8月28日の予定。

photo LINE グループ購入
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 LINE ギフトは、LINE上の友だちにプレゼントを送ることができる機能だ。受取人が住所や配送日を設定できるので、相手の住所を知っている必要がない。また、複数人から個人宛にプレゼントを送ることも可能で、出産祝いや誕生日プレゼントなどの高額ギフトを割り勘でプレゼントできる。提供予定は2014年秋以降。

photo LINE ギフト
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 LINE マルシェは、収穫したての農作物や水揚げされたばかりの新鮮な魚介類などを生産者から直接購入し、産地直送で配送される機能。2014年度内に提供する予定で、「ユーザーが満足できるレベルで、全国各地の商品をラインアップする」と島村氏は語る。

photo LINE マルシェ
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 LINE セレクトは、都内のアパレルや雑貨など、実店舗を持つセレクトショップから商品を購入できる仮想ショッピングモール機能だ。場所と時間を超えてユーザーと商品をつなげる点は、LINE マルシェと共通している。2014年度内の提供を予定している。

photo LINE セレクト

 島村氏が「新しいつながり」として発表したのが、LINE クリエイターズモールだ。LINE MALLがクリエイターと工場をつなぎ、クリエイターが作ったハンドメイド商品を大量生産できるようにLINEが支援する。LINEは既にユーザーが制作したスタンプを販売できるプラットフォーム「LINE Creators Market」を提供し、登録クリエイター数が14万9000人を超えるなどの成果を収めているが、「LINE発のブランドを作りたい」と島村氏も意欲的だ。

photophoto LINE クリエイターズモール

 これまで、LINE MALLは一般のユーザー同士がやり取りをする無料アプリだったが、今後は農産物を提供する事業者やセレクトショップなどから手数料を得るなど、プラットフォームビジネスとしてのマネタイズも進めていく方針だ。また、グループ購入をマルシェやギフトなどのサービスに応用できるような取り組みも合わせて行っていくという。

 発表会ではLINEアカウントの乗っ取りについての質問も挙がった。LINE MALLでは、LINEのIDを認証に使ったLINE MALL IDが振り分けられるが、「アカウントの乗っ取りが判明した時点で両者のIDを切り離す対応をする」と島村氏は話す。舛田氏も、「アカウントの乗っ取りについては重大な問題と認識しており、限りなくゼロにするために引き続き対策を強化していく」と意気込みを語った。

海外は各国事情に合わせた展開を

photo LINE上級執行役員舛田淳氏

 舛田氏はLINE MALLの新サービスについて、「最初からLINEと連携していればいいと思う人もいるだろうが、順序とタイミングが大事。EC事業は初めてなので、バックエンド含めて1つ1つ回していかないといけない。基本のインフラができたため、今度はその上にいろんなものを建てていこうという段階」と総括する。

 海外展開について島村氏は、「各国で状況やニーズが異なるので、それぞれの事情を見ながら国内と並行して検討を重ねていく」と話す。舛田氏は「LINE MALLは(国内向け)ECサービスの中核だが、今後は国ごとにほかのEC事業が次々立ち上がっていく」と続けた。


 「人生の豊かさは選択肢の幅にほかならない」と語る島村氏は、「利便性を重視した上で、出会えなかった何かに出会えるというワクワク感やときめきを提供していきたい」と語った。

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