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» 2015年01月30日 10時00分 UPDATE

佐野正弘のスマホビジネス文化論:「Fx0」で注目されるFirefox OS――Web技術が主役の“スマートOS”は何を狙うのか

“ギーク向け”をうたったauのFirefox OSスマホ「Fx0」。KDDIはどんな狙いでFirefox OSスマホを開発したのか? 容易なアプリ開発や機器間連携など、他のプラットフォームとの違いに迫った。

[佐野正弘,ITmedia]

 KDDI(au)は2014年末、“ギーク向け”とうたうスマートフォン「Fx0 LGL25」を発売した。最大の特徴は「Firefox OS」を搭載していることだが、このOSはHTML 5など標準的なWeb技術でアプリを制作できるのが大きなメリットだ。OSを提供するMozillaや採用するメーカーは、Firefox OSとWeb技術で何を狙っているのだろうか。

なぜKDDIはFirefox OSを“ギーク向け”に提供するのか

 2014年12月23日、KDDIはFx0というスマートフォンを発表した。このFx0は従来日本で発売されてきたスマートフォンとは大きく異なる特徴を備えている。それは、OSがiOSでもAndroidでもなく、Firefox OSを搭載しているということだ。

photo KDDIが2014年末に発売した「Fx0」。国内キャリア初のFirefox OS搭載端末だ

 Firefox OSはその名前の通り、Webブラウザの「Firefox」で知られる非営利団体のMozilla Foundationが開発したOSだ。iOSやAndroidに対抗する第3勢力のスマートデバイス向けOSの1つとして注目を集めており、最近では新興国向けの低価格端末への採用が進んでいる。

 価格重視のローエンドスマートフォン向けに搭載されることが多かったことから、iPhoneなどハイエンドモデルが主体に販売されている日本市場には、これまでFirefox OS搭載端末が一部を除いて入ってくることはなかった。だが2012年、KDDIはFirefox OSへの取り組みを進めることを正式に表明し、日本に向けた投入の準備も進めてきた。その結果として登場したのが、Fx0である。

photo 一般ユーザーではなく、あくまで開発者やギーク層をターゲットにしている

 KDDIの田中孝司社長は「Fx0はギーク向け」と話すなど、このスマホを特殊な端末と位置付けている。それを象徴するかのように、Fx0はトランスルーセントボディを採用し、専用のネジを使用した設計にするなどハード面で随所にこだわりを見せている。また取扱い店舗は当初auの直営店のみ、その後全国のauショップで取り扱いを開始したものの、事実上“お取り寄せ”扱いとするなど、一般ユーザー向けを見込んだ端末ではないことが分かる。

 KDDIとしては、まずFx0を提供することでFirefox OSの大きな特徴でもある“Web技術でアプリを開発できる”ことをアピールするとともに、Web技術への関心を高めて開発者を増していくことが、最大の狙いとなっているようだ。だがそもそも、iOSやAndroidのアプリが全盛を極めている中、Firefox OSでWeb技術を用い、スマホ向けアプリを開発することの意味はどこにあるのだろうか。

Firefox OSとWeb技術で何ができるのか?

 先程から“Web技術”とひとくくりにしてしまっているが、Web技術とは要するに、HTMLやCSS、JavaScriptなど、Webブラウザ上で動作するWebコンテンツを制作するのに用いる標準的な技術や規格全体を指す。特に各Webブラウザが「HTML 5」をサポートするようになってからは、特別なプラグインを使わなくても、インタラクティブな操作性を用いた、高い表現力を持つWebコンテンツを提供しやすくなった。「Googleドライブ」のようにオフィススイートをWebブラウザ上で実現できるようになるなど、Webブラウザ上で動作するアプリケーションの提供も進んできている。

 そのWeb技術を活用するコンテンツを、スマートフォン上でアプリとして利用しやすくする仕組みを整えたのが、Firefox OSである。実際Firefox OSでは、Web技術で開発したアプリやコンテンツを、基本的にそのまま動作させることが可能となっている。

 それゆえWebブラウザで利用できるアプリケーションは、Firefox OS上でほぼそのままの形で動作させられるし、Firefox OS用に開発したアプリを、他のWeb技術を用いたOS、あるいはWebブラウザ上などで動作させることなども容易だ。ハードの性能面では最新のiPhoneやAndroid端末に及ばない部分もあるが、特定の企業やプラットフォームに依存しない汎用的なWeb技術を用いて、アプリケーションを比較的簡単に開発できることが、Firefox OSの最大の特徴となっている。

