“月額2980円で3MbpsのLTEが使い放題”の衝撃――NTTぷららに聞く「定額無制限プラン」の狙いMVNOに聞く(1/2 ページ)

» 2014年10月03日 14時25分 公開
[石野純也ITmedia]

 LTEの普及に伴い、かつてのような“完全定額”の料金プランは姿を消してしまった。ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルといった大手キャリアは容量別のデータプランを主力に据えている。こうしたキャリアから帯域を購入しているMVNOも、基本は同じだ。格安SIMと呼ばれるMVNOだが、900円台のプランだとLTEの最高速度を出せるのは、1Gバイト〜2Gバイトまでと相場が決まっている。

 こうした状況の中、NTTコミュニケーションズのグループ企業であるNTTぷららが発表した、月額2980円(税込)の料金プランが大きな話題を呼んだ。この金額で、データ通信が使い放題になるからだ。ここには1つの仕掛けがある。データの通信速度が、上下ともに3Mbpsに絞られている。とはいえ、3Mbpsの速度が出ていれば、動画の視聴も可能。よほど大きなサイズのデータをダウンロードするのでなければ、十分な速度といえるだろう。シンプルな仕組みで、通信速度を“ある程度”絞って完全定額を実現したというわけだ。

 この“ある程度”というのが大きなポイントだった。それなりの速度で、価格も安いというバランスのよさが功を奏し、ネットを中心に同社の「定額無制限プラン」は大きな話題を呼んだ。当初はユーザーを600人に限定して、テスト的にスタートしたが、わずか2日で規定数に達してしまったという。現在では、ユーザー数に制限は設けていないものの、SIMカードの入荷が追いつかない状態が続いているという。

photo 非常に好評だという「ぷららモバイルLTE」の「定額無制限プラン」

 もともと、ぷららは他社にはない2段階制の料金プランを用意するなど、独自性の光るMVNOだった。こうした料金プランはどのようにして生まれたのか。MVNO事業を担当するサービス本部 コンシューマ営業部 営業企画担当 担当部長の原田宙氏と、マネージャーの下鳥陽一氏に、MVNO参入の経緯や、定額無制限プラン誕生の経緯を聞いた。

容量制限にストレスを感じている人がいると仮説を立てて検証

photo NTTぷららの原田氏

―― 定額無制限プランが話題を集めていますが、それはいったん置いておいて、まずは、なぜぷららがMVNOをやっているのかについて、聞かせてください。

原田氏 その話は定額無制限プランを始めた理由にもつながっていきます。ご存じのとおり、ぷららはISPで固定を中心にやってきました。一方で最近では、外出先でもインターネットを使いたいというニーズが高まっています。いつでもどこまでもインターネットを使っていただきたいというのが、MVNOを始めた最初のきっかけです。

 また、ドコモさんだけだったMNOに、auやソフトバンクも入ってきて(接続料が公開され)、MVNOの認知度も上がってきました。加えて、SIMフリー端末のラインアップも多様化してきています。こうした環境の変化も大きかったですね。

 では、ぷららとしてNTTグループの中でどうすみ分けていくのか。ここに、定額無制限プランを開始した理由の1つがあります。モバイルの通信のメインストリームはリッチコンテンツを快適に使うための高速化であり、かつエリアを広げることが競争軸になっています。そこに対してNTTコミュニケーションズは、より低価格で提供できないかを模索して、OCN モバイル ONEができあがっています。ただ、2つ(NTTドコモとNTTコミュニケーションズ)が同じグループとしてある中で、ニーズが満たされているのかといえば、必ずしもそうではありません。

 どこが抜けているのか。我々は通信速度はそこまで出なくても、容量に制限があることに一定のストレスを感じているユーザーがいるという仮説を立て、無制限定額プランを始めました。すみ分けという意味では、この層にアプローチをして、マーケットがあるのかないのかを検証するのが、ぷららのミッションです。

―― 結果として、開拓した市場を親会社のNTTコミュニケーションズが引き受けるということもありえるのでしょうか。

原田氏 もちろん直近では弊社の社内目標はありますが、ミッションを考えるとそういう選択肢もあります。より資本力や営業力を持っているNTTコミュニケーションズが引き取って、多くのユーザーのニーズに応えていくことも、グループとして正しい考え方です。弊社として、常に種をまいていくことが重要だと思います。

定額無制限プランは2日で限定数に到達

photo NTTぷららの下鳥氏

―― あのプランを当初限定600人にした理由も、実験的な意味合いが強かったのでしょうか。

原田氏 そこには、2つの大きな理由があります。まず、そもそもマーケットがあるかどうかを明確に見極めたかった。3Gにおいても、速度が1.5Mbpsで無制限というプランがあり、そこでは一定の評価を受けていました。ただ、LTEという高速なネットワークの中で3Mbpsに絞ったメニューがありうるのかが不透明でした。そこで、まずはユーザー数を絞った形でテストを始めたというのが1つ目の理由です。

 2つ目の理由は、どういう風に使われるのかが見えていなかったことです。600人というユーザーに限定して、ネットワークに対する負荷を見ていきたかったんですね。

下鳥氏 他社では500kbpsで定額というものはあり、そこが受け入れられているのは見えていました。ただ、中速ぐらいのサービスが受け入れられるのかは、正直分かりませんでしたね。

―― 使い放題ということになると、一部のユーザーが帯域を占有してしまうことにはならないでしょうか。そのバランスは、どう見ていますか。

下鳥氏 定額だからといってユーザーを詰め込んでいるというわけではなく、余裕を持ってご利用いただける帯域は用意しています。一定数のご予約をいただいているので、帯域は今後も需要を見ながら増やしていきます。もともと3Mbpsではありますが、極端に遅くなるのはお客様も耐えられないですからね。

―― その読みが当たり、結果として、ネットを中心に大きな反響を呼びました。

下鳥氏 予想外でした。まさか2日で限定数に達してしまうとは(笑)。我々は、1カ月持つと予想していて、露出もそこまで増やしていませんでした。それでも今回はすごい反響で、いい方に期待が裏切られました。

―― 今は申し込みを受け付けていますが、限定というわけではないのでしょうか。

原田氏 はい。当面の間は、これを主力商品として設計していきたいと考えています。今はユーザー数を限定しているわけではなく、SIMカードの入荷が遅れていて、結果として予約販売になっています。

下鳥氏 予想を上回る需要でしたからね。600人でも多いかなと思いながら作っていたサービスなので……。ただ、サービス品質を落としてまでユーザーを詰め込むことはやっていないので、帯域も必要に応じて増やしていきます。

―― 速度をもう少し絞って値段を下げるといった選択肢は検討されたのでしょうか。

原田氏 今回、定額無制限の用途の1つとして想定していたのが動画です。弊社はひかりTVの戦略としてマルチデバイス化を進めていて、タブレットでもVODを見ていただけることをうたっています。定額無制限プランには350円(税込)の「ひかりTVエントリープラン」が無料でついてきますが、そこに魅力を感じているユーザーもいるようです。これはひかりTVの戦略にも合致するもので、動画視聴を高品質で見るために3Mbpsを確保しています。

下鳥氏 3Mbpsは余裕を持たせていて、タブレットで拡大しても粗くならない形のビットレートが確保できるのがこの速度ということですね。

原田氏 それが分かるのは、スマートフォンなりタブレットなりを使い込んでいる人です。だからこそ、今来ているユーザーはアーリーアダプターで、自分がどう使って、何にストレスを感じているのかが分かっている人たちです。

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