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» 2014年11月28日 10時00分 UPDATE

佐野正弘のスマホビジネス文化論:格安スマホでも“アプリ取り放題”を! ソースネクストとイオンの挑戦

大手キャリアが提供しているアプリ取り放題サービスを格安スマホでも。ソースネクストが開始した「アプリ超ホーダイ」の狙いを、格安スマホを販売するイオンとともに聞いた。

[佐野正弘,ITmedia]

 国内の主要携帯電話キャリアが提供している“アプリ取り放題”サービス。厳選されたアプリを定額料金でダウンロードし放題にするこのサービスを、格安スマホ向けに提供しているのが、ソースネクストの「アプリ超ホーダイ」だ。しかしなぜ、格安スマホでアプリ取り放題サービスが必要とされているのだろうか。その理由と提供に至った背景などについて、サービスを提供するソースネクストと、販売面で協業するイオンリテールに話を聞いた。

なぜ“格安スマホ”で“アプリ取り放題”なのか

 2014年に携帯電話市場で大きな注目を集めたのが、安価なSIMロックフリースマートフォンと、同じく安価に利用できるMVNOの通信サービス(SIMカード)をセットにした“格安スマホ”だ。その格安スマホ向けサービスとして登場したのが、ソースネクストの「アプリ超ホーダイ」だ。

photophoto ソースネクストの松田憲幸社長(写真=左)、イオンリテール 住居余暇商品企画本部 デジタル事業開発部 部長の橋本昌一氏(写真=右)

 アプリ超ホーダイは月額360円(税別)で、ユーティリティーからオフィススイートなどの実用系アプリ、さらには子供向けやゲームなど幅広いジャンルの厳選されたアプリ50本以上が取り放題になるサービス。KDDI(au)の「auスマートパス」や、ソフトバンクモバイルの「App Pass」などといった“アプリ取り放題”サービスの格安スマホ版といえるもので、10月29日にスタートした。また11月からは、イオンリテールやビッグローブなどの格安スマホ向けオプションサービスとしても提供されている。

photo 「アプリ超ホーダイ」アプリのトップ画面

 さて、ソースネクストはどうして、格安スマホを強く意識したアプリ取り放題サービスを開発したのだろうか。同社代表取締役社長の松田憲幸氏によると、そこには日本のスマートフォン普及率の低さに対する危機感が大きく影響しているようだ。

 松田氏は現在シリコンバレーに住んでいるが、米国では多くの人がスマートフォンを利用しているとのこと。一方日本に来ると、現在も多くの人がフィーチャーフォンを利用しているのを目にするという。実際、日本ではスマートフォンの普及率が半数を超えたくらいで、先進国の中ではスマートフォン普及率が低いと言われている。

 松田氏は、過去に日本でワープロ専用機が長く利用されたことで、PCの普及がなかなか進まず、結果としてITリテラシーが高まらなかったことなどに触れ、「海外とのスマートフォン普及率の差が、今後決定的に表れてくる。スマートフォンが広まらなければ、日本が取り残されてしまう危惧があった」(松田氏)と話す。そうした状況下で生まれた格安スマホというソリューションに大きな可能性を見出したものの、同時に不足する要素も感じたという。

 その不足する要素が、サービスとサポートだ。スマートフォンで一般的なアプリを利用してもらうにしても、初心者にGoogle Playから目的のアプリを見つけてもらうにはハードルが高く、きちんとサポートしていかなければ利用が進まない。格安スマホの登場で価格面での懸念が払拭された“次のステップ”として、松田氏はアプリを使ってもらうための取り組みを進めるべきと判断、格安スマホ向けのサービス提供を考えたのだそうだ。

 ソースネクストはこれまでにも、さまざまなAndroid向けアプリを店頭でパッケージ販売するなど、オープン市場でアプリを販売した実績がすでにある。にもかかわらず、あえて“取り放題”に踏み切ったのはなぜだろうか。松田氏によると、それにはターゲットとなるユーザーのコスト意識が大きく影響しているようだ。

 同社はPC向けソフトの販売も手掛けているが、利用者は50〜70代と比較的年齢の高い層が多いとのこと。年配のユーザーは高額な商品よりも、安くていいものを求める傾向にあるため、数百円程度で安価にダウンロードできる“取り放題”が、格安スマホのユーザーにマッチすると考えたようだ。松田氏自身、「アプリ取り放題は海外にもほとんど存在しない、日本だけの素晴らしいサービス」とアプリ取り放題サービスを高く評価している。しかし先行するキャリアの“取り放題”は、自社ユーザー向けサービスという戦略のため、格安スマホ向けの展開は期待できない。そこで、ソースネクストがサービスを手掛けることに至ったと振り返った。

「アプリ超ホーダイ」は格安スマホ事業者にどう映った?

