定額無制限プランは「めちゃくちゃ遅いということはない」――ぷららモバイルLTEの現状MVNOに聞く(2/2 ページ)

» 2015年08月12日 15時14分 公開
[石野純也ITmedia]
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端末はモバイルWi-Fiルーターがダントツで売れている

―― 端末の販売も行っていますが、傾向は何かありますか。

下鳥氏 ルーターセットはすごく出ていて、他社さんより割合は多いと思われます。やはり、定額無制限プランとのセットでお買い求めになられる方が多いですね。これは我々の強みの1つです。NECさん(NECプラットフォームズ)からも、「いっぱい売っていただき、ありがとうございます」と言われています(笑)。特にNECさんを持ち上げるつもりはありませんが、ニーズ的に、もう少しタブレットやスマホも買われると思っていました。音声プランも出して、スマホも並べてみたものの、多いのはルーターですね。

原田氏 数でいうとルーターはダントツですね。

photo 特に売れているというNECプラットフォームズの「AtermMR04LN」

―― つまり、データプランの方がそれだけ多いということですね。

下鳥氏 圧倒的にそうです。他社さんは家電量販店などと提携しているので音声の割合が高いとは思いますが、我々はWeb専売で手軽に買えるので、利便性が高いデータプランとルーターに集中するのだと思います。

原田氏 ただ、今後はよりライトなユーザーにも層を広げていきたいと考えています。そのためには、これまでの販路だけでなく、新しい取り組みも必要になります。そうすれば、ルーターだけでなく、スマホやタブレットの需要も上がってくるのではと考えています。

―― そのために、リアルなショップ展開をするといったこともあるのでしょうか。

原田氏 “ぷららショップ”まではいきませんが、リアル店舗での扱いはやっていきたいと思っています。ただ、普通にやっても面白くないので、何かのイベントに引っかけるような形で、プロモーション込みで考えています。

―― ルーターが売れるということは、PCを取り扱う余地もありそうですね。今だと、ワイモバイルが「Surface 3」を販売していますが。

原田氏 あれは、うちもやりたかったですね。

下鳥氏 利用シーンや、我々が狙っている層にはすごくマッチしています。Windows 8(8.1)タブレットだと、SIMカードが刺さるモデルがなかなかありませんが、どんどん広がっていくといいですね。

利用シーンに合わせてプラン変更を可能に

―― 次の仕掛けとしては、何か考えていることはありますか。

下鳥氏 新しいプランを出すというより、定額無制限プランのハードルがちょっと高いと感じている方に向けて、プラン変更をできるようにしようと考えています。今だと、ほかのプランを使っている人が定額無制限プランに入るには、いったん契約を切り替えなければいけませんが、8月10日にはプラン変更の仕組みを入れる予定です(※インタビュー後に、プラン変更可能になったことが発表された→「ぷららモバイルLTE」、データ契約間・音声契約間のプラン変更に対応)。

 利用シーンに合わせて、毎月料金プランを変えていただければいいのではないでしょうか。使うときと使わないときの差が激しいお客様は、絶対にいます。使わないときは月290円からの2段階プランに落としていただくことも、当然あると思います。

原田氏 例えば、今だと夏休みに入って子供がガンガン使うという人でも、そういうときだけ定額無制限プランにしておくことができます。夏休みが終わって使うのが会社の行き帰りだけになれば、従量プランに戻してもいいですよね。

 まずはプラン変更の仕組みを提供してみて、ユーザーさんがどのように動くのか。よく見ておきたいと思います。そこから第2の定額無制限プランのようなものが出せるといいですね。

画像を圧縮する“通信の最適化”はやらない

―― プランが多様化すると、トラフィックが一時的に増えるなどして、制御も大変になりそうですね。

下鳥氏 ユーザーさんがどんどん増えて、ニーズも多様化しているので、いわゆる土管の構成は常に考えています。今は土管をバーンと一気に増やすのではなく、データ転送の効率化を図れないかと改善を検討しているところです。この改善は8月中に終わると思いますが、快適さがどのくらい変化するのか、全体的なスループットはどうなるのかはウォッチしていきたいと思います。

原田氏 事業者として想定していた範囲ではありますが、ユーザーさんの期待感との不一致があるなら、そこには耳を傾けていきたいと思います。

―― 土管の効率化というと、MNOのように画像を圧縮するようなことまでするのでしょうか。

下鳥氏 それは絶対に聞かれると思っていました(笑)。「通信の最適化」ではありますが、画像の圧縮のようなことはしません。固定のように、特定のお客様が便益を異常にこうむることを防ぐための公平制御はやっていくべきだと思いますが、そこまでやろうとは思っていません。Twitterなどを見ると、「ぷららもやっているのでは」と書かれていましたが、ユーザーさんのデータに触れるようなことは一切していません。

―― では、どういったところを最適化するのでしょうか。

下鳥氏 うちの中でノウハウをためなければいけないところですが、設備構成的なボトルネックを解消していくことをやっています。今回は、ここがボトルネックになっているのではないかというところを変更して、データの転送効率を上げていくことをやろうとしています。

―― 回線の増強も、しないというわけではないですよね。

下鳥氏 それは、毎月のようにやっています。

原田氏 ユーザーあたりどの程度まで増やせばいいのか、声も生かしながら、できる範囲でギリギリのところまでは増やしています。

下鳥氏 もちろん、速度には山や谷があって、瞬間的に遅いこともあります。ただ、普通に使っていると、遅いとは感じないのではないでしょうか。

原田氏 モバイルなので使っている環境にも影響されてしまいますが、(定額無制限プランで)少なくとも今もこのくらいの速度は出ています(お昼休みに入ったぐらいの時間帯で、2Mbps以上)。

photo 7月31日の12時ごろにぷらら社内で、定額無制限プランのSIMの通信速度を計測したところ、上下で2Mbps以上出た

―― 一般的に、MVNOのトラフィックのピークはお昼休みの時間帯に来るといわれていますが、定額無制限プランだと傾向が違ったりするのでしょうか。

下鳥氏 お昼に増えることは増えますね。ちょうど12時から13時の間で、少し山があります。あとは固定のインターネットと同じで、ご自宅にお帰りになって、晩御飯を食べ終わった後ぐらいから伸び出します。うちは、お昼より、むしろ夜の方が高いですね。

取材を終えて:ライトユーザーの取り込みがカギを握る

 速度を3Mbpsに抑えながら、完全定額を実現したぷららの「定額無制限プラン」は、帯域を10Mbps単位で借りているMVNOだからこそ、採用しやすいビジネスモデルだ。ここにいち早く目をつけた先見の明は、高く評価できる。プラン変更が可能になったことで、さらに利便性は高まりそうだ。

 一方で、ヘビーユーザーが集まりがちな料金プランであることも事実。インタビューからも、トラフィック対策に苦労している様子がうかがえた。原田氏が話していたように、今後は、よりライトなユーザーに層を広げていくためのかじ取りが、必要になってきそうだ。

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