スマートフォンを自分なりに演出でき、保護することもできるスマホケース。デザイン、機能、価格もさまざまなケースが存在するが、レザーケースを中心とする「GRAMAS(グラマス)」のアイテムは、スマホアクセサリー専門店「Smart Labo」で1万円以上の高額ながらも圧倒的な人気を誇り、よく売れているという。
GRAMASの人気の秘密を探るべく、GRAMASを企画製造販売する坂本ラヂヲのショールームを訪問。ブランドコンセプトや製品に対するこだわりをうかがった。紹介している製品の価格はいずれも税込。
GRAMASは、坂本ラヂヲが企画製造販売するスマホアクセサリーブランドの1つだ。ブランド名は「Generous Raw Material Stuff」から作られた造語で、「豊潤な素材の良さを十分に生かした製品づくり」を意味しているという。「世界一かっこいいものを作る」というコンセプトのもと、素材や製法に徹底的にこだわるブランドとして、アイテムは手間暇かけて作られている。
GRAMASの代表的なアイテムが、牛革を使ったiPhoneケース「GRAMAS Full Leather Case」だ。一般的なレザーケースは、いくつかのレザーパーツを組み合わせて作られているが、GRAMASのフルレザーケースは、一体型のパターンから抜き取られた1枚の革が立体化されているもの。大きな型を1枚で抜くのでロスが大きく、決してコスト的に効率のいい作り方ではないが、余分な縫い目がなく、薄く作ることができるという。レザーの縁や角も、手間はかかるものの強度が高く、デザイン的にも美しい処理を採用。また、従来モデルでは裏地にマイクロファイバーを使用していたが、汚れが目立つことから今回から裏地にもレザーを採用した。標準カラーの定番アイテムのほか、数量限定のLimitedバージョンも用意している。
「スマホを使う回数は財布や手帳よりも圧倒的に多く、スマホケースは過酷に使われます。人の手の油や汚れが付き、何度も行われる開閉で痛みます。革の財布なら1年から3年で革が変わっていく様子を楽しめますが、スマホケースは3〜4か月でどんどんエイジングが進みます。古くなると剥がれるコバ磨きをやめてステッチにしたり、裏地にレザーを使ったりしたのは、過酷な使用に耐える強度にするためです」(児玉氏)
デザインや素材、縫製までこだわって作られたGRAMASのレザーケースは、ビジネスシーンに対応できるスマホケースということで評価が高く、40〜50代のビジネスマンはもちろん、女性にも人気だという。
ケースの素材は牛革。天然素材のため、虫さされ後や毛穴の跡が残っていることもあり、目立つものは使用しない。大きな一体型のパターンを抜くので、小さなパターンを効率よく抜くよりもロスが多いが、それも格好よく作るためのこだわりだ。レザーの縁はコバ磨きではなく、折り込んで縫製。角の部分は寄せという手法を用いて美しく仕上げられている。プラスチックケースが備え付けられているタイプのレザーケースが多いが、GRAMASのケースはすべてレザーだ。iPhoneはフレーム部分のベロを出して入れ、iPhoneの下にベロを差し込む形で固定する。
GRAMASのアイテムは、企画、設計、デザインは日本で行われ、中国の工場で製造されている。坂本ラヂヲは中国長安にオフィスを構えており、坂本氏のような開発担当者が必ず1人は常駐。クオリティをコントロールしている。
GRAMASのレザーケースは熟練した職人の技術が求められるため、製造できる工場は現時点では1つだけ。「だから、なかなかコピーはできない」(坂本氏)という。立体化した部分を一度つぶして縫製し、もう一度立体化して固定するという手間のかかる作業が必要で、開発当初は歩留まりが悪かったそうだ。しかし、工場と密に連絡を取り合うことで対等な関係を築き、納得して作ってもらえるようになった。今はほかから驚かれるほどの良好な関係を保っているという。
こだわりをもって作られているので、ケースは何度も改善が行われている。しかし、意外にも一般ユーザーの意見が取り入れられることはあまりないそうだ。