 またFirefox OSは、Web技術でさまざまな機能を呼び出せる「Web API」を用いることにより、カメラやBluetoothなど、開発者が端末内の各種ハードウェアを制御でき、端末の機能をフルに生かしたアプリ開発も可能となっている。

photo Firefox OSではWeb技術を用いてアプリを開発するが、Web APIを用いることで端末内のハードを制御することも可能になる

 さらにFx0には、KDDIが開発に参加したという、他の機器と連携しやすくする“Webサーバ”機能を標準搭載しているのに加え、Fx0同士をタッチするだけでローカルネットワークを形成し、動画や写真などを簡単に共有できる“Web-cast”機能なども備えられている。これらを活用すれば機器間連携を前提としたアプリも開発もできるなど、柔軟性が非常に高いアプリ開発環境を提供している。

 ちなみにFirefox OSのアプリケーション形態には、従来のWebブラウザと同様、Webサイト上にあるアプリケーションにアクセスして利用する“ホスト型”と、リソースを1つのパッケージにまとめて配信する、一般的なスマートフォンアプリの概念に近い“パッケージ型”の2種類がある。専用のアプリマーケット「Firefox Marketplace」で配信されているアプリは、基本的にパッケージ型のアプリだ。

photo Fx0はWebサーバ機能を生かして、NFCでタッチすることによりローカルネットワークを形成し、端末間で動画の共有などができる「Web-cast」機能も搭載した

テレビなど家電にも採用が進む、真の狙いは“連携”にあり

 スマートフォン向けのプラットフォームとして注目されるFirefox OSだが、Firefox OS自体はスマートフォン専用ではなく、さまざまなデバイスに搭載されることを念頭に設計されている。例えばパナソニックが2015 International CESでFirefox OSを搭載した4K対応スマートテレビを発表するなど、スマートフォン以外への導入も進められている。

 ちなみにパナソニックは、インタラクティブなインタフェースを提供するだけでなく、Web技術を用いて放送とインターネットを利用したコンテンツを開発しやすくするべく、スマートテレビにFirefox OSを選択したようだ。だが今後を考えると、スマートフォンにとどまらない幅広い機器にFirefox OSが搭載されることには、大きな意味がある。

 それはFirefox OSが、Webを通じたデバイス間連携に力を入れつつあることにある。実際KDDIはFx0の発表イベントで、各種デバイスをWeb経由で制御するためのFirefox OS搭載開発ボード「Open Web board」や、連携する機器の動作をWebブラウザ上でグラフィカルにプログラミングできる開発ツール「Gluin」などのデモを行った。さらにFx0とそれらの機器を用いたハッカソンイベントも実施するなど、Web技術を通じてスマートフォンと外部機器とを連携するWoT(Web of Things)に力を入れる様子が見てとれる。

photo Firefox OSを搭載した開発ボード「Open Web Board」
photo 機器間の連携をグラフィカルな形でプログラミングできる開発ツール「Gluin」。Open Web BoardやGluinへの取り組みから、KDDIがFirefox OSを用いた機器間連携に注力する様子が見て取れる

 またパナソニックも、Firefox OSを採用したことで将来的にはWeb APIを用い、テレビの上で周辺の家電機器の状況を確認したり、操作したりできる仕組みを作る考えがあるようだ。

 プラットフォームを提供するMozillaとしても、Firefox OSのさまざまなデバイスへの採用を進めつつ、Webを通じて機器間の連携をしやすくすることによって、オープンなWeb技術の利用を広げたい――というのが、大きな狙いになっている。

 だがスマートフォン以外のデバイスとの連携に関しては、他のスマートフォン向けプラットフォームを提供する事業者が、すでに狙っている分野でもある。実際Googleは、「Android Watch」や「Android TV」などでAndroidの技術を他のデバイスに持ち込むことによって、機器間連携に力を入れてきている。Appleも同様に、「Apple TV」「Apple Watch」などスマートフォン以外のデバイス投入や、「CarPlay」など車と連携する仕組みの提供などによって、機器間連携に力を入れようとしている。

 そうしたことからプラットフォーム間の技術競争は、もはやスマートフォンの枠を超え、より幅広い分野のデバイスを巻き込んだ形で広がりつつあるといえそうだ。

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