これまでiPhoneではApple純正の標準キーボードしか利用できなかったが、iOS 8がリリースされたことでサードパーティ製の日本語入力アプリが使用可能になった。
現在リリースされている日本語入力アプリで最も使いやすいのはどれなのか。その実力をそれぞれ試していきたい。今回使用したのは、「ATOK for iOS」「Simeji」「mazec for iOS」の3つ。使用した端末は、ドコモ版「iPhone 6 Plus」(iOS 8.0)と、ドコモ版「iPhone 5s」(iOS 8.0.2)だ。画面サイズが5.5型と大柄な6 Plusでどこまで快適な入力ができるのだろうか。一部不具合も散見されるが、それも含めて使い勝手を見ていきたい。
App Storeランキングで1位に輝くこともあった「ATOK for iOS」(1500円、税込)だが、ユーザーレビューには不満の声も多い(バージョンは1.0.1)。Bluetoothキーボードで使用できない、未変換状態の入力文字列をテキスト枠内に表示しながら変換するいわゆる「インライン変換」が利用できないなど、iOS側の仕様で不便に感じることが多く、今後に期待したいところだ。
しかし、WindowsやMac向けに提供される「ATOK」と同等の高性能エンジン「ATOK EV Engine」を搭載するなど、変換精度の高さには目を見張るものがある。
iPhone 6 PlusでATOKアプリを立ち上げると、まずキーボードの右寄せ、左寄せができることに気付く。初期状態で縮小された状態のキーボードしか使えないが、片手操作はしやすい。また、10月2日のアップデートにより、右寄せと左寄せを記憶できるようになった。顔文字や独特な定型文も用意されている。
フリック入力をすると、青色で大きく候補文字が表示されて見やすい。ただし、先述したようにインライン入力には対応していない。変換中の文字は、小さい枠の中で2〜3文字だけしか確認できないので、長文変換に定評のあるATOKの良さが抑えられている印象だ。
長文変換の正確性をうたっているATOK for iOSだが、細かく文節で区切って変換した方が確実だ。長文を一息で変換しようとするとミスが起きる可能性がある。
一方で、「はじめっから」のような話し言葉の変換ができたり、「いつもお」と打つと「いつもお世話になっております。」という定型文が表示されたり、「うるおぼえ」と打つと「うろ覚え」と修正して変換候補を表示したり、かゆいところに手が届く仕様はこれまでのATOKシリーズとも同じだ。
今回、iOS向けの独自機能として、「カーソルキー(右矢印アイコン)」をフリックすることで思ったところにカーソルを合わせやすくする「らくらくカーソル移動」や、「バックスペースキー(×印のアイコン)」をフリックして句読点および改行単位での文章を削除する「まとめて削除」など、快適な文字入力を助ける機能も搭載した。
ジャストシステムによると、今後はQWERTYキーボードの追加を最優先で進めていくという。そのほか、フラワータッチ入力ができるテンキー、絵文字/顔文字/記号キーボードなどもiPhone向けに提供していく予定だ。
SimejiはAndroid版アプリで1000万ダウンロードを突破する人気アプリ。無料なのもポイントだ。iOS 8.0.1搭載のiPhone 6 Plusではアプリを起動できなかったため、今回はiOS 8.0.2にアップデートしたソフトバンクモバイル版iPhone 5sを使った。Simejiのバージョンは1.0。設定で「フルアクセスを許可」をオンにすると、顔文字を含めた現代語や流行語をリアルタイムで取り入れた辞書をすぐに使える「クラウド超変換」機能を使える。バイドゥは、入力した文字列はサーバに送信された後に破棄されるとしているが、気がかりな人は設定をオフにしておくといい。
画面中央のTシャツアイコンをタップすると、キーボードの着せ替えが可能。シックな色からポップなデザインまで4種類のキーボードを選べる。辞書の中には3万語の顔文字が用意されており、ネットでよく見る「これってどこで見つけてくるの?」と思ってしまうようなものまで、あらゆる顔文字を網羅している。いちいち気になる顔文字をWebで探してコピー&ペーストして辞書に登録、などという面倒な作業は不要になる。ただし、あくまで友達とのカジュアルなコミュニケーションでの利用が中心となるので、ビジネスシーンなどではやや使いづらいかもしれない。SimejiもiOSの仕様上インライン入力はできない。
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