「GRAMASは、弊社社長の好みが大きく反映された製品です。マーケティングをしない代わりに、GRAMASの製品は自分たちも使っています。自分たちの好きなものを作り、使う。好きだから、許せないところが出てきたときに改善します」(児玉氏)
GRAMASにはレザーケース以外に、iPhone用のバンパーや液晶を割れや傷から守るガラス製液晶保護フィルム(以下、ガラスフィルム)も展開している。メタルバンパーはアルミを採用し、直線的な「Straight Metal Bumper」と流線型の「Round Metal Bumper」を用意。どちらもアルマイト処理により染色後、職人の手作業によりバンパーのエッジ部分にポリッシュ仕上げが施されている。
スクエアなStraightタイプはボタン部分も四角、流線型のRoundタイプは丸くするなど、こちらも細部までこだわったデザインだ。ミュートスイッチ部分は、開きすぎず小さすぎない絶妙なサイズに切削した。
iPhone 4のときからいち早く展開しているガラスフィルムは、坂本ラヂヲの資本が入った自社工場で製造されている。iPhone 6/6 Plusになってフロントパネルの縁が曲面になったため、ガラスフィルムの製造はかなり苦労したという。
「iPhoneによってラウンドが始まる位置に微妙に個体差があるんです。コンマ数ミリの違いが、ガラスフィルムにとっては致命傷となります。外側までカバーしようとすると浮いてしまう場合があるのです」(児玉氏)
そのため、GRAMASのiPhone 6/6 Plus用のガラスフィルムは、額縁の少し内側までしかカバーしない。そうなると、ディスプレイに貼る際に位置合わせが難しくなるため、貼り付けキット「EZig(イージグ)」を用意した。ガラスフィルムとセットになったもの(iPhone 6用3000円、iPhone 6 Plus用3500円)も販売されている。もちろん、「きっちり縁まで貼りたいと思っているので、いろんな方法を模索して開発中」(坂本氏)とのことだ。
GRAMASのケースは牛革を採用しているが、「GRAMAS Meister」シリーズではクロコダイルやアカエイの革を使った、よりプレミアムなケースが展開されている。クロコダイルは世界的なバッグブランドなどが使う最高級素材を採用。入手が難しい革を日本で染色して、一流の技術を持つ職人によって作られている。アカエイの革を使ったケースは、1頭に1か所しかないスター部分を使って作成。サンドペーパーの番手を変えて光沢が出るまで磨き上げ、天然石のような輝きを作り出している。
なお、坂本ラヂヲはGRAMAS以外にも「PRECISION」「Helium」というスマホアクセサリーブランドを展開している。GRAMASは素材や製法に妥協しないことがコンセプトだが、PRECISIONはユニークな機構を備えた利便性を追求。Heliumは薄さや軽さを追求した製品を開発している。
GRAMASは東南アジア地域を中心に、海外展開にも注力している。「日本はキャリアの施策で比較的安価に購入できますが、海外でiPhoneは高級品です。高級なiPhoneを購入する人たちが納得するものを提供したいですね」(児玉氏)。
販路は「我々の世界観を理解していただけるところ」(児玉氏)だ。アイテムの格好良さや満足度を重視してくれるお店で販売されており、納得できない場合は大手販売店でも取り扱いを停止する。逆に、世界観を理解したSmart Laboなどのショップのスタッフは、接客で積極的にGRAMASのアイテムを勧めてくれるという。「ここまでこだわっているなら、このくらいの値段はするし、むしろ安い」と言ってもらえるそうだ。
GRAMASのフルレザーケースは上質な革小物のようなテイストがあり、ブランドものの財布や手帳に引けをとらない高級感がある。大切な自分のスマートフォンをスタイリッシュに演出したいなら使ってみたいアイテムだ。
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