 では格安スマホを提供する側にとって、アプリ超ホーダイはどのように映っているのだろうか。

 アプリ超ホーダイの販売でソースネクストと協業している、イオンリテールの住居余暇商品企画本部 デジタル事業開発部 部長の橋本昌一氏によると、同社の格安スマホ「イオンスマホ」シリーズは、50代以上のユーザーが5割近くを占めるなど、年齢の高いスマートフォン初心者から支持を得ているとのこと。だが格安スマホとして大きなインパクトを与えたイオンスマホにとって、課題となっているのはやはりサービス面になるようだ。

 橋本氏は「スマートフォンを購入してもらっても、安く売ってそれだけというのであれば、自前でやる必要はない。我々は顧客志向で物事を考えており、スマホを活用してもらうためにも、サービスやコンテンツの充実も重要だと考えている」と話し、サービスにも力を入れていく方針を示した。特に注力しているのは、やはりスマートフォン初心者に向けた“分かりやすさ”であり、そうした意味でもソースネクスト側から提案のあったアプリ超ホーダイは、自社のサービスに適していると判断。協業により、イオンスマホのオプションとして販売する運びとなったのだそうだ。

 ただし現在のところ、アプリ超ホーダイはイオンスマホ購入時に一緒に契約できるものの、端末とネットワーク、そしてアプリ超ホーダイはそもそも個別の契約となるため、支払いも別々になってしまう。この点について橋本氏は、「グループ内にクレジットカードを扱う会社もあるので、自前で課金もできる。将来的には我々がまとめて課金する形を取り、より手軽に利用できるようにしたい」と話している。

 また現在、アプリ超ホーダイはユーザーが管理アプリをインストールして、はじめて利用できる仕組みとなっており、スマートフォン初心者にはややハードルがあるように感じる。この点について橋本氏は、「プリインストールの可能性もあると考えている。事前に入れておき、使うかどうかを任意で選べるようにすることも検討していきたい」と話すなど、アプリ超ホーダイをより利用しやすくするための仕組み作りも考えていくようだ。

セキュリティの懸念は? 100万契約を達成できる?

 アプリ超ホーダイ上で提供されているアプリは、発表時点で50本以上だが、2015年3月までに100タイトルへ増やす計画だ。将来的には300程度のアプリを取りそろえことを考えている。

 アプリの数を増やす上では、ソースネクスト自身のアプリに加え、同社がこれまで培ってきたシリコンバレーなど海外企業とのつながりを生かし、コンセプトに合った良質なアプリをラインアップに加えていきたいとのこと。もちろん海外発のアプリだけでは、日本語のフリック入力練習アプリやブルーライト削減アプリといった国内でのニーズが高い要素を満たすことができないため、自社でアプリを直接開発し提供していくことも怠らないという。

photophoto 日本語のフリック入力を練習できる「特打フリック」(写真=左)。スマホのディスプレイが発するブルーライトをアプリで抑える「超ブルーライト削減」(写真=右)

 サービス開始直後ということもあり、イオンリテールなど協力関係にある各社から、アプリのラインアップに対する要望はまだないとのこと。だが親子向けの「イオンスマホ『親子セット』」には、子供がスマートフォンを安全に利用できる管理アプリ「スマモリ for イオン」をプリインストールした。これはイオン側から子供が安全に利用できるアプリを提供して欲しいという要望があり、ソースネクスト側がアプリ提供に応じたという。今後は、ユーザーの動向や要望が上がってくるにつれ、協力各社から“こうしたアプリを入れて欲しい”という声が挙がる可能性も大いに考えられそうだ。

photophoto 「スマモリ」(写真=左)は、イオンスマホの「親子セット」にもプリセットされている。人気の家計簿アプリ「マネーフォワード」(写真=右)もラインアップの1つだ

 サービスの充実度を高めていくアプリ超ホーダイだが、筆者が使ってみて気になった点が1つある。それは管理アプリを含め、インストールするアプリはソースネクスト自身が配信しGoogle Playを通さないことから、設定で「提供元不明のアプリ」のインストールを許可する必要があること。Androidに詳しい人ならご存知かと思うが、これを許可してしまうとインターネット上に多数存在する、不正アプリのインストールを予防するのが難しくなり、スマートフォンのセキュリティに関する懸念が大幅に高まってしまうのだ。

photo アプリ超ホーダイはGoogle Playとは別にアプリをインストールするため、事前のセキュリティ設定の変更が必要

 アプリ超ホーダイはスマートフォン初心者をターゲットとしたサービスとなるため、この点は非常に懸念されるところ。松田氏はこの事前設定について、「サービス提供以前にも、その点については議論があった。次の取り組みに向けて全体的なパワーアップを考えており、懸念点についても対応していきたい」と話し、将来的に何らかの解決策を打ち出す考えを示している。

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 アプリ超ホーダイは1年以内に会員数100万という目標を掲げているが、一方でイオンスマホの販売数は、急速に伸びたとはいえ現時点ではまだ4万程度。ビッグローブなど他にも販路があるとはいえ、格安スマホの市場自体がより大きく広がらなければ、目標達成は難しくなるだろう。「4000万はいると言われるフィーチャーフォンユーザーが、どれだけ格安スマホに移るかが勝負」と松田氏が話すように、格安スマホがどこまで急速に受け入れられるかが、格安スマホ向けサービスの成否にも大きく影響してくるといえそうだ。

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