4年間で売上が80倍に伸びた理由は?――坂本社長が語る「坂本ラヂヲ」躍進の秘密

» 2015年02月24日 22時56分 公開
[田中聡,ITmedia]

 スマートフォンのアクセサリーメーカー「坂本ラヂヲ」が2月24日、事業戦略発表会をメディア向けに開催。代表取締役社長の坂本雄一氏が、同社の戦略を説明するとともに、新製品を発表した。

 2009年に創業した坂本ラヂヲは、「GRAMAS」シリーズをはじめ、主にiPhone向けのケースの企画・開発している。売上は2011年度に5000万円、2012年度に4億7000万円、2013年度に12億1000万円を上げ、好調に業績を伸ばしてきた。そして2014年度は40億円の売上を見込んでおり、(達成すれば)この4年間で80倍もの売り上げを伸ばしたことになる。同社の社員は17人なので、1人あたりの売上は約2.2億円。「売上が1人1億円だと優良企業と言われているが、うちはその倍以上。かなり効率がいい会社」と坂本氏は胸を張る。

 坂本ラヂヲでは売上の目標はあえて設定していないそうだが、なぜここまで売上を伸ばせたのか。坂本氏は自身の経営哲学をもってその理由を説明する。

photo 坂本ラヂヲの売上推移

「自分たちが欲しいと思ったもの」を市場に投入する

photo 坂本ラヂヲの坂本雄一氏

 まず1つめが「幸せになるために働く」こと。働く目的は「お金を得るため」と考える人が多いだろうが、「最終的に幸せになるために働くのではないかとサラリーマン時代に思った。お金は幸せになる1つの要素で、ある程度は必要だが、それを優先順位の1位に持ってきてはいけないと思う」と坂本氏は訴える。

 とはいえ、当然ながら社員にとって収入は重要だ。坂本ラヂヲでは社員全員の給料を公言しており、現在の年収が1000万円を超えている社員が2人いるという。また2014年末には「社長賞」として、ボーナスとは別に、社員全員にロレックスの時計をプレゼントしたというエピソードも披露。社員研修として、米・ラスベガスで毎年1月に開催されるCESには、「商談をするのではなくアメリカの空気を感じてもらうために」(坂本氏)社員を派遣しているそうだ。

photophoto 社長として社員全員にロレックスをプレゼントしたり、CESへの研修を行ったりしている(写真=左)。誕生パーティやバーベキューを行うこともあり、会社はアットホームな雰囲気だという(写真=右)

 坂本ラヂヲでは「製品の価値=価格」と考え、「満足を販売すること」をポリシーとしている。「価値を認めるから買う、それによってユーザーの満足を得られると考えている」(坂本氏)。これは2つめの哲学である「関係する全ての会社・人々を幸せに」と言う考えにもつながっていく。

 現在のスマートフォンやアクセサリーを取り巻く環境は、小売店がメーカーに対して、メーカーが工場に対してコストダウンを要求することで、品質の低い製品が流通し、似たような製品があふれ、ユーザーは価格だけで製品を選ぶ……という悪循環に陥っている――と坂本氏は指摘する。坂本ラヂヲでは「ユーザー」も「小売店」も「メーカー」も「工場」も平等だと考え、共存共栄を目指す。お互いをリスペクトし、かかわった人が皆幸せになり、ユーザーに満足を提供する――というのが同社が目指す関係性だ。これによって、メーカーからは考え抜かれた企画が生まれ、最終的にユーザーが欲しい商品を適正な価格で提供できる。

photophoto 関係する全ての会社や人々を幸せにすることを目指す

 3つめの哲学が「常識にとらわれない」こと。坂本ラヂヲではマーケティング活動は行っておらず、「自分たちが欲しいと思ったもの」を市場に投入している。これにより、とがった製品や独創性あふれる製品が生まれる。「うちの製品は価格は高いが、一番売れているのは1万2000円の製品。これが売れているのは、エモーショナルでとがったものだからだと思っている」と坂本氏は分析する。

photophoto 常識にとらわれず、自分たちが欲しいと思った製品を作っていく

 そして同社が主力製品として注力しているGRAMASでは、素材の良さを生かした製品をコンセプトにしており、フルレザーケースとアルミニウムバンパーの2種類のジャンルをそろえている。前者は職人が1つずつ手で縫い上げており、後者はアルミニウムを高精度で削り出している。

 通常のGRAMASと差別化を図るべく、数量限定の「GRAMAS Limitd」や、「コストと数量の足かせを取っ払い、とにかくカッコイイもの、世界一のものを作ることをコンセプトにした」(坂本氏)という「GRAMAS Meister」もラインアップ。GRAMAS Meisterは、5〜6万円(税込、以下同)という高価な価格が目を引く。ワニ皮を使った「クロコダイル(Crocodile)」と、「1匹でケース1つしか作れない」(坂本氏)という、エイの皮を削った「ガルーシャ(Galuchat)」のケースを、iPhone 6/6 Plus向けに手がけている。

photo 「GRAMAS Meister」の2製品。ガルーシャのケースは「1人の職人が1日2個、10人で月200個しか量産できない」という希少なものだ

 「こんな高いケース、誰が買うのか? と思うかもしれないが、ソフトバンク銀座で12月に(クロコダイルのケースを)200個を売り上げた」(坂本氏)という。「見る目がある人、分かる人には分かってもらえる」と同氏も手応えと自信を感じている。

さらにとんがった春の新製品 ショップ開設も視野に

 このGRAMAS Meisterのさらに“とんがった製品”として、ワニの脚を開いて作った「Crocodile Leg Leather Case MI8044」を発売した。価格は6万円。ワニ脚ならではの立体的な模様が特徴で、1頭で1製品ほどしか作れないという希少価値の高いものだ。できあがったポロサスクロコ(ワニ皮)は染色して、4色のバリエーションを用意した。現在はiPhone 6向けのみを販売している。

photophoto 「Crocodile Leg Leather Case MI8044」

 ほかに、本革を用いた手帳型のiPhoneケース「Full Leather Case Limited2 LC644PL2」(1万7000円)、アルミニウムの「Round Metal Bumper MB514L」(1万6000円)と「Round Metal Bumper MB524L」(1万6000円)を4月下旬に発売する予定だ。

photo 「Full Leather Case Limited2 LC644PL2」
photophoto 「Round Metal Bumper MB514L」と「Round Metal Bumper MB514L」

 このほか、GRAMAS Meisterの新製品として、MacBook Air用のレザーケース「Leather Sleeve Case MI8305MA11」(3万7000円)と、「Leather Sleeve Case MI8305MA13」(4万円)を5月上旬に発売することも発表した。これは坂本氏が自分で欲しかったという理由で作ったそうだ。ちょっとした外出時や飛行機の搭乗時などにサイフやスマホを入れられる「Leather Sleeve Case MI8205」(6万6000円)も5月上旬に発売する予定。

photophoto MacBook Air用のレザーケース
photophoto 「Leather Sleeve Case MI8205」

 さらに、GRAMASの世界観を表現するショップを、2015年中に都内に展開する予定があることも明かした。坂本ラヂオでは、東京都目黒区にある本社にて、同社の製品を展示・販売するショールームを設けているが、これの延長線上にショップを位置づける。「アクセサリーだけでなく、世界観を発進できる基地を、都内のどこかでやりたい」(坂本氏)

photo 15年にはGRAMASショップがオープンするかも?

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